話し合いは空気を読んで!
「えっ!?スズキさん!?」
「はい?」
……スズキさんと言う言葉に反応し、そう呼ばれた方を向く。
すると、そこにはこの世界に一緒に召喚されたカジさんが立っていた。
「えっ!?」
「スズキさん何故貴方がここに……?」
「……」
カジさんの方を向いたまま驚き、言葉が出てこない。
と言うか何も言えないし、私の対面にいるヒースさんからの視線も痛い。
きっとバレた。
すると、カジさんが私のテーブルを見渡し、彼に気づく。
「っ!?ジェス隊長!?」
「カジ殿……ユエさんはやはりか」
「!?」
これは、色々ヤバいぞ。
こんな所でワンド国ゆかりの三人が揃うとは。
そのうち二人は脱走民だし。
しかし、カジさん。
あんた三人の美女を侍らせてるとかどう言うこと!?
しかもそれぞれ系統が違う。
グラマラスにスレンダーに清楚。
この短期間であんた何があったんだ!?
いや、今はそれどころじゃなかった!
「じゃ、じゃあ俺は行くわ」
「待って!話すことありますよね!?」
逃すもんか!
私だけ捕まるなんて嫌だ!
あんたも道連れだ!
そう思いながらカジさんの腕を掴む。
「大丈夫だ、ユエさん。私は貴方達を追って国を出たわけじゃない」
「ユエって誰?」
「えっ!?じゃ、何故ワンド国を?」
「それはーー」
「あの、ユエってーー」
「私だよ!ややこしいから黙ってて!」
カジさん空気読めよ!
明らかに今ジェス隊長の話になる所でしょうが!
「な、なぁ、ここだとなんだから別の場所の方が良いんじゃねぇか?」
とケージさんの言葉にハッとした。
周りのテーブルの人達が、私達のテーブルに注目している。
確かにこんな場所で、何人かは立ちながら話す内容では無かった。
「ごめんなさい、そうですね。でもカジさん、逃しませんよ。ちゃんと話をしましょう」
「……わかったよ。負い目もあったしな」
カジさんはこっちが素の話し方か。
ただ、今から話し合いはできない。
場所がないからだ。
商人ギルドも既に終わっている時間。
カジさんとは明日朝、商人ギルド前で待ち合わせをした。
私達も今日は解散となった。
帰り際、
「明日は一日お休みとしましょう。ダンジョンでのレベルアップは明後日から再開と言うことで」
と、ラミーさんに気を使わせてしまう。
「ラミーさん、ケージさん、お願いしている立場なのに気を使わせてしまって申し訳ないです」
「良いのですよ。私達にはお話し出来ないこともあるでしょうし。気になさらないで下さい」
そう言って各部屋に戻っていった。
それにしてもこんな所で先に脱走したカジさんに会うなんて……
明日ちゃんと来てくれるかな?
……何か怪しいんだよなあの人。
誰にも何も言わずに先に城から脱走してたし。
来ない可能性を考えて、しっかり“予定”を組もう。
明日の朝、商人ギルドでカジさんとジェス隊長と話し合う、と言う内容を登録した。
これであの人も必ず参加するでしょ!
♢♢♢
「何故だ!何故俺はここにいるんだ!さっき街を出たはずだったのに」
「いや、約束したじゃん……」
もうなんかこの人に敬語を使わなくて良い気がする。
何が「負い目もあったしな」だ!
絶対感じてなかっただろあんた!
案の定、約束した時間に来るつもりはなかったらしいカジさんは、“予定”スキルのお陰でちゃんと来た。
が、自分の思いとは裏腹に体が動く謎を体験して、発した先程の言葉だ。
もちろん今日は美女達を侍らせていない。
「おはようございます、ヒースさん」
「おはよう」
そんなカジさんは無視し、ヒースさんに挨拶をする。
一緒にここまで来るには気まずかったから、時間をずらして先に私が着いていた。
そして、私が商人ギルドで部屋を借り、三人で入る。
「で、何が聞きたいんだ?」
部屋に入って直ぐのカジさんの一言。
この人は早く帰りたいんだろうけど、せっかちだなぁ。
「貴方に聞きたいことはそんなに無いんですけど、でも何故一人で脱走したんですか?」
「どう見ても私利私欲の為の召喚だろあれ。そんな国に協力するつもりは初めから無かったよ」
「分かってたなら私達にも声掛けてくれたって良いじゃん!」
「そこは悪かったと思ってるけど、人の心配してる余裕は無かったな。それにスズキさん腕輪着けられてただろ」
「!?知ってたの!?」
「食堂に行った時見かけてさ、変な腕輪が着いてたんで気になって鑑定したんだよ。そしたら“隷属の腕輪”って出たから、やっぱダメなやつだって思ったね」
「……」
この人シレッと言いやがって!
腕輪を外せないにしても何か声掛けてよ!
「我が国の非礼を詫びる。申し訳なかった」
「……」
ヒース改めてジェス隊長に謝られる。
やはりこの人も腕輪の事は知ってたのか。
でも、謝るって事はあの召喚を良く思ってなかったって事なのかな?
「隊長は俺たちを追って来たわけじゃ無いって言ってたけど、なんでここにいるんだ?謝罪の為じゃないんだろ?」
「ああ、貴方達と会ったのは偶然だ。自分を鍛え直しにこの街に来たんだ」
「えっ、でもそれなら近衛隊でだってできるじゃ無いですか?」
「そうだが、隊長の職を解任された上、除隊を命じられてな。本来なら国王を守れなかったので極刑や追放もあり得たんだが、これまでの功績で何とか免れる事は出来た」
「……ごめんなさい」
そうか、やはり私のせいだったか。
謝ることしか出来ない。
「いや、そちらの立場に立てば怒りは尤もだ」
元々良識のある人じゃなきゃ、除隊の原因になった私を許そうとは思わないよね?
「じゃ、俺帰って良いか?」
「本当、空気読みなさいよ!宰相との話の時は空気読んでたじゃん!」
「だって、隊長の話俺に関係ないでしょ」
「無いけどさ!」
「嫁達が待ってるからな」
「嫁達!?ハメ外し過ぎじゃない!?」
何だこの人のこの浮かれようは。
めちゃくちゃこの世界を楽しんでます感がスゴイ。
確かにあんな美女達が嫁なら楽しいのかもしれないけど。
「良いだろ、こんな世界に来たんだから。アンタだってチート持ってんじゃん」
「チート……?」
「そうだよ。ユニークの“予定”スキルだってヤバイやつだろ?しかも創造神ーー」
「ワァーッ!黙れこの“賢者”!」
決して他意はない。
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