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ニジャッポンってどこ?

 

 ホーンラビットのレア種を倒してレベルアップを感じたところで、隠匿操作のスキルを解除した。


「レベルアップしたようです」

「魔力はどうだ?」

「まだ大丈夫そうです」

「そうか、初日で無理をしてもしょうがないからもう少し進んだら今日は上がるか」

「わかりました」


 そうケージさんと話して先に進む事になった。

 通路が狭い為、縦一列に並びケージさんが前、ラミーさんが真ん中、私が後ろという順番で進んでいる。

 すると、私の後ろのヒースさんから話しかけられた。


「ユエさんは気配を消せるのか?」

「ん?ええ」

「そうか……」


 ヒースさんが何やら難しい顔になってしまった。

 なんだろう。

 気配を消せるようなスキルを持っている人は他にもいると思うんだけどなぁ。


 そんな事を考えながら進んでいると、狭い通路から少し開けた場所に出た。

 特に魔物がいることもなく、空洞になっているだけの空間。

 

「ここはなんでしょう?」

「本来なら魔物がいるんだが、倒された後かもな」

「先に進みましょうか」


 そう三人で話、また先に進もうとした時、


 ……ドド……ドドドド……ドドドドド


 何かが大量にこちらへ近づいてくる音がする。


「なんーー」


 ケージさんの言葉は、ホーンラビットの群れがこの広場にドッと押し寄せてきた音に掻き消された。

 

「ええぇぇええー!」

「マズイ、何体いるんだ!?」

「ヒース殿ご助力願う!」


 私が叫び、ケージさんは数に驚き、ラミーさんは早くもヒースさんに助けを求めた。

 それにしても何体いるんだ!?

 全く数えられない。

 

「お嬢、ユエさん魔法を群れに向けて放ってくれ!」

「ストーンバレット!」

「ホーリーアロー!!」

「ストーンフォール!」


 私とラミーさんは近づいてくるホーンラビット達に向かって次々魔法を放つ。

 手前の魔物は消えてもまだまだ沢山いる。

 ケージさんは剣と盾で応戦し、ヒースさんも剣で薙ぎ払っている。


「ユエ、左からくるぞ!」

「はい、ホーリーアロー!」

「次は上から二匹!」

「はい!ホーリーアロー!」

「ラミー、奥にストーンフォールだ!」

「はい、ストーンフォール!」


 ヒースさんがそれぞれに指示を出す。

 自分も戦いながらなのに、どこに目がついてるんだ!?


「ユエ!右から来ているぞ!」

「……はぃぃぃ」


 やばい、魔法の無駄撃ちが続き魔力が尽きそうだし、次から次へと襲いかかってくる魔物を追うだけで目が回る。

 急いでストレージからMPポーションを出すが、取り落とす。


 ガチャンッ、パリーン!


 ダメだ落ち着け。

 割れてしまったポーションはそのままにし、もう一つ出そうとした時、両サイドから魔物が飛びかかってくるのが見えた。

 マズイ、私は片方しか狙えない。


「ユエ左は俺が斬る!右だ!」

「ッ!ホーリーアロー!」


 ズバンッと片方の魔物が斬られ、もう片方は魔法に貫かれる。


「今のうちに飲め!」

「……はぃぃぃ」


 ラミーさんもポーションを飲んでいたが、飲んでる間持っていたワンドで魔物を殴っていた。

 ……そうか、あれは物理もいけるのか。


 それから何とか凌ぎ、全てのホーンラビットを倒す事ができた。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「大丈夫か、ユエさん」

「……ダメですね。何ですか今のは」

「ここの階層がモンスターハウス化したのかも知れない」

「……はぁ、はぁ、なんですか、それ」

「通常より魔物が急激に多く出現する現象だ。ダンジョンの気まぐれで起きる。下層でこれに合うとほぼ終わりだ、逃げるしかねぇ」

「……」


 もう言葉が出なかった。

 今は二階層でモンスターハウス化だったから何とかなったものの、もっと下の階であんな大量の魔物に囲まれたら……悪寒がした。


 もう一度MPポーションを飲み、三人を見る。

 致命傷のような傷はないが、擦れたり切り傷があるようだ。


「皆さん、回復しましょうか」

「いや、良い。これくらいならポーションで治るから大丈夫だ。魔力は温存しておいてくれ」

 

