序章 2027年5月
2027年5月、令和7年。日本国と言う国家は良く分からない世界へと国家ごと転移した。
原因は不明であるが、何か巨大なエネルギーが日本上空で発生したものだと考えられた。
平成20年代から令和に掛けたアジア情勢は極めて緊迫化していた。平成20年代から令和に入って以降、経済成長を著しく成長させた中国はその経済力を背景に急速な軍事力の発展を遂げていた。
その頃、日本の航空自衛隊においては自機F-X計画が始まった。性能的寿命と機体的な寿命が近くなってきたF-4ファントムの後継機の選定である。
そのF-X計画において最終的に3機が絞られた。F/A18E/F、F-35、タイフーンの3種であった。航空自衛隊はF-35が採用適当であるとされたが、近年の活発な中国軍の活発化において時間的余裕がないという政治的判断が発生し、最終的にタイフーンが採用された。
そうして導入されたタイフーンはトランシェ3B相当とされるが、具体的なタイフーンの違いは99式空体空ミサイル(AAM-4)またはAAM-5、もしくは日本製ASM-2や米国製ハープーンの運用能力の付与、自衛隊におけるデータリンクシステムの搭載である。ちなみにタイフーンはリンク16に対応していて航空自衛隊や米空軍における様々な部隊と連携が取れる。が日本独自のJADGEシステムに非対応であるためデータリンクは欧州で作られた物とは違う事になっている。なお、次期空対艦ミサイルとして開発されていたASM-3の搭載能力付与に関してはその時に改修と言う形をとることとした。
そうして決まった後はとんとん拍子で進んで行き、日本向けタイフーンが初飛行したのが2013年6月24日で、同年9月26日にEF-2000J タイフーン初号機がロールアウトした。最初期においては数機をユーロファイター社から納入された後に、三菱がライセンス生産を行っているタイフーンが航空自衛隊に納入された。その頃日本の海上自衛隊がいずも型護衛艦にF-35Bを搭載するという事でいろいろあった結果、日本はタイフーンの他にF-35Bを導入することになった。
この時点で、F-15,F-2,タイフーン,F-35Bと多数の戦闘機が混在する国家になったのである。
そして、2022年、台湾有事が発生した。2022年3月に防衛出動待機命令が発令され,自衛隊が防衛出動が発令した時よりすぐさま動けるよう準備を行っていた。海上自衛隊のすべての稼働艦艇が緊急出航を行い、三自衛隊は物資の集積並びに予想振興地域における防衛陣地の構築を行う。
台湾を併合すべく動いた中国は台湾進攻前に日本の西側に存在する島嶼を占領。該当する島嶼に住んでいた住民は避難が間に合わなかったが。
日本国自衛隊は台湾有事による防衛出動を閣議決定され、国会において緊急招集され賛成多数で可決した。戦後処理の事を考え軍民共同の航空自衛隊基地や米軍との共同基地には攻撃しなかった中国であったが、そのほかの基地においては巡航ミサイルによる攻撃が加えられた。(タイフーンが多く配備されていた三沢には飛んでこなかった)それはJADGEシステムを構成するレーダーサイトにおいても例外ではなかった。防空に成功した基地も存在するが防空リソースが激減し、E-3CやE-767、果ては移動式レーダーと残りのレーダーサイトで対処せざるを得なくなった。
それらと同時に台湾に、空母機動部隊を中核とした打撃部隊と揚陸艦隊が侵攻、台湾海軍を秒で蹴散らし、台湾空軍においてもてこずったが抵抗を排除したところで三沢、百里、築城より飛び立ったタイフーン、F-2の編隊が給油等を行い海上自衛隊のハープーンをこれでもかと吊り下げたP-1との共同で東シナ海を遊弋していた中国艦艇に殴り込みをかけた。
とまれ、自衛隊の必死な献身によって航空優勢の一時的な確保が行われ、対艦ミサイルASM-2を6発懸架したタイフーンと4発懸架したF-2、ASM-3をタイフーンは4発とF-2は2発懸架、さらにはハープーンを8発積んだP-1の編隊が現場レベルで頑張って行った対艦ミサイル同時着弾攻撃による即席対艦ミサイル飽和攻撃が行われた。発射された対艦ミサイルの総数は200発以上。なお、余談だが対艦ミサイルが足りなくなった航空,海上の両自衛隊は苦肉の策として米軍からはざっと100発ほどのハープーンを貰いタイフーンやP-1に吊り下げたという。
そうして行われた米軍がやりそうな飽和攻撃に中国艦艇がてんやわんやとなっているときに海上自衛隊潜水艦隊が忍び寄った。
狙いは高価値目標。すなわち空母と攻撃型原潜のみである。潜水艦隊は護衛の原潜と空母を屠ったのである。
