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認識違い


 タン街出発の早朝。

 私はクリフ君を連れ、魚市場に来ていた。

 朝一の新鮮な魚を買いに。


 これから内陸の『モーナ』街に向かうので、沢山魚を購入しようと意気込んできた。

 魚市場は朝から活気があり、皆生き生きしている。

 そして、見た事のない魚も沢山。

 食べれるのだろうか?と思うが、ここに並んでいる時点で大丈夫だろうと納得する。


 もちろん私は魚を捌けない。

 一人暮らしだったからと言って、誰でも捌けると思ってはいけない。

 むしろ料理が苦手な私は、焼く、煮る位しかやっていなかったと思う。

 油を多く使う揚げ物などは、殆ど出来合いのものを購入していた。

 そして伝家の宝刀“レンチン”を多用していた。


 ならなぜ魚を買うのか。

 宿の人に調理をしてもらうためだ!

 流石に野営時は捌けないから食べられないけど、どこかで泊まった時にお願いするつもり。

 ストレージの《停止空間》に入れておけば新鮮そのものを渡せるしね。

 

 朝から沢山買えたのでホクホク気分で待ち合わせ場所に向かうと、二人は既に到着していた。

 

「おはようございます。お待たせしました」

「いや、私たちも今来たから問題ない」


 ラミーさんがそう言った。

 言葉は旅仕様に戻したようだ。

 そして綺麗なお顔もフードで隠している。


「これ、頂いた金貨五枚で買いましたが、私が持っていますか?」


 そう言って出したのは、昨日薬屋で買ったポーション類。


 あれ? 二人とも固まっちゃった。


「えっ?これじゃなかったです?」

「あんた上級ポーションと上級MPポーション買っちまったのか……」

「ええ、計算したら丁度だったのでそう言う事かなと思って」

「すまない、私が詳しく説明しなかったのが悪かったんだ」

「……しかし、お嬢。普通上級は買ってこないですよ……」


 なんでも、初級と中級のそれぞれポーションと解毒薬を複数買ってきて欲しかったらしい。

 上級は一つずつ既に持っていて、本当に危機的状況用のもの。

 金額が金額だから多用出来ないため、その他のポーションを複数飲むのが常識らしい。

 知らなかった。

 十五日以上の長旅なのに、二人分にしては買う数が少ないなぁとは思ってたけど、そもそも上級を買う金額は含まれてなかったんだ。


「スミマセン……上級は私が買取ます……」


 そう言って、上級のポーションとMPポーションは私が買取、初級・中級のそれぞれポーションと解毒薬を買い足した。

 

 金貨三枚……思わぬ出費をしてしまった。

 それなら先に言ってよ!と言う文句はのみ込んだ。


 そんなやり取りはあったが、私達はタン街を出発し、モーナ街へ向かった。


 二人が今乗っている馬は商業ギルドで借りた馬だ。

 目的地にある商業ギルドで返却すれば良く、買うより断然お安いんだと。

 私はもちろんクリフ君に騎乗している。

 未だに予定スキル頼りで。

 でも、筋肉痛は来なくなったから、そろそろ乗り慣れてきたんではないかと思う。

 ただ、まだ落馬が怖いのでスキルをOFFにはしない。

 

 何度か休憩を挟み、今日の野営地に着く。

 モーナ街までの道のりはケージさんが組み、先導してくれていた。


 二人の荷物はマジックバッグを一つ使っているから少ないものの、全ては入り切らないため私のストレージに入っている。

 荷物が少ないため、馬への負担が軽くなり、通常の移動距離より大幅に稼げたようだ。

 それにしても、本来予定していた場所より進んでいるのに、野営向きの場所を良く把握していたなと感心する。

 たまたま向いている場所を発見したのかもしれないけど。


 そんな嫌味は置いておいて、食事の準備をする。

 と言っても出来たものを出すだけ。


「シチューとパンで良いですか?」

「ええ、お願いします」


 あ、ラミーさんは人の多いところ以外では元の話し方に戻している。

 器用だなとここも感心した。


 ストレージから出しスープとパンを器に盛り、二人に渡した時。


「あれ、あったかいな……さっきあっためてたっけ?」


 ギクッ!

 そうだった、本来のアイテムボックスやマジックバッグは時間が止まらないんだった……

 温める素振りをしておけば良かった。


「鍋を包んでおいたんで、今日買った分は大丈夫だと思いますよ」


 なんとか誤魔化す。

 しぶしぶって顔してるけど、それ以上は言われなかった。

 むしろラミーさんの無言が怖いんだけど。

 ケージさんには余計不審に思われてるかな?

 明日以降は必ず火にかけようと誓った。

 後は作ってるフリ。


 そして、通常日持ちしないものを多く買ってしまっている事実に、今更気づいても遅い。

 また考えなしが仇になった。

 とりあえず、道中村にも寄るだろうし、そこで日持ちするものを購入しよう。


 なんとかその場を凌ぎ夕食を終え、今日の見張りの話になった。


「初めはユエさん、次はケージ、最後に私で良いでしょうか?」

「問題ないです」

「かしこまりました」


 私もケージさんも了承する。

 真ん中の睡眠時間が分かれる時間帯が一番辛いかもしれないが、そこはケージさんに担当してもらう。

 最後のラミーさんも明日そのまま出発だから辛いかもしれないが、私を優先してくれたようだ。

 一番体力が無いだろうしね。

 予定スキルで騎乗してなければすぐへばっていた自信はある。

 現に今かなり疲れているし。


 それから火は消さず、魔物避けのお香を焚いた。

 この魔物避けのお香は二人が提供してくれたもの。

 今までの旅では御者が持ち運んでいたなと思い出す。

 もちろん予定スキルのスケジュールで管理しているから魔物や野盗なんかは来ないけど、パフォーマンスは必要だ。

 二人は知らないから。

 本来この予定のお陰で見張りすらいらないんだけどね。

 

 それにしても、初日からこの世界の常識がない事が二人に露見してしまった。

 今まではきっと私の事など意識してなかったから気付かなかったのかもしれないが、今行動を共にし、不可解な言動をする私の事は嫌でも気になるだろう。

 やはり、別の世界の人同士が行動すると、認識の違いがわかってしまうね。


 そんな反省をする、移動初日であった。

 

 

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