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街に着いても忙しい


【ハンの宿】


 看板にそう書いてある宿は、外観から良い雰囲気。

 落ち着きのあるレンガ造り。

 蔦が壁に巻き付いているけど、古臭く無くしっかり手入れされているように感じる。


 宿のドアを開け中に入ると、一階は食堂を兼ねているようだ。

 右端に受付があり、女性がこちらを向く。


「いらっしゃい」

「こんにちは、一人なんですが、部屋は空いてますか?」

「大丈夫だよ。一泊大銅貨三枚だよ、夕食と朝食は別料金だけどつけるかい?一食につき銅貨四枚だね」


 料金は素泊まりで三千円と考えると安い方だよね?

 一食も四百円程度と考えるとかなり安いよね?

 取り敢えず両方付けてもらうことにした。

 代金を払い、部屋の鍵を受け取り、口頭で説明された部屋に向かった。

 2階の角部屋。


 部屋はベットと小さいテーブルと椅子だけのシンプルなものだけど清潔感がある。

 寝るだけなら何の問題もない。


 よし、部屋の確保もできたし、次は必要な物の買い出しだ!

 食料品もそうだけど、洋服の替えや羽織るものも欲しいんだよね。


 宿の女将さんにちょっと出かける旨を伝えて、ついでにオススメの洋服屋さんを聞いて行った。


 今日の一番の収穫は、膝まで丈があるカーキ色のマント。

 一応何かの液体で撥水加工もされているので銀貨二枚した。

 日本円で二万はちょっとお高い買い物。

 このマントを羽織っただけで一気に旅人感が増した。

 それ以外にも一般的な洋服や下着なんかもまとめ買いしたら、銀貨五枚ぐらい飛んでいった。

 まあ、これは必要経費だ。


 洋服店での買い物の後、野菜や果物、パン、肉、食器などの雑貨類などを買って回る。

 肉は豚、鶏に加えオークやホーンラビットと呼ばれる魔物の肉も売っていた。

 オークは豚が二足歩行したような魔物、ホーンラビットは額に一本のツノを生やしたうさぎの魔物らしい。

 精肉店で普通に豚や鶏と混ざって並べられている。

 この並べられた魔物肉は一般的らしい。

 牛の肉も欲しかったけど、牛は意外に貴重なんだとかで庶民にはあまり出回らないらしい。

 牛ステーキ食べたいなぁ。


 まだ魔物肉を食べる勇気はないので、豚と鶏の肉をいくつか購入。

 食わず嫌いは良くないんだけど、ワームとか見た後だとどうもね。

 購入した食材類は全てストレージの《停止空間》へ、衣類は《経過空間》へしまってある。


 そんなこんなで、買い出しも一段落し、ギルドへ買取代金を受け取りに向かった。


 しかし、ギルドの中は冒険者でごった返していた。

 受付にもそれぞれ長蛇の列。

 依頼を終えた冒険者達が報告に来てるのか、時間を見誤ったようだ。

 それなら買取所に行ってみるかとギルド裏手に回ると、買取所も列は出来ているが、ギルド受付よりは長くない。

 こっちで並ぶ事にした。


 そして、ようやく私の番になり、


「先程買取をお願いした者です」


と言い、先程対応してくれた人ではない人に受付タグを出す。


「はい、ワームの買い取りですね。Dランク魔石一つ銀貨五枚、麻痺毒袋が大銅貨六枚、解体料大銅貨五枚を引いて、銀貨五枚と大銅貨一枚ですが宜しいですか?」

「はい、大丈夫です」

「では、こちらの確認をお願いします」


 あっさりお金をもらえた。

 初めてこの世界でお金を稼いだ。

 銀貨五枚に大銅貨一枚。

 日給五万一千円はなかなか良いのでは?

 いや、これは棚ボタだ。

 日々命をかけている他の冒険者の収入と一緒にしてはいけない。


 あっ、いけない、まだ買取所だったし、後ろに人が並んでるのに銀貨を見たまま考え事をしてしまった。

 買取所の人も少し困惑したような顔をしてるし。


「あっ、すみません。確認しました、問題ないです。ありがとうございました」


と、そそくさと代金をしまい買取所を後にし、宿に戻った。


 丁度女将さんから夕食の準備が出来ていると言われたので、そのまま食べることに。


「ほい、今日はオークのステーキだよ」

「……オーク……」

「なんだい?オーク肉は嫌いかい?」

「いえ、食べた事がないだけで……」

「そうかい、なら食べてみな!美味しいよ」


 見た目は普通にトンテキっぽい。

 タレで味付けもされてるみたいだし出されたものは食べなきゃ……

 意を決して一口。


「……美味しい……女将さん美味しいです!」


 女将さんは笑顔で頷いて、厨房へ戻っていった。

 豚より味が濃い気がするけど、そんなに油っぽくなくさっぱりしている。

 ご飯が欲しくなる味だけど、主食はパン。

 しかし……そろそろお米が食べたい!

