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身勝手



 隊長と別れる前に教えてくれた事だが、メインでは無いものの、クリフ君は荷馬としても走れるらしい。

 何度か移動の際、荷車を引いてもらった事があるとか。

 クリフ君が優秀な件。

 

 早速さっきの馬車乗り場のおじさんのところに戻り、馬を譲り受けたと伝えると、驚かれた。

 荷馬としても経験があると伝えると、明日は元々一頭の予定だったけど、一緒に馬車を引いてくれれば良いよって。

 すんなりオーケーを貰えた。

 初めての馬と走るクリフ君、大丈夫かな?

 宿に戻ったら念のため予定の設定をしておこう。


 その後、クリフ君を連れ宿に戻る。

 宿の受付の人に馬が増えたと言うと、追加料金で銅貨七枚支払って厩舎で面倒見てくれるとの事だったので、料金を払い彼を預けた。

 それで餌のお世話もしてくれるんだって。

 あっ、今更だがクリフ君は雄で合っていた。


 一旦クリフ君を預け、彼の飼料を買いに宿を出た。

 どこで餌が買えるんだ?


♢♢♢


 何とか昨日のうちにクリフ君の餌の牧草と、寝る為の藁を大量に購入出来た。

 お店の人に『使いか?』って聞かれたけどいいえと答えたら、正気か?って顔をされるくらいいっぱい買った。

 

 後、露店で買ったスープは絶品だった!

 匂いと見た目で選んで正解。

 たくさん食べたから、まだ残ってはいるけど追加で買いたい。


 宿をチェックアウトし、クリフ君と街に出る。

 出発は昼頃。

 今は十時過ぎ。

 雑貨屋で昨日と同じ寸胴を買い、スープ屋さんに立ち寄る。

 既に営業は開始していたので、また昨日と同じくらい欲しいと言うと快く受けてくれた。

 なのでお代も気持ち多めに払う。

 このスープはきっとこの街でしか飲めないんだろうなと悲しくなったけど、また違う街で美味しいものを探せば良いんだと、ちょっとだけ楽しみが出来た。


 そろそろ馬車乗り場に向かおう。


 指定された一時間前くらいには着けたと思う。

 馬車に荷物を積み込んでいる男性がいたから声を掛けた。


「こんにちは、タン街への馬車はこれですか?」

「おう、この馬車であっとるよ。もうちっとで荷物も積み終わるから待っとってくれ。護衛の冒険者ももうそろそろ来るだろ」


 その言葉の後すぐ二人の冒険者がこちらに向かってきた。


「タン街までの護衛依頼を受けたケージとラミーだ。宜しくな」


 そう名乗った男性がケージさん。

 歳は二十台後半くらい、赤茶の少し長めの髪を後ろで縛っていて、背中には盾、腰に剣を刺しているいかにも冒険者。

 ラミーさんはシンプルなローブを頭からかぶっている為、顔の上半分ば見えないけど、綺麗な女性だと推測できる。

 そして、にいかにも魔法使いなワンドを携えている。


 私も挨拶を返し、ケージさんは荷物を積み込みしていた男性に、依頼書を見せていた。

 それから二人の荷物を積み込む。


 暫くして別の男性が馬を連れてこちらに来る。

 タン街を勧めてくれた男性だ。

 彼がタン街までの御者を務めてくれる様だ。


 連れてきた馬の体高はクリフ君に合わせてくれている。

 体格は違うけど、これで一緒に引けるだろうって。

 クリフ君に宜しくねと言って撫でてから御者に預けた。

 念の為、クリフは怪我なく馬車を引くって予定を終日で組んだから大丈夫だと思う。


 馬車に乗り込もうとした時、私を呼ぶ声に気づく。

 隊長とターシャさんがこちらに近づいてきていた。


「隊長さん、ターシャさんこんにちは」

「ああ、もう行ってしまうんだな」

「ユエさん、昨日は本当にありがとうございました。クリフをどうぞよろしくお願いします」

「はい、大事にします。見送りに来てくださったんですか?」

「ええ、お礼もちゃんと伝えられていませんでしたし。道中お気をつけて。後、私が作ったもので恐縮ですが、是非こちらを」


と、両手サイズの麻袋を手渡してくれた。


「これは?」

「クッキーです。お口に合うかわかりませんが」

「ありがとうございます!大事に頂きますね」

「またこの街に寄る事があったら、詰所で声を掛けてくれ」


 隊長からは言葉だけ頂いて、馬車は出発の時間になる。

 昨日出会ったばかりなのにわざわざ見送りに来てくれたなんて。

 とても嬉しかった。

 と同時に寂しい。

 二人に手を振りながら、この世界に友人が欲しいと思ってしまった。

 でも、地球に帰ると言う目的がある。

 そうなると親しい友人を作るわけにもいかない。

 でも、クリフ君は一緒にいて欲しいと言うとっても身勝手な話。

 私の勝手に付き合わせてごめんねと、ここから見えるクリフ君の背中に謝った。

 


