えっ?一緒に行くの?
冒険者達の治療を終え、ヒースさんとホテルに戻るかって話をしてたら、
「貴女ね。冒険者達の治療、ありがとう」
少し青みのかかった黒い長い髪をお団子で一纏めにし、制服を着た女性が話しかけて来た。
「ああ、冒険者ギルドのチーフだ」
「はじめまして、ユエと申します」
ヒースさんに紹介してもらい挨拶をした。
「ヒースの知り合い?治療費は教会に支払えばいいかしら?」
「いや、ユエは教会に属していないぞ。一応冒険者ギルドに登録していたな?」
ヒースさんに促されたので、ガサゴソとバッグ経由のストレージから、冒険者ギルド証を出し、チーフに差し出す。
「Fランクですが、登録してます」
「まぁ、そうだったのね。今回は本当に助かったわ、ありがとう。今日は無理だけど、治療費と合わせて報酬も出るから連絡するわね。泊まっている宿はどこ?」
これまた、さっきの兵士と一緒でホテル名を言ったら恐縮するパターンか?
それはそれで面倒なんだよなぁ。
「あっ、私が冒険者ギルドに顔を出すので、何日後に行けばいいですか?」
「あら、悪いわね。じゃあ、二日後に受付に顔を出してくれるかしら。ギルド証を出してもらえればわかるようにしておくわ」
「わかりました」
そう言って、忙しいだろうチーフは足早に去っていった。
「宿の名をなぜ言わなかったんだ?」
「さっき、詰所で兵士に宿名を伝えたら恐縮されてしまって……あの宿、かなり高位な人用みたいでしたよ」
「ああ、確かにな」
「詰所の兵士からも報酬と治療費が支払われるって言われたので、出発がまた延びてしまったんですが、大丈夫です?」
「ああ、私も今回の報酬が明日以降の受け取りなんでな。問題ない」
「そう言えば、ナージンさんとどうやって連絡を取ればいいかわかりませんでした……」
いつも部屋に来てくれていたから、ナージンさんとの連絡の取り方を知らなかった。
商人ギルドに行って事付け頼めばいいかな?
何だかんだで、もう夕方近く。
飼葉購入は諦めて、ホテルに帰る事にした。
クリフ君ごめん。
ホテルへの帰りがけ、商人ギルドに立ち寄りナージンさんへの事付けをお願いした。
きっと、また部屋に来てくれるだろう。
翌日、ヒースさんはクリフ君と冒険者ギルドへ、私はナージンさんが来るかもと思い、ホテルに留まった。
というのは言い訳で、体が思うように動かなかったのが一番の理由。
昨日ギリギリまで魔力を使って、ポーションで無理に魔力を戻してを何度も繰り返したので、体が悲鳴を上げたようだ。
これが、魔法を使い慣れた人なら起きないのかもしれないけど、慣れていない私の体にはかなり響いた。
コンコン
「ユエさん、ナージンです」
部屋の扉がノックされ、思った通りナージンさんが来てくれた。
扉を開け、中に入ってもらう。
「お呼び立てして申し訳ないです。また少し延泊しても大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないですよ。何やら昨日の魔物騒動でご活躍されたとか」
「いえいえ、活躍なんてとんでもない!回復魔法でお手伝いしただけです」
それから、昨日あったことをナージンさんに話して、全て片付いたら商人ギルドにまた事付けしてもらえればいいって話になった。
ついでには失礼だけど、国王のことも聞いたら、もうすぐ歩けるところまで回復しそうだってさ。
良かった良かった。
しかし、良かったのは国王が回復していることだけ。
なんと、王女をくまなく調べたら王太子の関与まで出て来たんだって……これまで全く気付けなかったとか。
回復した国王から聞いた話では、王太子を交代させるかって話が、王妃と二人の間でだけ出されていたそうだ。
何処かでそれを知った王太子が、交代させられる前に亡き者にしてしまえと王女を唆したとか。
ドロドロじゃん……
王族怖し。
なので、恐らく第二王子が王太子になるのではとはナージンさん談。
それ、私に言ってよかったのか?
こんなパンピーに言っていい内容じゃないよね?
確かに関わっちゃってるけどさ。
そんな報告を聞きたかったわけではないぞ!
ナージンさんが帰り際、
「あっ、機密事項なので他言無用でお願いしますな」
なんて、良い笑顔で言いやがって、憎らしかった。
気を取り直して、今度こそクリフ君の飼葉をゲットしようと出かけ、今日は何事も無くいい飼葉を買うことができた。
しかも、いいブラシもゲット出来たので、クリフ君にいつもの恩返しをせねばと意気込む。
夕方前にはヒースさんと共にクリフ君も戻ったので、身体を洗い、飼葉を出してあげたら喜んで食べてくれていた気がする。
やはり美味しい美味しくないがわかるのかな?
喜んでくれたなら何よりだ。
「クリフも喜んでるようだな」
厩舎の隣で、私がクリフ君のお世話をしているのを見ていたヒースさんの一言。
「やはり喜んでくれてますかね?」
「私にもそう見えるよ」
「嬉しいですねぇ。クリフ君はヒースさんにもだいぶ懐きましたね。突然なんですけど……もし、ロッテントークに行っている間面倒を見て欲しいと言ったら迷惑ですか?」
先に言っておかなければと思ったんだ。
クリフ君を撫でながらそうヒースさんに聞いてみた。
「クリフさえ良ければとは思っているが……」
「クリフ君どうかな?」
「ブルルルルゥ」
特に嫌がってはいなそうに見えるけど、それが伝わっているのかわからない。
「いや、面倒を見るのは問題ないんだが、そうではなく、私もロッテントーク行きを迷っているんだ」
えっ!?
一緒に来てくれとは言ってないぞ!?
何故そうなった?
急展開にびっくりだよ。
「えっ、ヒースさん何故です急に。だって、ロッテントークって瘴気が強くてこの大陸の人には厳しいってカマック様言ってましたよ?」
「その分生息している生き物も強いのだろう?なら自分を鍛えるには丁度良いと思ったんだ」
確かに瘴気に耐えられるくらいの体なんだから強いのかもしれないけど、ヒースさんが耐えられる保証はない。
「でも、ヒースさんの体が耐えられないのでは?」
「レベル百三十になれば耐えられるかもしれない。確か今までに渡航を挑戦した者で、最高レベルが百二十と聞いたからな。私もダンジョンでレベルを上げようと考えている」
えぇ……もう行く気満々じゃない?
確かに高いレベルになれば瘴気にも耐えられるのかもしれないけど、自分を鍛えるためにそこまでする?
仮にも国の最高位くらいの強さだった人でしょ?
既に強いのに……
それに、クリフ君はどうしよう……




