別れ際の鑑定は動揺する
カイラさんと十日ほどかけ、城に勤める人全てを鑑定し終えたが、結局国王に呪いを掛けた呪詛士を見つける事は出来なかった。
ただ、一人怪しい人はいた。
ホテルの私の部屋に戻り、ソファの対面に座るナージンさんにそれを報告する。
「ナージンさん、今まで鑑定した人の中では該当者がいませんでした」
「そんな……呪詛はそう遠くで掛けられるほど簡単なものではない。近くにいるものだと踏んでいたが違ったのか?呪詛士を見つけられないとなると……」
明らかに動揺し、口調が素になるナージンさん。
「ただ、気になる人が……」
「誰だ?」
国王が助からないかも知れないと肩をお落としたナージンさんが、縋るような目で私を見て来た。
「カイラさんです……」
「カイラだと!?」
「カイラさんも呪詛士では無かったんですが……現在魅了の魔法にかけられているようでして……」
「そんな、まさか……確かに訓練で魅了耐性までは備わらんが……いつから……」
めちゃくちゃ動揺しているナージンさん。
信頼して私まで託したカイラさんが魅了にかかっていたとは予想もしなかった。
現に私もカイラさんを信用し過ぎてて、鑑定したのは今日の別れ際だ。
そう言えばカイラさんだけしてなかったなと思って、安易に鑑定したもんだから私の動揺は図り知れなかった。
しかも……
「それに、カイラさんに魅了をかけたのが……第一王女のようなんです」
「何故だ!?」
「理由まではわからないんです。それに、第一王女を鑑定した時、彼女も呪詛士ではありませんでした。ただ……」
「なんだね?」
「王太子に対して、異常なまでに崇拝しているような事は見えました」
「まさか……」
さっきからまさかしか言ってないナージンさん。
「まさか、王太子を王の座につけるためにやったのか?それに、私たちの事は王女に筒抜けと言う事か?」
ああ、確かに。
カイラさんが魅了されているなら、鑑定結果も私の事も報告している可能性が高いよね。
……
……!?
待って、私がワンド国の召喚者だってバレてるなら、マズイじゃない!?
ナージンさんが私のことをどこまでカイラさんに話しているかわからないけど、鑑定なんて特殊なスキル普通人には授からないんでしょ?
王女がワンド国の召喚の儀と結び付けてもおかしくない。
もし、既に王女が私の事をワンドに報告してたら……
「ナージンさん!私の事もバレてるって事ですか!?」
「そうなるでしょうな」
いや、そこ冷静に言わないで!
どうしたらいいんだ!?
「まずは魅了を解いてカイラから話を聞かねば。呪詛士に関して知っているかもしれん。ユエさん、キュアは使えるかな?」
「使えますが、初級魔法で魅了が解けるって不思議です……」
「ああ、魅了は見抜くのが難しいが、解くのは比較的簡単なんだ」
確かに鑑定するまで全く見抜けなかった。
あまりに普通な態度だし、違和感がなかった。
これは怖い魔法だ。
自分でも知らぬ間に操られてるって事でしょ?
国王は幼い頃から各種耐性に慣らされているから、王女の魅了が効かなかったんじゃないか、だから別の者を使って殺害しようとしたんではないかと言うのがナージンさんの推測。
他にも魅了にかけられた者がいたかも知れないが、私が城に来る事を知った王女は、カイラさん以外の魅了を解いたんではないかとも言っていた。
やりよるな王女。
私が何千人鑑定したと思ってるんだ!
「でも、カイラさんの魅了は最後まで解いてませんでしたよね?私にいつ鑑定されるかもわからないのに……結局、最後の最後でーー」
「!?マズイ!!」
と言って部屋から飛び出し、走り出したナージンさん。
その音に気付いたのか、隣の部屋のヒースさんが出てきた。
「どうした?」
かくかくしかじかで今までの経緯を簡潔に伝える。
「もしや!急いで追うぞ!」
「はい!?」
何がどうなってる?
何故私だけわからないんだ……?
兎に角ヒースさんの後を追うが、早くて全然追いつけない……
もはや二人とも見えない。
もう、二人がどこに行ったのかもわからないので、“予定”スキルに早打ちで『ヤコブ・カンパトリの行き先に向かう』と入力した。
そして、久々のチャリを出し、予定スキルに従ってめちゃくちゃ漕いで向かった。
チャリは偉大だ。
すぐ着いた。
そこは魔法士の寮で、カイラさんの部屋の前だった。
「カイラ早まるな!」
そう扉の奥からナージンさんの声が聞こえた。
ソッと扉の奥を覗くと、短剣の先を自分の喉元に突き立てているカイラさんがいた。
その真正面にはナージンさん、横にヒースさん。
ヒースさん、良く追いつけてこの場所がわかったなぁ……
バカ、今はそれを考えてる時じゃない。
自分に隠匿操作をかける。
「隊長、申し訳ありません。自分が許せませんので、止めないで下さい。今まで大変お世話になりました」
「!?やめろぉ!」
そう言ったカイラさんは、喉元に突き立てていた短剣をグッと押し込んだ。
ガツンッ!
ゴトッ……
「えっ?」
「ヒール!」
「えっ?ユエ……さん?」
「あぶ、危なかったぁ……」
喉元から血が出ているカイラさんに回復魔法をかける。
傷は浅いが、少し喉に刺さってしまった上、私が短剣を弾いた時に切れてしまったので、焦った。
バチンッ!
呆然としていたカイラさんの顔をナージンさんが平手打ちした。
めちゃくちゃ痛そうな音!
頬を手で抑え、またも呆然とするカイラさん。
「この戯け者が!何も説明せず自害するなど許さん!」
あっ、そっちか。
「申し訳、ありません……」
まだ頬を抑えたままのカイラさんが言葉を絞り出した。
取り敢えず、カイラさんの自害は止められたけど、この騒ぎを聞きつけた寮の人達が集まり出している。
このままここで話すわけにはいかないので、ナージンさんに首根っこを掴まれたカイラさんを、私のホテルの部屋に連れて行った。




