なんだその取り柄は!
結局いくら手伝いは必要無いと言っても、ヒースさんの中では決定事項みたいで、明後日のダンジョン挑戦を共にすることになった。
まだ起きないラミーさんに軽く《アンチドーテ》の魔法をかけ、意識を戻してもらう。
ケージさんにはかけない。
明日苦しめば良いんだ。
ラミーさんが何とか立てるようになったところで、ケージさんはヒースさんにおぶってもらい、私はラミーさんに肩を貸し、それぞれ部屋に送った。
翌朝。
「「申し訳ない」」
朝食時ラミーさんとケージさんに謝られた。
うん、確かにひどかったからね。
「良いですよ。ケージさんは今度ヒースさんに謝って下さいね」
「ああ、そうする」
「そう言えばラミーさんはお酒が弱かったんですね」
「面目ない。飲み慣れていなかったんだ」
「ま、それに関してはケージさんが一番悪いですからね」
「お嬢、申し訳ありませんでした」
「……」
無言のラミーさんはやはり怖い。
あっ、そうだ。
「そうだ、ラミーさん。多分ラミーさんの事はヒースさんご存知みたいですよ?やはり隊長でしたし。元の様ですが」
「面識はないんだが……それにしても元とは?」
「詳しくは聞いてません。でも元って言ってました。だから今は隊長ではない?」
「それはおかしいですよ。確かあそこの国、近衛隊長は昨年新たに決まったはず。そう簡単に挿げ替えないでしょ。何かあったんですよあの国で」
ケージさんが推理し始めた。
あんなに呑んでおいて二日酔いは無いのか?
なんか悔しい。
しかも大凡正解だし。
確かに何かあったんですよ。
言えないけど国王は殴られてるし私に。
「それと、話の流れでダンジョンへの同行が決まってしまいました……」
「マジか。隊長レベルなら安全は確保されたようなもんだが、むしろ過剰戦力じゃねぇ?」
「私もそう思うな。浅瀬で人数が多いと経験値が少なくなる。なるべく人数は抑えた方が良い」
「じゃ、やはり断りましょう!そうしましょう!」
「何故ユエさんはそんなに嬉しそうなんだ?」
嬉しいに決まってる!
バレるリスクが少しでも減らせるんだから。
一緒にいればいるほど危ないからね!
と、ここで丁度ヒースさんが二階から下りてきた。
すかさず、
「ヒースさん、昨日は済まなかった」
と、ケージさんが頭を下げる。
先を越された。
早く手伝いはいらないと言いたかったのに!
「いや良い、私も止めなかったしな。体調は良いのか?」
「ああ、次の日に響かないのが俺の取り柄だからな」
なんだその取り柄は!
私の二日酔いで苦しめば良いと言うささやかな願いは叶わなかった。
ヒースさんも朝食を終えたところで私が切り出す。
「ヒースさん、昨日レベルアップの協力を申し出てくれましたが、浅瀬だと少ない経験値をこの人数で分ける事になるので、辞退させて頂けますか?」
「ん?私とユエさんで入れば良いだろう?」
「えっ?なんでそうなる?」
ついタメ語で話してしまった。
「お気づきだろうが、私は元近衛隊に所属していた。部下の指導にも慣れている。それと、ラミー嬢はサンディス家の方だろう?出来れば危険な事はしない方が良いのでは無いか?」
ごもっともなんだけど……
「サンディス家の跡継ぎは御令嬢のみと記憶しているが違ったかな?確か婿を取る話があったとか」
いや、御令嬢だけなのは合ってるけどさ。
なんでそこまでサンディス家の事を知ってるんだいあんたは!
「何故そこまで我が家の事を知っている」
ほら、めちゃくちゃラミーさん警戒してるじゃん。
ケージさんなんて殺気?みたいなのまで出ちゃってるよ。
「済まない、ここでするような話では無かったな」
そう、ここはまだ宿の食堂という開けた場所だ。
近くに人はいなけど、誰に聞かれてもおかしくない。
なのに、プライベートな話まで出てしまったんだから場所を移動するべきだろう。
そこで、うってつけな場所が商人ギルドの会議室。
『フレイ』の街にあったような大きい商人ギルドがこの街にもある。
商人ギルドの会議室は、魔道具による防音設備も整っていて、商人ギルドに所属しているものなら時間貸ししてくれると言うシステムがあるのだ。
使用する会議室の規模によって料金は変わるが、小さい部屋なら一時間銀貨一枚程。
早速借りて、ヒースさんとの話し合いを始めた。
「先程は失礼した。改めて名乗るが、私は元ワンド国近衛隊隊長であったジェス・カイルラーと言う。訳あって除隊し、今はただのヒースとして冒険者をしている」
「私は、ラメリア・サンディスです。ご存知の通りサンディス家の長女です。ユエさんのレベルアップの為この街に来ました」
「ラメリアお嬢様の護衛のケージだ。名は変わらない」
そして、私にみなさんの視線が集中するが、
「ただのユエです。商人ギルドと冒険者ギルドの両方に登録しています」
一人自己紹介がおかしい気がするが、これ以上言いようがない。
異世界人ですとか、ワンド国から脱走しましたとか死んでも言えない。
「では、早速ですが何故貴方はサンディス家の事をあそこまでご存知なのですか?」
ラミーさんがヒースさんに問う。
「私がまだ近衛隊隊長の頃、王子の婚約者の話となったのだ。国内外問わず探していた時に優秀な貴女の名が上がってな。ただ、爵位が男爵家という事ですぐに婚約といかず、別の方に話がいったのだ。その際に貴女の経歴や姿絵など見て覚えていたんだ」
選ばれるラミーさんもラミーさんだが、ヒースさんもヒースさんだな。
おそらく何十人もいた王子の婚約者候補の一人を覚えていたとは。
しかも本人見てなくて絵姿なのに。
「先程、勝手に話してしまった事、謝罪する」
「そうだったんですか。謝罪は受け取ります。ですが、ユエさんに私が協力する事は約束していたんです。貴方の助力は必要ありません」
「だが、そうなると三人で潜るのだろう?それこそ非効率ではないか。浅瀬なら二人でますは入るべきだ。下手に人数が多いと戦いにくい」
「それをこれから__」
ラミーさんとヒースさんの応酬が止まらない。
私とケージさんはそれを見ているだけ。
どちらが私のサポートをするかで話している。
えっ? 何か私取合いされてる感?
「いや、私は気心知れたラミーさんとケージさんにサポートして欲しいんですけど」
ちょっと口を挟んでみた。
だって、ヒースさんとだと戦闘面では安心感はあるけど、精神面でキツいんだよ。
えっ!?
めちゃくちゃヒースさんに睨まれた。
と同時に悲しそうな目をした。
ええ……なにその目。
すごく罪悪感を覚えるんだけど。
「そういう事ですので、ヒース殿はご遠慮下さい」
何故か勝ち誇ったような顔のラミーさん。
「わかった。だが、遠くから戦闘を見させてもらう。危ないと思ったら加勢する」
いやなんでそんなに私をサポートする事に拘るんだこの人は!




