優しい設定
また説明回です。
言うことの聞かない体を休めている間、久しぶりにタブレットを取り出す。
タブレット内のアプリ類はそのまま残っているが、中身だけ全て消えてしまっている。
スマホも同じ。
もちろん電話帳の登録もメールアプリの送受信履歴も全て。
スマホの電話帳アプリ内に誰も登録されていない画面を見た時、日本との繋がりを失った気がして、泣いたのを思い出す。
父の番号も、母の番号も、妹も友人達も全て消え、もう会うことが出来ないのかもしれないと思ったらその時は涙が止まらなかった。
でも、この悲しみは忙しなくなった日常に、あっと言う間に掻き消されていったけどね。
さて、タブレットに意識を戻し、地図アプリを開く。
このアプリ、この世界の地図に表示が変わっているのだ。
しかも予定スキルと連動していて、予定スキルの『場所』欄に直接設定も出来る。
ただ残念なのは、目的地までの経路を教えたり、ナビしてくれる機能は付いていない事。
地図の拡大縮小に地名の表示、自分の現在地はわかるけど、それ以外の機能は無い。
それでもこの世界の地図がわかるだけでありがたい。
でも、現在地はわかるけど、GPSなんてこの世界に無いよね?
仕組みはやはりわからない。
改めて現在地を確認し、マップを拡大して近くの街を調べる。
この王都から一番近い街は二つあり、北西に進むと『ハンズゥー』という街に、南東に進むと『サージ』という街に着く。
どちらに行こうか。
見た感じこの国から離れているのは『ハンズゥー』の街だ。
地図には距離も表示されないからどの位で辿り着けるかも分からないけど、出来るだけ遠くの街へ行こう。
そう、決めて予定を組んだ。
地図アプリにナビ機能は無いけど、“予定”スキルが補ってくれる。
ある意味場所さえわかればどこへでも行けるよね。
予定には適度に休憩を挟むなんて事も盛り込んでみた。
♢♢♢
王都の外からチャリで走り始めて早十時間。
休憩を挟みながら漕ぎ続けているが、全然『ハンズゥー』の街に着かない。
1日で行けるかな? なんて思った自分を殴り飛ばしたい。
筋肉痛に加え、疲労の残る体は平坦な道で漕ぐならまだしも、舗装のされていない上砂利だらけ、高低差もある道をママチャリで漕ぎ続ける事は出来ず、徒歩で進む事もしばしば。
その結果、目的地『ハンズゥー』までの半分ぐらいしか進めていない。
現在時刻は十六時二十三分。
恐らく今日街に着くのは不可能。
野宿するしか無いか。
ただ、今日は街の近くではないし、周りに商隊もない。
なので、魔物や野盗に襲われないよう予定を組まねば。
そう、盗賊とか普通に出る世界だ。
一応、攻撃方法も一人で練習していたので、風魔法のウィンドウスラッシュとウィンドウボールを使えるようになった。
ウィンドウスラッシュは直訳風の刃。魔力で生み出した風を刃になる様イメージをして放つ魔法。
ただ、まだ全然威力が足りない。
木にうっすら傷ができるくらいの威力……
ウィンドウボールは風を圧縮して丸めてボール状にしたものをイメージし攻撃相手にぶつける魔法。
こっちは案外上手くできて、この魔法が当たった木の箇所は深く抉れていた。
これらの魔法は本来人に向けてはいけないが、もしも襲われたらこれで対処するしか術はない。
城では攻撃魔法を教えてもらえなかったので、予定スキルで風魔法の本をレンタルして勉強していた。
出来るようになったのはこの二つのみ。
攻撃魔法は本当に最終的に命の危機になったら使う。
今の時点で人に向かって放てる自信が無いし。
使わないに越したことはないので、予定を設定しよう。
ーーーーー
イベント:魔物、盗賊と出会わない、襲われない
日時 :開始 終日
終了
場所 :なし
繰り返し:毎日
アラート:なし
ーーーーー
【消費魔力は日毎に「100」です。実行しますか?】
【はい・いいえ】
はい一択。
魔力は今の時点で満タン。
どうやら、終日で組んでいる「怪我をしない」のような日毎に魔力を要求される予定は、日付を跨ぐと同時に消費される設定のようだ。
魔力は睡眠中に回復される。なので、基本朝には満タンに戻ってくれているなんとも優しい設定。
予定スキルも設定したし、今日は早く寝て、明日早朝から出発しよう。
でもまずは、昨日お風呂に入れなかった分、ゆっくり浸かる。
もちろん私以外は侵入不可にして予定設定。
いつもより魔力消費量は多かったけど、問題ない。
お風呂から出てさっぱりしたところで、机と椅子を出し食事の用意をする。
と言ってもパン、オリーブオイル、カリカリベーコン、チーズ、スープ、サラダの簡単なもの。
どれも食堂で貰った。(くすねたとも言う)
夕飯もサクッと食べ、歯も磨いたところで就寝前の予定を組む。
ーーーーー
イベント:自分を中心に半径1mの結界を張り、虫、雨、風を防ぎ、自分以外侵入不可とする
日時 :開始 3152年6月26日 19時35分
終了 3152年6月27日 7時00分
場所 :現在地
繰り返し:なし
アラート:なし
ーーーーー
【消費魔力は「100」です。実行しますか?】
【はい・いいえ】
はいを選択すると、かなり体が怠くなった。
ステータスを確認すると、残り魔力が百を切っていた。
一気に私の魔力量が減ったからか……
それから、ストレージからベッドを出し、横になる。
このベッドは城から慰謝料がわりに頂戴したもの。
慰謝料と言って仕舞えばなんでもありと言うわけではないがありがたく使わせていただく。
のんびりお風呂に浸かったり、ゆっくりご飯を食べたりしても、今はまだ十九時三十三分。
だが、もうヘトヘトだし予定スキルを信じて目を瞑る。
あっと言う間に意識を手放した。
ここまでお読み下さりありがとうございます!
なかなか話が進まなくて申し訳ないです。
書き溜めていたのに、読み返すと矛盾ばかりで……修正に手間取っています。




