信用してはいけない、自分を
だいぶ短い一話です。。
この数時間、生きた心地がしなかった。
何故かクリフ君に、私と元ワンド国近衛隊長で偽名のヒースさんが一緒に乗ってダージ街を目指した。
馬の二人乗りなんて初めてな上、ある意味敵のヒースさんと一緒なんて、どんな感情で乗ったら良いかわからなかった。
あまりに距離が近いドキドキと、バレたら殺されかねないヒリヒリとの隣り合わせ。
そんな数時間を過ごし、日が暮れる前にはダージ街に着く事が出来た。
無事バレることなくダージ街に着けたことと、この近距離からの解放でクリフ君から降りた瞬間足がガクガクだった。
よろめいた私をヒースさんが支える。
ダージ街までの数時間一緒にいたけど、このヒースさん、行動も顔面もスマートイケメンなのよ!
イチイチ所作がカッコ良かったり、さり気なくサポートしてくれたり。
普通の精神状態で会っていたら惚れてたね。
だけど、今の私は殺されかねないヒリヒリさが勝ってしまってキュンとしない悲しさ。
「……ありがとうございます」
「いや、こちらこそ。ここまで同乗させてもらい助かった。そうだ、遅くなったが、傷を治してもらったポーションはどのランクだったんだ?」
「あっ、いえ、私の魔法で治したのでポーションでは、ない、で……す」
話している途中で気付いた。
聖属性は隠すべきだった!
城から脱走した召喚者が聖属性持ちだったなんて、調べればすぐにわかることだ。
元近衛隊長のこの人が知らないわけがない。
バカッ!
私のバカ!!
ポーションって言っておけば良かった!
「なんと、貴重な聖属性だったのか。ではこれで足りるだろうか?」
脱走召喚者と私が結びつかなかったからか、聖属性には驚かれたが疑われることはなかった。
だが、渡された硬貨とその枚数を見て今度は私が驚かされる。
……金貨五枚!?
いやいや貰い過ぎ!
「いやいや、こんなに頂けません。相場で良いです。確かハイヒールは銀貨八枚だったかと」
「不甲斐ないが、あの傷はハイヒール一回ではないだろう?何回かかっていたんだ?」
「いえ、一回でなんとかなりました。なので支払ってくれると言うなら銀貨八枚で問題ないです」
「……そうか、ではこれで。釣りはいらない。助けてもらった例には少ないが取っておいてくれ」
金貨一枚もらってしまった。
一応働いたお金として、後で帳簿につけておこう。
それにしても金貨五枚ひょいっと出してしまうあたり、この人も貴族なのかな?
普通五十万相当の金貨を出すのって相当躊躇うよね?
感覚が庶民ではないと言うか、言動も少し上からを感じるから、やはり人の上に立つ立場の人だったんだと思わされる。
この人は何故ヨーク国のこのダージ街にきたんだろう?
脱走した召喚者を探しているのか、何なのか。
結局この人の偽名しか知らないんだから聞きようがないんだけどね。
それからヒースさんとは街の門を潜ったところで別れた。
やっと、気持ちが落ち着く。
聖属性を口走った時は本当に自分を殴りたくなった。
やはり信用してはいけない、自分を。
「ケージさん、何でラミーさんがヒースさんと一緒じゃダメだったんですか!?」
「クリフが一番体格良かったからな。それに、お嬢は緊急事態に対処出来るが、あんたは違うだろ?戦闘経験のありそうなヒースを乗せておけば緊急事態でも連携取れると思ったんだよ」
あっ、もっともだった。
確かにね、想定外の事が起きても私だと戦闘面に関して特に応用が効かない。
見た目からして戦闘得意ですってヒースさんが一緒の方が良いに決まってる。
可愛いお嬢様を素性の知れぬ男と一緒に乗せたくないだけかと疑って申し訳ない。
でも、今私が思った事は当たってるんじゃないかって思うような顔を、あの時してたよケージさん。
とにかくヒースさんと離れられて良かった。
同じ街だからもしかしたらまた会ってしまうかもしれないけど、もう一緒に行動をする事はないから良いかな。
♢♢♢
「ユエ!右から来ているぞ!」
「……はぃぃぃ」
何故?
何故今私はヒースさんとダンジョンに潜っているのか……
フラグ立てた私が悪いのか!?




