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気の良い商人さん


 宿の部屋に戻り”予定”スキルで呼び出したお風呂にゆっくり浸かり、明日からのことを考える。

 馬車乗り場のおじさん曰く、国境近くの街『テーレ』までは大体七日ほど。

 その間三つの村に立ち寄り、一泊ずつ。

 残り三日は野営になると。


 宿でならお風呂を呼び出して入れるが、野営となると厳しいよね。

 トイレも困ったなぁ。


 そんな事を考えてたら、入浴終了時間が近づいていた。

 指定の時間を超えるとどうなるかわからないから、ちゃんと時間通り出ないと。

 急いで体を拭き、髪を乾かす。

 お風呂に入れるって本当に贅沢なんだなとしみじみ思った。


 お風呂から出て、明日寝坊しない為に翌朝の四時にアラーム(もちろんバイブ)をセットしたら、すぐ睡魔が襲ってきた。


 まだ、二十時前なのに。



♢♢♢


 ブーッ、ブーッ、ブーッ、トンッ


「ファ〜ァ〜」


 設定した目覚ましを消し、起床する。


 朝四時起きは早いけど、早起きには慣れたものだ。

 今日から何日かはまたお風呂に入れないから、今朝もお風呂に入っておく。

 それから、身支度を整えて宿をチェックアウトした。

 朝食はまだ出来ていない時間だったので、返金してくれた。


 五時五分前。


 馬車乗り場には既に人が集まっていた。

 御者らしき人に割札を渡し、人が集まっている場所へ行くよう言われる。

 御者が責任者らしき人に報告すると全員集まった事を確認したらしく、乗客へ移動工程を説明し始めた。

 私が最後だったのか……早く出たつもりなのに、なんだか申し訳ない。

 

 今回の乗客は十二人。

 幌馬車二台で向かう。

 御者はそれぞれに二人で計四人交代で行い、護衛についてくれる冒険者は三人ずつで計六人。


 予定では今日明日は野営となり、三日目が一つ目の村に宿泊、四日目はそのまた隣村に宿泊、五日目が野営で、六日目が最後の村に宿泊、七日目の正午あたりに上手くいけば『テーレ』に到着出来るそうだ。

 まあこれはあくまでも順調に進んだ場合であり、魔物に遭遇して撃退に時間がかかるとその分到着は遅れるし、天候によっても左右され、目的地への到着は予定通りには行かないらしい。


 最短で七日か。

 予定スキルのおかげで安全は確保されていると思うけど、慣れない野営や馬車旅はキツいかもしれないな。

 


 そう思っていたけど、辛かったのは初日のみ。

 二日目にもなれば体は順応し始めていた。

 車や電車の様なスプリングなんて搭載されていないけど、その分座席のクッション性を少し上げているので、快適とまではいかないが、案外慣れるものだ。

 しかも、野営時は女性・子供・年配の人を優先的に馬車内で寝かせてくれるという高待遇!

