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結局いてもいなくても

前話の最後の言い回しを少し変えました。


「チート……?」

「そうだよ。ユニークの“予定”スキルだってヤバイやつだろ?しかも創造神ーー」

「ワァーッ!黙れこの“賢者”!」


 決して他意はない。

 「賢者だけど!なんかニュアンスが!」とか言ってるけど無視。


 しかし、この人何ヒースさんの前で言いそうになってんだ!

 

 私はカジさんの席まで行って腕を引き、


(ちょっとヒースさん知らないんだから言わないで下さいよ!)

(おっ、そうだったのか、それは悪い)

(加護の事もスキルの事もオフレコで!)


 創造神の加護とか知られたら大変だよ!

 何故かカジさんには隠匿していたはずの加護まで見えてるみたいだけど、言わないでくれ!


「まぁ、スズキさんも腕輪は何とかなったからここにいるんだろ?それだけでチートだと思うけどな」

「チートが何か知りませんけど、確かに何とかなりましたね」

「簡単に言やぁ、想定してない規格外の能力って意味だよ」

「確かにそんな感じですわ」

「って事でもう良いよな?」

「良いですけど……因みにこれからどこに行くんです?」

「そうだなぁ、決めてないけどフェーリア大陸にでも行くかな。あの国と同じ大陸にいたら見つかっちまうかもしれないし」

「まあ、確かに。じゃ、ヒースさん何か言う事ありますか?」


 今まで殆ど私とカジさんのやり取りのみで、ヒースさんはそれを見ているだけだった。

 でも、首を横に振るだけで特に聞く事はないようだ。


「じゃ、スズキさん元気でな!」


 だから、早いんだってあんたは!

 召喚当初から勝手に話を進めてたなと思い出した。


「なんかその笑顔が憎らしいんですけど。まあもう会う事はないと思いますけど、精々楽しんで下さいよ」

「カジ殿お元気で」


 晴れ晴れとした顔で部屋を出ていったカジさん。

 結局あの人いてもいなくても良かったわ。

 でもまあ、気にしてはいなかったけど、同郷の人が無事であったと知れただけ良しとするか。

 無事どころか生き生きしているくらいだったし。


 あっ、もう日本に帰れませんよって話してないけど良いか。

 むしろこっちの世界に来て喜んでたくらいだもんね。

 複数の嫁も出来てたし。


「ヒースさんすみません、勝手に話を進めてしまって」

「問題ない。ユエさんはやはり召喚者の一人だったんだな」

「はい、脱走した時に国王をと宰相含む数人を殴りました。除隊したとはいえワンド国の方ですよね?引き渡しますか?」


 既にカジさんを捕らえていないから、引き渡す気はないと思うけど、念の為聞いておく。


「確かにワンド国民である事は変わりない。それに国王たちが怪我を負ったのも事実だが、証拠がない。誰も貴方がやったとは見ていないのだ。我が国が貴方達にした事を思えば無理に連れ戻すことも出来ない。よって引き渡すつもりはない」


 ご尤も。

 ヒースさんに自供したけど、結局誰も私がやったところは見えていないってことだ。

 逃げたからあいつだろうって事になっているだろうけど、ヒースさんは見て見ぬフリをしてくれてるのか。


「ありがとうございます。でも、ヒースさんの隊長解任や除隊の原因は私です。私で叶えられる事があれば言ってください」

「いや良いんだ。見抜けなかった自分が未熟なんだ。鍛え直すいい機会だと思って、冒険者の頂を目指すさ」


 向上心がすごい。

 でも、これから冒険者の頂を目指すってヒースさんいくつなんだ?

 見た目は二十台後半から三十代ってところだけど。


「あの……ヒースさんはおいくつなんですか?」

「うん?言ってなかったか、私は二十八だ」

「ご結婚とかは?」


 どこのお見合いだよ!


「していたが、解任と除隊で婚姻が破棄となった。元々婿養子だったからな」

「ええぇぇ!?本当にごめんなさい!!」


 勢いよく頭を下げた。

 まさかのバツイチ!

 そりゃこんなイケメンでスマートな人が結婚していないわけないよね……

 

「良いんだ。政略結婚であったし、息子も一人は十になる歳だから後継は問題ない」

「えっ?そう言う問題?息子さんと離れて寂しくないです?」

「寂しくないといえば嘘になるが、守れなかった自分が不甲斐ないのでな」

「……」


 なんて男らしい。

 私を責める事なく、自分が不甲斐なかったと言い切ってしまう男。

 そりゃキュンとしないわけないでしょうが。


「ところで、ユエは偽名だと思うが、これからもユエさんと呼んで問題ないか?」

「ええ、ラミーさんとケージさんには異世界からの召喚者であることは言っていないので、ユエのままでお願いします。あと、敬称はいりません。私もヒースさんのままで良いですか?」

「ああ、そのままで良い。それにこちらも敬称は不要だ」

「いや、流石にヒースさんに敬称付けないのは無理ですよ……」

「まあ慣れたらで良い」

「はいぃぃ」


 ヒースなんて呼び捨てできるわけがない!


「ところで、召喚者なら“鑑定”が出来るはずだが、昨日からのレベルアップは見たか?」

「いえ、昨日の夜はそれどころでは無かったので、まだ」

「では、今見てみてはどうだ?」


 そう言えば、昨日はダンジョン初日でモンスターハウスに出会して、その後カジさんと出会して……

 色々ありすぎて、部屋に着いて寝る支度してベッドに入ったらもう意識なかったからね。

 ステータス鑑定してる余裕無かったね。

 

 言われるまま自分を鑑定する。


▽▽▽

名前  :トウコ・スズキ(偽名:ユエ)

職業  :販売部

レベル :14

HP   :575

MP   :790

スキル :隠匿操作・鑑定

ユニーク:予定・ストレージ

その他 :創造神の加護・商業神の加護

△△△


 レベルアップは二つか。

 沢山倒しても経験値が少ないのが、低層チャレンジの悲しい所。

 いや、一日に二つ上がっただけでも良しと思おう。


「レベルが二つ上がってました。今は十四です」

「そうか、明日は五層まで挑戦しても良いだろう。私も後ろにつくのでな」

「結局お願いしてしまって申し訳ないです。ヒースさんは下層に挑戦する為にこの街に来たんですよね?」

「ああ、だがユエがある程度レベルアップするまでは手伝うさ」


 良いのかなぁ……

 確実に私のせいで時間を無駄にしているし、私のせいで人生狂わせてるのに。

 ヒースさんが寛大すぎてもはや人の枠には収まらないのではと思ってしまう。


 呼び捨てされて、またキュンとしてしまったのもしょうがないと思う。


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