手がない?
ちょっと短めです。
カイラさんに連れられ城の前。
目の前には御伽噺の中から出て来たような城が建っていた。
ワンド国の王城も大きかったけど、この国の王城もまた大きい。
まあ、普通お城は大きいか。
この城は横に長く、両端に高い塔が立っているのでやはり国によって造りが違うんだと感じた。
「ユエさん行きますよ?」
ボーッと城に見惚れて、使用人通用口で立ち止まってしまっていた私にカイラさんが声を掛けてくれた。
「すみません」
「大きくてびっくりしました?」
「ハイ、御伽噺の中に入ったようでした」
「ふふ、可愛らしいことを言いますね」
口に手を当てて、クスッと笑うカイラさんは眼福でした。
それから、まずは下働きの人たちが勤める場所に連れられた。
どこに呪詛士が潜んでいるか分からないから、徹底的に鑑定して欲しいとナージンさんから言われている。
しかもできれば短時間で。
なかなか無茶を言う。
下働きの人達だけでも何百人いるんだい!
言われるまま、カイラさんが城を案内している体で、行き交う人々を片っぱしから鑑定していった。
カイラさんが、その日城で働いている人のリストを持ち、私が名前を言って該当者でなければリストから消していくという一連の共同作業。
途中休憩を挟みながら、食堂でも随時鑑定。
今のところ、該当した人はいない。
鑑定をした時に、その他欄を詳しく見たいと意識すると、賞罰やどこの出身かなども見えてくる。
隠されたスキルなんかも見抜けるみたいで、鑑定の優秀さを思い知った。
何人か他国のスパイを見つけてしまったのは仕方ない。
もちろんその場でカイラさんには報告済み。
今まではステータス表示のみ意識していたからだが、こんな見方も出来るのかとスキルを使いこなせていなかったと反省。
その日から三日かけて下働きの人達を見ていったが該当者はいなかった。
「使用人ではないと言うことですね。では明日からは騎士団、魔法士団を調べていきましょう」
カイラさんに明日以降の調べる人達を教えてもらう。
うーん、まだまだ終わらなそうだ。
もし、騎士団にも魔法士団にもいなかった場合、今度は城で務める偉い人達の番だ。
主に大臣とかの貴族がメイン。
絶対政務を担当する人たちは腹黒が多いんだよ。
決めつけだけど。
そんな明日からの予定をカイラさんと話し、ホテルに戻った。
私が宿泊している隣の部屋の扉をノックする。
「戻ったのか、ご苦労様」
「……疲れました。でもまだ見つかりません」
ここ最近定例化しているヒースさんへの報告。
それと、ヒースさんの部屋にお邪魔して、一緒に夕食を取ってもらっている。
ホテルの方にも伝えていて、一緒に提供してもらっていて、今日もお邪魔します。
ただ、配膳係がいる間は城での話はできない。
「ヒースさんは今日どこに行かれてたんですか?」
「冒険者ギルドで依頼を受けたな。ランクがDに上がるらしい」
「おぉ、ランクが上がるの早いですね。流石だ」
そんなたわいの無い話をしながら食事を取る。
「クリフ君はどうです?」
そう、私が城で働いている間、クリフ君はヒースさんが面倒を見てくれている。
ずっと宿の厩舎にいるのは馬にとってストレスになるから、それならと面倒をかって出てくれた。
クリフ君も思い切り走れるし、ヒースさんも移動手段が確保できる。
一石二鳥だ。
「クリフは嫌な顔せずしっかり走ってくれてるよ」
「良かった」
もし、ヒースさんにクリフ君が懐いてくれたらそのまま……なんてズルい思いも。
恐らくヒースさんもクリフ君も感じてるんじゃないかな、私の我儘を。
「そっちはまだ、時間はかかりそうか?」
「そうですねぇ、難航してますね」
「そうか」
そんなに口数が多く無いヒースさんだけど、話題振りはしてくれる。
こんな日を続けていたら、何か勘違いをしてしまいそうになるから怖い。
いかんいかん。
♢♢♢
翌日から、騎士団の訓練場や魔法士団の集まりに参加して、また片っ端から鑑定していった。
だが、誰一人として該当する人がいない。
見つかるのは他国のスパイばかり。
多いな本当に。
「いませんね……」
「そうですね。やはり貴族なのでしょうか?それとも既にもう……」
「えっ?既にいないとかあるんですか?」
「最悪な場合、既に呪詛士は殺害されていて、解呪出来ない状況に陥る事です」
「えっ?呪いをかけた本人が亡くなった場合、呪いが消えるんじゃ無いんですか?」
「ええ、むしろ強くなる傾向があり、解呪する手立てが無くなります」
マジか!
それ完全に下っ端の呪詛士に呪いをかけさせて、殺して解呪出来ないようにしてるでしょ。
確実に国王を殺しにかかってる気がする。
もしかしたら、城内の人ではないから見つからないだけかもしれないけど、カイラさんの線が濃厚じゃないだろうか?
でも、まだ国の中枢を担う人たちの鑑定は終わっていない。
国王に呪いをかけた人物を特定できるに越した事は無いんだ。
そうでなければ国王を救えない。
だが、そんな願いは叶わず、結局宰相や大臣含む城内で働く人全てが該当しなかった。
ただ、一人呪詛士ではないが怪しい人はいた。
それを報告した時のナージンさんの顔は忘れられない。




