今度は冒険者
大型のキャラバンが魔物に襲われ、怪我を負った人たちを治療した謝礼を受け取る為、兵士に詰め所へ連れられた。
決して怪しい方の連れられ方では無い。
「そっちに座ってくれ」
「はい」
言われるままガタイのいい兵士の対面に座った。
「さっきは助かった、一般人と言っていたそうだが、教会には属していないのか?」
「ええ、教会とは無関係です」
「そうか、後で貴女が治療して助かった者からは治療費を集めておく。家は王都にあるのか?それとも違う街か?」
「私は定住していないので、今は宿に泊まっています。確か宿の名前は『リーヴェン』です」
「!?『リーヴェン』!?貴族の方と存じ上げず、失礼致しました」
「えっ!?」
こんな庶民感丸出しの貴族様なんていないでしょう!
泊まっているホテルの名前を出した瞬間態度が変わるって事は、あのホテルはやはり高位な方々が泊まるホテルなんだ。
場違いだなぁ私。
「いえ、私は貴族ではありません」
「しかし、あの宿に泊まる方は大方貴族か要人ですので。無礼を失礼しました」
うーん、本当にただの無職なんだけどなぁ。
泊まっているホテルがホテルだからだろうけど、急にかしこまられても困るんだよなぁ。
「全く失礼では無いですから、安心して下さい。何日かしたら王都からも出ますし」
「そうですか。失礼ですが、身分証を拝見出来ますか?」
私は商人ギルドのギルド証を出した。
これを出したからって、庶民なのか貴族なのか判断出来るものではないけど、私は最低ランクだからお金持ちで無いことはわかるだろう。
「ありがとうございます、お返しします。では、ユエさんが治療した者の料金の徴収がすみましたら『リーヴェン』にご連絡しますので、ご足労ですがまた此処へお越し下さい」
「わかりました。何日ぐらいで連絡いただけます?」
「二、三日中にはご連絡致します」
うーん、勝手に治療に参加しちゃったけど、ちゃんと料金は払ってもらえるのか。
細かい金額とか聞いてたら長くなりそうだったから、あえて聞かなかったけど、私が使った回復魔法は最高でハイヒール。
そこまで高額にはならないだろう。
緊急事態だったし。
それと、また二、三日宿泊延長が決まったから、ナージンさんに報告しておかないとなぁ。
でも、『リーヴェン』ホテルは名前だけで人を萎縮させてしまうとは……
そんな所に延泊するのも今更だが気がひけるなぁ。
それでも、この兵士に宿泊先は『リーヴェン』だと伝えているから、変えるつもりもないんだけどね。
詰所を出る前に、馬の飼葉が売っている場所も聞いておいた。
丁寧に教えてくれてとてもいい人なんだけど、結局最後まで態度が戻らなかったのは残念だ。
本当にただの人なのになぁ。
詰所を出て、飼葉を買いに行こうとしたらそれが目に入ってきた。
城門から入り、少し進んだ先に開けた場所があるが、そこに三つの大きな物体が横たえられている。
人型のようだが、大きさは一体三メートルを超えているのでは無いだろうか。
肌が見えている部分の色もブルーと、人では見た事がない色。
頭部はここから確認出来ない。
それでも魔物である事はわかった。
その魔物の周りには重装備の冒険者たちがいた。
きっと、この魔物たちを仕留めた冒険者たちだろう。
その中に見知った人がいた。
「ヒースさん!」
「ああ、ユエか」
確か調査に出てるって言ってたけど、討伐にも参加していたのか。
Cランクの魔物の調査だったと思うけど、何て魔物なんだろう?
「お疲れ様です、討伐にも参加されてたんですね。この魔物なんて言うんですか?」
「ブルーオーガだ。初めは一体の報告だったんだがな。被害が多くなってしまった」
「!?ヒースさんも怪我してるじゃ無いですか!」
ブルーオーガを指したヒースさんの右腕から、血が出ていた。
「ああ、私は大した怪我は負ってない。もしユエに余力があればあっちの冒険者達を診てもらえないだろうか?」
「あっ……私もさっきまで大型キャラバンで被害にあった方の治療をしてて、魔力があまり残ってなくて……ヒースさんMPポーション持ってます?」
「オーガに襲われた商隊か。良ければこれを使ってくれ」
そう言って中級のMPポーションを分けてくれた。
ヒースさんに促され、怪我を負った冒険者のところへ向かう。
こっちもなかなかに酷かった。
どうやら、今日冒険者達のオーガ討伐体が組まれ、いざ討伐だとなった時タイミングが遅く、大型キャラバンが襲われてしまい、キャラバンを守りながらの戦闘になったので被害が出てしまった。
オーガは一体でCランク、三体同時と人を守りながらの戦闘はとても難しいんだそうだ。
既に何人か助からなかった人が端に横たえられている。
それを尻目に苦しそうな冒険者達を治療していった。
このまま放置していたら助からなかった人もいた様で、同じ冒険者パーティの人達にとても感謝された。
むしろ、私たちの平穏を守ってくれた貴方達にこちらは感謝したい。
「以前より回復力が上がっていないか?」
粗方重症な人の治療を終え、座っていた所にヒースさんから声がかけられた。
「やっぱりそう思います?ダージ街に着く前、ヒースさんを治療した時辺りから感じてはいたんですけど、少しレベルが上がったのも影響するんですかね?」
「あまりそう言う話は聞かんが、どうだろうな」
うーん、謎なまま。
とにかく今日は回復魔法を使いまくった日だ。
それも経験として影響しているのかもしれない。
「ヒースさん、腕を出して下さい」
「いや、私のはポーションで治すさ」
「ヒール」
はい、勝手に魔法をかけました。
「すまない、助かるよ」
はにかんだヒースさんの顔に、今日の疲れは癒された。
クリフ君の飼葉を買いに来ただけなのになぁ、と思わずにはいられない一日だった。
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