 あっ、そうか、普通のポーションを飲めば良いんだ。

 私は変わらず無傷だ。


「ヒースさん、助けて頂きありがとうございました」

「ああ、想定外だったが、何とかなって良かった。ラミー嬢もユエさんも戦闘中呼び捨てにしたのは許してほしい」

「いえ、気にしておりませんし、ご助力願ったのはこちらですから。ありがとうございました」


 ヒースさんの指示がなかったらなかなかに厳しかったと思う。


「とりあえずこの魔石たちを拾うか」


 ケージさんの言葉に辺りを見ると、この空間一面に倒した魔物たちの魔石が散らばっている。

 いくつか角も落ちているので、手分けして回収したところ、四十八匹分の魔石があった。

 もっといるように見えたけど、ホーンラビットがピョンピョンしてて多く見えただけなのか?


「街に戻りましょうか」

 

 ラミーさんの言葉に全員が頷く。


 それからは想定外のこともなく、無事ダンジョンから出る事が出来た。


「皆さん……今日はありがとうございました。反省会しつつご飯を食べませんか?」


 ダンジョンから出て私の一言目がこれだ。

 ダンジョンの緊張から解放されて、めちゃくちゃお腹が空きだしたから美味しいご飯が食べたかった。

 ラミーさん、ケージさん、ヒースさん共に了承を貰い、宿とは違う食堂に向かった。


♢♢♢


「お疲れ様でした!」

 

 全員のグラスが届き、私が乾杯をした。


「ユエさんは初日であれに当たっちまったからキツかっただろう」

「ええ、一階層のようなのが続くんだと思っていました……」

「ダンジョンの浅瀬といえど死ぬやつもいるからな、明日からも気を引き締めよう」

「モンスターハウス化は稀ですけど、当たってしまったのは仕方なかったですね。ただ、レベルはだいぶ上がったのではないですか?」

「恐らく、明日ギルドで確認してみます」


 ご飯も続々とテーブルに届き、食べながら話す。

 広い食堂なので、テーブル同士は離れており、ラミーさんも元の話し方に戻っていた。


「ヒースさんは頭の後ろにも目が付いているんじゃないかと思いました」

「訓練していたからな。ユエさんは無駄な動きが多いのと、まだまだ硬いな」

「……ですよね。精進します。特に何を気をつけたら良いですか?」

「そうだな__」


 結局ヒースさんに沢山アドバイスを頂いてしまった。

 ついてこなくて良いとか言っておいて、かなり助けられたのも事実。

 それに経験豊富な上、指導力のある人の言葉は的確だ。

 ありがたく聞いておく。

 明日からも同行してくれると言うことになり、


「そう言えば、ラミー嬢とケージ殿は何故ユエさんのレベルアップに付き合っているんだ?」

「ユエさんには大変な恩があるんです。詳しくは言えないのですが、そのお礼と言う事でお手伝いしております」

「そうか、ユエさんはヨーク出身に見えないが故郷はどこなんだ?」

「私はニッ……」


 やばい!

 うっかり今日本って言いそうになった。

 ヒースさんがワンド国の人だって忘れかけてた!

 召喚された私たちが異世界の日本から来たって事は多分知っているはずだから、ここで日本なんて言ったら即バレだ。

 話の流れ的に私の故郷を聞く感じじゃなかったよね?

 まさか何か気付かれてる!?


「ニ……ニジャッポンってところです!」

「ニジャッポン……」

「「ニジャッポン?」」


 ヒースさんは何故か疑わしい顔をしている。

 ラミーさんとケージさんは、以前私がニホンと言う国が出身だと伝えているから?の顔をしている。

 私は二人に目配せをして、合わせて欲しいと訴えるが伝わっただろうか?


 そんな私がピンチを迎えている時に、食堂の入り口から人が入ってきた。

 私は四人用テーブルの入り口が見える席に座っているが、その入って来た人を気にしている余裕もなく、どうしようとグルグル考えていると、


「えっ!?スズキさん!?」

「はい?」


 ……スズキさんという言葉に反応してしまった。



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