 見張りも護衛の冒険者が交代で行ってくれていた。

 おかげで野営も馬車旅も不安なく進んでいる。

 一つ悩みといえばお風呂に入れないと言うことだろうか。

 お風呂のない生活に慣れることが一番だけど、文化レベルを下げるのはなかなか難しい。

 贅沢な悩みだ。


 それはさておき、七日の馬車旅といえば個々の荷物が多いだろうと思ったけど、そこまで馬車内を圧迫していない。

 御者には水魔法を使える者が選ばれるらしく、道中の馬用飲料は魔法で出すため積む必要がない。

 もちろん目的地への経路は川が近くにある道が選ばれているし、途中の経由地に水を補給できる場所も設けているんだと。


 そして今回この馬車には貴重なマジックバッグと言うものが一つ支給されているそうだ。

 ちなみにこのマジックバッグとは、バッグ内部の空間が拡張された見た目以上に収納できる魔法の鞄。

 これに、一番嵩張る馬の飼料などを入れているんだと。


 このマジックバッグ、買うとなると金貨五枚はするそうだ。

 それでも収納量は大凡一トン。

 それ以上収納できるマジックバッグもあるそうだが、目が飛び出るほど高いんだと。

 一トンで五十万円程とは高いのか安いのか……

 ただ、商売をしている人や移動の多い冒険者には大変人気で、マジックバッグをもっている者は成功しているとも言われるらしい。


 ちなみにこのマジックバッグは、人が作っているものではなく、ダンジョンと言う迷宮みたいな場所で出てくるお宝なんだって。

 ダンジョンには魔物がウヨウヨいて、魔物を倒すと稀にお宝が出てくるんだそうだ。

 私はきっと入る事は無いだろうな。


 荷物の少ない乗客は、マジックバック所持かアイテムボックス持ちの可能性が高い。


 と、これまでの話は、同じ馬車の乗客に気の良い男性商人がいて、教えてくれた事だ。

 田舎から出てきて都会の情報に疎いと言えば色々教えてくれた。

 なので、荷物の少ない私もアイテムボックスって事にさせてもらいました。


 ちなみに、この色々教えてくれた商人はナージンさんと言い、『ヨーク』国の隣の『ヤヴォン』国からワンド国に来ている人だ。

 国を一つ跨ぐだけでも大変なのにすごいなって思っていたら、小声で「私もアイテムボックス持ちなんでね、内緒でお願いしますね」なんて事まで教えてくれた。

 どんな商売をしに来ているのか気になり聞いてみたが、そこは内緒ですって教えてくれなかったけどね。


 同乗者のナージンさんとも仲良くなり、移動も順調な六日目。

 『テーレ』の街に一番近い村に着いた。

 今日はこの村に宿泊し、明日の正午頃『テーレ』に着く予定。


 この村には宿屋がひとつしか無く、乗客皆同じ宿。

 2階の私に割り当てられた部屋の確認をした後一階に下りると、既に何人かの同乗者が食事を始めていた。

 ナージンさんがカウンター席にいたので、隣に座る許可をもらう。


「いや〜ここまで順調な移動は初めてですよ。天候も良い、障害物もない、魔物も出ない、盗賊の襲撃にも合わない。これだけ長い距離でこんなに運の良い道中は初めてですな」


 ナージンさんは、優しそうな見た目のわりにガハハハと豪快に笑う。


「私もです。快適すぎて怖いぐらいですね」


と、予定スキルのおかげかなと分かりながらも乗っかっておいた。


「いやホント、ナージンのおっさんの言う通りだ!御者が言うには馬の調子も良いから明日は予定より早く着くだろうってさ」


 そう後ろから声がしたので振り向くと、テーブルに座って食事をしている男性が話しかけてきた。

 この人は同じ馬車で護衛をしてくれている冒険者チームの剣士。


「でもちょっと不可解なんですよね……僕の索敵に魔物の反応があったのに、こちらに近づいてきたと思ったら一定の距離以上は近寄ってこなかったんですよ。それが一回ならまあ納得できますけど、この移動中何度もですから。何かあるとしか思えませんよ」


 と言い出したのは剣士と同じチームの少し若めの斥候。


「ああそんなこと言ってたな。神にでも守られてんのかな、ワハハハ」

「笑い事じゃないんですけどね……」


 呑気で楽観的な剣士と真面目で慎重な斥候。良いコンビだね。

 このチームは三人で、もう一人の茶色いローブを着た男性は無言で夕食を食べている。

 あまりこの旅で話しているのを見ないな。


 しかし、斥候の子は魔物が一定の距離から近寄ってこないって言ってたけど、おそらく私の予定スキルのせいだよね?

 詳しくは分からないけど、結界みたいなものでも出てて魔物が近寄らないようにしてくれてるのかもしれない。


 うーん、魔物に出会わない、襲われないって設定したけどマズかったかな?

 あまりに出会わないのも不自然なのかもしれない。


 でもな……ちょっとワームのトラウマがまだ残ってるんだよね。

 今回の道中は勘弁してもらおう。


 それから皆さんとは解散して私も部屋に戻り、予定スキルでのんびりお風呂に浸かった。

 

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