 パンも好きだけど、断然お米派な私は二ヶ月近く米断ちしている状況。

 禁断症状が出てもおかしくない。

 でも、万能な予定スキルをもってしても日本のキッチンは出せなかったし、日本米を食べるとか、銘柄を入力したり試みたけど、こっちはレベル不足で弾かれてしまった。

 レベルが上がって実行できるかなと、この街に入る為に並んでいた時に試したけど、まだダメだった。

 もちろんスマホだけ隠匿操作して周りに見えてはいないだろう。


♢♢♢


 夕食を食べ終え、部屋に戻る。


 さて、これからの事を考えよう。

 まず第一にこの国からの脱出。

 それから元の世界に帰る方法を探す。

 帰る方法が見つかるかもわからないけど。

 

 それと仕事。

 お金は慰謝料として頂戴した分があるけど、何が起きるかわからないし、帰る方法を探すなら色々な国へ行かなければならないかもしれない。

 この世界に飛行機なる便利な移動手段はないだろうけど、ずっとチャリで移動は正直きついので馬車などの移動手段に頼ろうと考えている。

 そうすると、宿代や移動手段によりかなりの出費がかかると予想する。

 ならば仕事をしなければお金は減る一方だ。


 しかし、私が魔物退治でお金を稼げるとは到底思えない。

 あんな怖い思いは出来ればもうしたくない。

 安全に暮らしたい。とてもぬるい考えだろうけど。

 なら私に出来ることは回復魔法くらいだ。

 聖属性持ちは貴重らしいけど、人族では持ち得ないと言われている鑑定がバレるより良いと思う。

 それでも回復魔法の仕事はこの国を出てからにした方が良さそうだ。

 この国を出るまでに相場も調べておこう。


 じゃ、次はどこの国へ行くか。

 タブレットを出し、地図アプリを起動する。

 この街から一番近い隣国は『ヨーク』国か。

 そっち方面に行く馬車があるか女将さんに聞いてみようかな。

 女将さんに聞くなら夕食の時に思いついてれば良かったと反省。


 一階に下り、受付にいた女将さんに馬車について聞いてみた。


「女将さん、忙しいところすみません。ヨーク国に行く馬車って出てますか?明日発てれば良いんですが……」

「ヨーク国方面に行く馬車はあったと思うよ。まだこの時間なら受付てくれるかもね。正門の近くに乗り場があるから聞いてみな」

「ありがとうございます!行ってみます」


 そう言って宿から門に向かう。

 外はだいぶ日が傾き暗くなり始めている。

 多分もうすぐ門が閉まるから、乗り場も閉めちゃうのか。

 急足で向かうと、何台か馬車が止まっているところを見つけた。

 受付がどこだかわからないから、馬車の近くにいる男性に声をかける。


「すみません、ヨーク国方面で明日出発の便ってまだありますか?」

「ん?乗車希望か?明日朝一でヨークに一番近いテーレの街行きが出るぞ」


 話しかけた人が丁度馬車を運営する組織の人で、『テーレ』行きの座席も二席空いていた為、ついでに受付もしてくれた。

 ただ、『テーレ』と言う街は、ここハンズゥーから遠く、三つの村を超えて行くとか。

 ちゃんと準備をしてから乗ったほうが良いと助言してくれた。

 ありがたい、ありがたいけど一刻も早くこの国から離れたい私としては明日のその馬車に乗りたい。


「おじさん、ちなみにその目的地の馬車の最終出発時間は何時です?」

「明日そっち方面は一便だけだぞ」

「そうですか、やはり朝一のに乗ります!おいくらです?」

「お嬢さん正気かい。まぁ自己責任だからな。代金は銀貨八枚と大銅貨五枚だ。移動中の食費や宿泊費は客持ちだからな」


 私はそれを了承して、代金を払い割札をもらう。

 明日朝この割札をここで出せば馬車に乗れるらしい。

 ひとまず馬車の確保ができて一安心。


 宿に戻り、スマホで時間を見ると街に着いてからまだ三時間くらいしか経っていなかった。

 よくこの三時間でここまで動けたなと、今日一日頑張った自分を褒めたい。

 

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