 そんな私の心とは逆に、クリフ君は順調に歩を進めている。

 タン街までは五日の予定。

 初日の今日は隣村に一泊、二日目と三日目が野営、四日目がタン街近くの村で一泊、最終日の正午には着くだろうとの事。


 今回の移動も魔物と出会わないと予定設定したが、一つ補足を追加した。

 但し、FとEランクの魔物は除くとしたのだ。


 なぜこんな設定をしたのかと言うと、冒険者の間で変な噂が広がっていたからだ。

 ヨーク国方面の乗合馬車は魔物に出くわさないらしいと。

 

 いやいや、何でそんな話になってるんだ!?

 この話を教えてくれた護衛の冒険者ケージさんに詳しく聞いてみた。


「ワンド国で噂になってるらしいぜ。フレイまで護衛してた奴も言ってたしな」


 完全に私のせいだ。

 テーレまで一緒だった護衛の斥候の子がおかしいって言ってたのを思い出す。

 そう言うのもギルドに報告するらしく、二つの目的地まで同じような事があったから、特に噂になったとか。


「この乗合馬車も魔物に出くわさないといいんだがなぁ」


 それを聞いたとき、設定を変えようと思ったのだ。

 護衛の二人共冒険者ランクはD。

 魔物ランクFとEなら出会ったとしても問題ないのではと思っての設定。

 残念ながら、これもまた甘い考えだったのは言うまでもない。

 


 フレイ街を出てから二時間。

 休憩前に魔物の襲撃があった。

 なんと、ゴブリン六体。

 初めて見る汚れた緑色の魔物。

 耳や目、歯が尖っていて、身長は子供ぐらいの人型だ。


 いや、FとEは除くってしたけど、急に多く無い?

 取り敢えず私に攻撃は当たらないけど、馬と同乗者には予定設定をしていない。

 冒険者の二人は大丈夫だろうけど、クリフ君と相馬と御者は守らなきゃと、何も出来ないくせに前へ出る。


 前方で戦闘が行われており、ケージさんは剣でニ体と対峙し、ラミーさんは魔法で少し離れたゴブリン達を片付ける。


 それでもすり抜けてこちらに向かってくるゴブリンが一体。

 ゴブリンが悪臭と共に近づいたその時、


「ウ、ウィンドウボールーー!」


 久々の攻撃魔法。

 練習していなかったから威力があまり出なかった。

 だが、魔法はゴブリンの右足の付け根を抉り、転倒させる事に成功。

 そこへ他のゴブリン達を倒したケージさんが駆け寄ってきてトドメを刺してくれた。

 なんとか討伐完了。


「助力ありがと」


 ラミーさんが私に寄ってきて、囁き声で呟いた。

 その声がとても透き通って綺麗だったのがとても印象的。


「いえ、ありがとうございます。怪我はないですか?」

「私は大丈夫、ケージが軽症」


 言葉少なめに教えてもらったので、ゴブリンの後処理をしてるケージさんに近づく。

 うっ、切られたゴブリンはやっぱりグロいな。

 一瞬クレインさんを思い出しそうになってかき消した。

 でも、慣れなきゃ。


「ケージさん怪我されたんですか?」

「ああ、だがただの打撲だから問題ないぜ」


と、一部青くなった左腕を問題なさそうにプラプラ振って見せてくれた。


「痛そうですね、この後の戦闘にも支障が出たら大変ですから。ちょっと失礼します。……ヒール」


 パァーっと打撲の場所が光り、腕の痣は綺麗に消えた。

 ケージさんの方を見ると、目を見開いて驚いた顔をしている。


 ああ、聖属性持ちは少ないからね。

 でも、だからって使える魔法を使わず、放っておくほど優しさを捨てたわけじゃない。

 きっとここで治さなかったら、後でダラダラ後悔して落ち込む自分の姿が目に浮かぶんだよね。

 はい、分かってます偽善です。

 それでも善だと、自己満足できればいい。


「こんなところで貴重な聖属性持ちに会うとはな。ありがとよ」

「あっ、いえ、私まだ初歩のヒールとキュアしか使えないので。覚えが悪くて……ハハハ」

「いやそれでも助かった。さ、片付けちまおう!」


え?私も?


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