魔道具を借りよう
「本当にユエさんの事を国王に話してはいけないでしょうか?」
そう言ってきた騎士姿のナージンさん。
「ええ、言わないでください。皆さんの祈りが神様に通じたって事でお願いします」
「ダメですか……何故治ったのか知っている者はいないかと、国王様自身も不思議でならないそうでしてな」
「神は気まぐれで良いんじゃないですか?日頃の行いですよ。でなければナージンさんとも出逢ってないでしょうし」
「そうですか……」
「まぁ、友人として御伽噺を話すのは止めませんけど、あくまでも友人として」
「!?ハハ、わかりました」
隊長として国王への報告はしないでほしい。
でも、友達同士が話す会話の種位なら、信じる信じないは自由という事で良いんじゃないだろうか。
そんなつもりで言ってみたが通じたかな?
「ユエさんは、これからまたダンジョンに行かれるんですよね?」
「そうですね、そろそろレベルアップしたいですねぇ」
あと一つ上がればレベル十五になり、“予定”スキルにキッチンが開放される。
料理は全然しないから食材系は少ないと思うけど、もしかしたらあれがあるんじゃないかと期待しているものがある。
そう、お菓子だ!
お菓子が好き過ぎて、専用棚まで作ってしまったくらいだ。
チップス系、チョコ系、煎餅系、ビスケット系、おつまみ系、アイス系など挙げたらきりが無い。
この世界に来る前にストックしていた数々の新商品のお菓子達が食べれると思うと、レベルアップも頑張れる。
それに、レベル三十になれば“買い付け”が解放されるから、私が購入した事があるものなら買えるようになるらしい。
これはレベルアップするしかない。
「この街からダンジョンのある街までは十日程でしたっけ?」
「ええ、『エンデル』という街の外にダンジョンがあります。良ければエンデルダンジョンの情報を取り寄せましょうか?」
「良いんですか!お願いしたいです」
「わかりました、お安い御用ですよ。いつ頃発つ予定ですか?」
「少しゆっくりしたいので、明明後日ですかね?それまでこの部屋をお借りしても良いですか?何ならお支払いしますんで!」
「いえ、いつまででも居ていただいて問題ないですよ」
ナージンさんにダンジョンの情報とホテルの延長をお願いして、ナージンさんは部屋を出て行った。
勝手に明明後日には発つって言っちゃったけど、ヒースさんに許可を取らないと!
コンコンッ
隣の部屋の扉をノックするが、応答がない。
どうやらヒースさんはお出かけしているようだ。
冒険者ギルドで依頼を受けているのかもしれない。
夜戻ったら聞いてみよう。
夕食前、もう一度隣の部屋をノックすると、扉の奥から返答があった。
今日もまたヒースさんの部屋で夕食を一緒に摂る。
「今日も冒険者ギルドで依頼を受けてたんですか?」
「ああ、王都外の森でCランクの魔物が出たらしくてな。その調査をしていたが、今日は収穫がなかった」
「じゃ、その調査依頼はもう少し続きます?」
「そうだな、二、三日中には成果を上げたいな」
「じゃ、ヒースさんの依頼が終わったらダンジョンに向かっても良いですか?それともヒースさんは暫く王都に滞在します?」
「いや、ダンジョンにはついて行く。この依頼が終わったらで良いか?」
「ありがとうございます!もちろん待ちますよー」
「クリフもまだ借りても良いか?」
「どうぞどうぞ、しばらくはのんびり王都を散策させてもらいます。あっ、もし怪我したら言って下さいね!ヒースさんは無償で治しますんで」
「悪いな、助かるよ」
幸せな夕食時間も終わり、今日はホクホクな一日であったなと良い気分で眠りについた。
♢♢♢
ヒースさんとクリフ君は今日も依頼中。
私は王都を散策。
何と、王都の中心部まで馬車を出してくれるという高待遇。
帰りは歩いて行くと伝えている。
帰り道はわからないけど、“予定”スキルにお願いします。
王都はやはり栄えている。
人も多いし、色々なものが売っていた。
おしゃれなカフェも、怪しい書店も。
そして、各ギルドはとても大きかった。
特に商人ギルド。
うん、どっかの県庁みたいだ。
高さもあるし、横にも長い。
今日はあの商人ギルドで借りる事ができる、支払いの魔道具を見せてもらいに来た。
商人ギルド証で支払いができるという魔道具だ。
かなり広い受付の一つで声を掛けて、ギルド証を出し、話を聞く。
特に店舗を持つつもりは無い事、旅をしながら商いできればと思ってる事を伝えた。
「そうですね、やはりこの魔道具をお持ち頂いた方が支払いは便利かと思います。硬貨を持ち運ぶのも最低限で済みます」
「確かに」
「貸出料が年間で金貨一枚です。如何されますか?」
私にはストレージがあるから硬貨の持ち運びは何の問題もない。
恐らくそんなに必要はないんだけど、ただ魔道具を使いたいって気持ちが強い。
ランタンとか水の出る皮袋も魔道具だけど、より先進的な魔道具が使いたいって理由なだけで、金貨一枚はバカかな?
「お借りしたいです」
「かしこまりました、では改めてギルド証とこちらに必要事項をご記入下さい」
手続きを済ませたあと、使い方を教わった。
木の筆箱のような魔道具。
蓋を開けると、左側に魔法陣のようなものが刻まれた薄い板があり、右側にはこの世界の数字が羅列されていて、鉄貨〜大金貨までのボタンもある。
実行、取り消しボタンもあり、金額を入力した後実行を押し、左側の魔法陣にギルド証をかざすと支払いが完了するんだと。
ギルド証と結びつけるので、自動的に私のギルド証へ入金される。
この貸出料金も自動的に引き落としてくれるそうだ。
こう言うのを見ると現代的だなと感じるけど、文明はさほど進んでいないのが不思議だ。
ついでにギルド証に大金貨五枚追加しておいた。
前に宿で支払った以来使っていなかったけど、何となく入金しておいた。
お金がある余裕なのか、お金を使いたくなるのは怖い衝動だ……
当初の予定通り、ギルドで魔道具をレンタルし、早く使ってみたいなと思いながらホテルに戻った。
翌日、この魔道具は早速活躍した。
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