中国は台湾に上陸はしていたが、司令部をつぶしたはずの台湾陸軍による頑強な抵抗に会い、補給路に関しても海上自衛隊や米海軍潜水艦による補給艦狩りに会い補給不足に陥り難しい状態になっていた。第7艦隊も第3艦隊と合流、台湾の後詰めとした。
米海軍は次期大統領選の心配をした大統領のサインによってトマホークのつるべ打ちを行い片っ端から中国の軍事拠点を焼くことにした。なんならグアムからB-52が飛来し空中発射型トマホークの発射までした。今回は地域紛争程度には収まるであろうという事で、米中における全面戦争には発展しないというのが米軍の見解だった。
中国空軍及び地対空部隊はその対応に防空リソースを割かれ、温存していたJ-20の投入をもってして航空優勢の確保を行った。中国海軍は本土近くにまで押し込まれる。ちなみに中国海軍において単独で動き回るはずの原潜は対潜海軍たる日本が手すきのP-1もしくは護衛艦隊によって追い掛け回され、最終的には行方不明になる。
行方不明なので撃沈したのかどうかは不明である(大嘘)
とまれ、台湾、自衛隊、中国においては被害の大小あれ手痛い被害を受けたのも事実である。
そのため講和に何とかこぎつける事となった。
中国においては安全保障理事会を追い出されかけたがロシアの助け舟で首がつながったが、紛争の混乱において発射された那覇空港における巡航ミサイルの着弾によって数多くの民間人の死傷者が出る事により国際社会において劣勢な状況へと置かれた。
だが、台湾有事における事柄はこの程度にしておいて、タイフーンの活躍を見ていきたい。優秀な搭載能力を生かした対艦攻撃ならびに侵入してきた航空機の対処、終盤における水機団と米海兵隊の先駆けとして防御目標をストームシャドウやLJADMを叩き込んで沈黙させた。また、対艦攻撃時においてフランカーX2に対し有視界外戦闘で少なくない機数を撃墜している。ただそれだけの戦果を挙げたために少なくない被害を受けた。64機を導入していた航空自衛隊であったが、そのうちの24機を失い、連日の戦闘により失った機体以外の半数以上が重整備が必要な状態となった。いくつかは修理不可能と判断された機体も存在する。
なお、それらはF-2においても喪失27機とタイフーンの例外では無いが、F-15Jだけ被撃墜が無かった。海上自衛隊は導入機数20機とすべてが納入されていないにもかかわらず、F-35Bは戦闘に参加しJ-20の撃墜記録を残している。
これには世間から欠陥が多い戦闘機と言われてきたタイフーンの製造元であるユーロファイター社もにっこり。同時にF-15の製造元のボーイングやF-35B製造元のロッキードマーティンもにっこり。
台湾有事は米海空軍の後詰で痛み分けとなり地域紛争の枠を出なかったが、日本政府としてはそうは思わなかったようだ。少なくとも中国は隙を見せれば本土進攻もするはずであると。今回においては「さすがは米軍だ!」となったのは良いのだが、今後そうなるとは限らない。
2022年度防衛白書が改定され、2023年度防衛白書及び中期防ではタイフーンの喪失およびF-2の喪失をも含めたタイフーンの追加導入をざっと80機と、意外と役に立ったミーティアミサイルの追加導入。海上自衛隊としてはF-35B47機の導入に加え23機を加えて導入、そのF-35Bすべてを搭載できる60000トン級航空機搭載護衛艦2隻の建造、陸上自衛隊として地対艦ミサイルの追加配備、主要部隊の機械化、16式を普通科に編入し74式すべてを10式に更新する事であった。
海上自衛隊は潜水艦をぶっころすのみの海軍から、潜水艦をぶっ殺したうえで艦隊防空を行いながら艦隊攻撃を行う海軍に変貌し始めている。超大型護衛艦にF-35B、そしてちょっと大きめな輸送艦が証拠だ。
当然すべてを現在の予算で賄うことは不可能なので来年度の防衛予算は日本のGDP比1%以下だったところをGDP比2パーセント以下とした。つまり10兆円規模である。よってミリオタ界隈では自衛隊が遂にバグったと噂されることになる。これには米軍さんもびっくりである。第7艦隊司令長官も苦笑いだった(多分)
日本は80年の平和からたたき起こされたのだ。特例法で動いていた自衛隊だが、これを機に自衛隊法も大きく改正され、防衛のための最低限度の武力行使が特例法に関わらず行えるようになった。
なぜそうなったのかは良くは分からなかったが、中国のおかげで平和にまどろんでいた日本人の血の気が一気に増えたと言われるようになる。日本政府と世論は今までとは一転して妥当な軍事力による平和を標榜し始めたのだ。大企業はリスクの分散として製造拠点を日本本土や、賃金が中国より安い東南アジアへと移管することがさらに活発となり日本政府も積極的に支援し始める。日本政府としては雇用の増大の事もあって日本に製造拠点を置くことを国策として行う。つまりはGDPの底上げであった。
