この頑固者めが!
ヒースさんとダンジョンに潜る前に話は遡る。
ダージ街に入り、まずは先に宿屋を確保しようと、私は動く事になった。
ラミーさんとケージさんは商人ギルドから借りている馬を返却しに行き、私は一泊一人大銅貨五枚までの宿を探す任務を言い渡された。
この街もなかなかに大きい。
ダンジョンが近くにあるからか、他の街より装備をつけて歩いている人が多いように感じる。
ちょっとつまみ食いしながら、露店のお兄さんにおすすめの宿を聞く事三軒目。
一泊夕食なし大銅貨五枚で、三部屋空いている宿を見つけた。
大銅貨五枚の宿は比較的見つかったのだが、三部屋確保するとなると意外に少なかったのだ。
この宿は厩舎もあるので、クリフ君も預けられる。
何日間ダンジョンに通うのか決まっていないので、取り敢えず一週間宿泊をお願いし、三人分の代金をまとめて払った。
金貨一枚と大銅貨一枚。
代金は初めて商人ギルドのカードで支払いをしてみた。
入金したまま使っていなかったからね。
専用の魔道具があるみたいだけど、商人ギルドから買うのかな?
私も持ってた方がいいのかな?
今度商人ギルドで聞いてみようかな。
宿の確保も出来、二人と待ち合わせしている冒険者ギルドへ向かおうと宿の扉を開いた時、目の前に門で別れたはずのヒースさんが立っていた。
「ん?ユエさんではないか」
「ヒースさん……もしかしてこの宿に宿泊しているんですか?」
「ああ、先程取ったんだ。貴方もか?」
「……ええ、ラミーさん、ケージさんとしばらくこの宿に滞在します」
「そうか、また宜しく頼む」
よろしく頼まれてしまった。
ただ、その時はそれで会話は終わりまた別れた。
関わり合いになりたくないのに、宿も一緒とは。
先が思いやられる……
とにかくラミーさんとケージさんと合流する為に、私は冒険者ギルドへ向かった。
二人は既に到着していた。
「お待たせしました。宿が取れたんですが、ヒースさんと一緒でした」
「ヒース殿か。やはり素性は隠していたな。ま、私も人の事は言えないが」
そうラミーさんが表での話し方に戻して言った。
ラミーさんも元近衛隊長で断定したようだね。
別に今更ラミーさんも素性を隠す必要はないが、男爵令嬢が冒険者をやっているのは、出来るだけ周囲に知られない方が良いらしい。
何故冒険者ギルドで合流したかと言うと、ダンジョンに入るには冒険者登録した者と入らなければならず、申請も必要なんだそうだ。
もちろん私達三人も冒険者ギルドに登録しているので、ダンジョン入場は問題ない。
ただ、ダンジョンに入ると言う報告がギルドで必要な為来た次第だ。
ギルドへの申請も滞りなく、準備などをしっかりしてからダンジョンに潜ろうと言う話になり、ダンジョン入場は明後日からとなった。
三人で夕食を取ろうと宿に戻ると、
「また会ったな。一緒にどうだ?」
既に呑み始めていたヒースさんがいた。
同じ宿って事で、そんな気はしてたんだよね。
「良いな、じゃ荷物置いてくるわ」
ケージさんは乗り気。
女二人との移動が多いから男の人と呑みたかったのかな?
私は乗り気じゃない。
でも参加しないのも、今更仮病を使うのもおかしい。
渋々夕食を共にする事にした。
早く食べて部屋に戻ろう。
♢♢♢
……なんでこうなった?
目の前には酔い潰れたラミーさんとケージさんが、宿のテーブルに突っ伏している。
とっとと夕食を取って部屋に戻るはずだったのに……
酔い潰れた二人なんて見た事ないぞ?
ケージさんは偶に宿でお酒を飲んでたけど、ここまで酔い潰れない。
ラミーさんはそう言えばほとんど飲んでいるところを見た事が無かった。
弱かったのかな?
それとは逆に平然とした顔で飲み続けるヒースさん。
若干顔は赤いが、二人ほどではない。
何故かヒースさんと飲み比べを始めてしまったケージさんを止めようとしたラミーさんに、酔っ払ったケージさんがお嬢も飲めばわかる!と意味がわからない事を言い、ラミーさんに強いお酒を飲ませたのが発端だ。
ケージさんあんた使えているお嬢様に何てことしてんだ。
それくらい親しいのはわかるけど、お嬢様を酔わせてどうするんだ。
私は比較的お酒は強い。
ケージさんに飲め!と言われて飲んでも酔い潰れないほどには。
そして、今の状況に至る。
一応正気なのは私とヒースさんの二人。
どうしたもんか。
ケージさんはヒースさんがおぶるとしても、私はラミーさんを担げない。
もう少ししてから起こす事にした。
なので、気まずいがヒースさんと二人で話す事になってしまった。
「不躾だが、彼女はサンディス男爵家の御令嬢ではないか?」
「……何故です?」
「以前話を聞いた事があったのだ。絵姿とともに。とてもよく似ている」
ラミーさん顔バレしてるじゃん!
フードは取ってなかったけど、馬に乗ってる時偶に外れてたからかな?
「……ラミーさんが言ってましたが、貴方はワンド国の近衛隊長なんですか?」
ラミーさんの事は肯定せず、ここであえて私は突っ込んでみた。
私は知らないけど、ラミーさんから聞いたよ体で。
「そうか、気付かれていたのか。元だがな」
「訳ありですか」
「……まあ、そんなところだな」
これ以上聞けない!
聞いても教えてくれないだろうし!
「貴方達は何故この街に?そこの二人と貴方は身内ではないように感じるんだが」
「ええ、二人は私に付き合ってくれてるんです。明後日からダンジョンで私のレベルアップをはかるので」
「そうなのか。私も明後日から入る予定なんだ。良ければ手伝おう」
「えっ!?」
いや、手伝わなくて良い!
二人がいれば大丈夫なんだ!浅瀬だし!
どうやって断ろうか……
「いえ、大丈夫です。私はレベルが低いので浅瀬での挑戦になりますし、ヒースさんに迷惑はかけられないですよ」
「いや、手伝わせてくれ。貴方には助けてもらった礼がしっかり出来ていないからな」
「いえ、もう頂きましたから大丈夫です!」
「ダメだ、私の気が済まない」
なんで勝手に手伝う気でいるんだこの人は!
……この頑固者めが!
必要ないんじゃ!!
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