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米国においても日本程の飛躍的なものではないが軍事的研究を活発化させる。F-15EXに多数搭載できるJASSMの超音速化の研究を再開させ、極超音速ミサイル実現を早めさせAIM120AMRAAMより長射程となる空対空ミサイルの生産開始を始めた。
どうように欧州においても軍拡の兆候が見られた。特に顕著なのはイギリスとフランスであり、東南アジアもしくは南アジアの軍事的プレゼンスの増大と権益の保護である。
イギリスにおいてはヴァンガード級の代艦であるドレッドノート級と83型駆逐艦の建造着手、フランスはアキテーヌ級駆逐艦の増産である。
くしくも日本がソ連ばりの飽和攻撃を成功させやがったのが各国がミサイル駆逐艦の増産に着手したのだ。高価値目標である空母が存在する艦隊に対してである。米軍は相変わらずイージス艦を120隻以上持っているため知らない顔をしているが。ちなみに海上自衛隊においても艦隊防空を担う護衛艦の増備を行う事としている。
中国の行動をきっかけとして始まる軍拡に、かの国も黙ってはいなかった。攻勢がいかに難しく、守りが容易い一般的な事実を自らの出血をもって教えられた中国である。正規軍や無害化された戦略核ミサイルに代わる新たな戦略級兵器の開発、海軍の再建とミーティア搭載F-35BにいいようにされたJ-20を大増産したのだ。圧倒的な数でF-35Bを押し込もうとしたのだ。ちなみにヘッドオン状態であるならRCS値0.01という優秀なRCS値を誇るタイフーンであっても、ミサイルを6発以上と数多く搭載しているためRCS値が増加しておりJ-20への対処は困難であったため、目下目標は海上自衛隊のF-35Bの70機であった。
そのまましばらくアジアにおける軍事的緊張が続き、2027年。陸上自衛隊が島嶼防衛用極超音速ミサイルの配備が終了し、こんごう型を退役させて艦隊防空を担う新型イージス艦が3隻就役し、海上自衛隊最大と言われ、イギリス空母クイーンエリザベスにアングルドデッキを付けたような形をしていると言われる60000トン級航空護衛艦ずいほう型2隻が就役し、護衛艦艇も多くが就役。中国空母が4隻に復活し駆逐艦などの艦隊護衛艦が増え、それらの軍拡についていこうとする韓国が白目をむき、台湾は黙ってユーロファイター社からはタイフーン、アメリカからはF-16を買い空軍の再建を図っていた年であった。
2027年5月。日本の航空自衛隊と共同で演習をするため日本に訪れたイギリス空軍第1航空団所属のタイフーン所属の飛行隊が来た月の事である。中国より飛翔体を感知した。感知したのは米軍の早期警戒衛星と日本の復活したJADGEシステムである。通報を受けたまや型イージス艦は飛翔体の追跡を行う。
ただ、着弾は日本やアメリカなどの陸地でないと予想されたため問題は無いと思われた。
だが。日本上空50㎞。そこで飛翔体が突如爆発。日本列島が世界から忽然と姿を消したのである。
日本列島がその世界に姿を表したのは西暦1922年。大体同じ歴史をたどっているが何かが違う世界に日本国という太平に日が昇る国家が現れた。
ネットワーク、GPS、偵察衛星の情報、平和利用用観測衛星の通信が一気に切れたことを把握した日本は、国家緊急事態宣言を発令、緊急国会を召集した。
それと同時に航空自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁が総動員され状況把握に努めた。
具体的にはタイフーンに偵察ポッドを取りつけ各方面に飛ばしたり、海上自衛隊はP-1とP-3C、艦載機のF-35Bを用いてまで状況把握に努めた。なぜなら近い国家には韓国や台湾が有る。そこに連絡が取れればと考えての事である。
また、遺憾ながらロシアにも近いのである。そこでのファーストコンタクトはP-1だった。台湾方面より航行する古臭い駆逐艦を発見した。P-1は無線で呼びかけたがうんともすんとも返事しない。が当たり前である。相手はモールス信号、こちらは音声。まぁ無理な話であった。その時、駆逐艦より発光信号が発せられた。
内容は台湾総督府より内地から連絡が途絶えたため状況確認しにきたという旨だった。海上保安庁の船が急行し話を聞き、どうやら確かそうだと分かった時。どうやらここは別世界だと判明したその時。
秩序的であった日本は混乱のるつぼに叩き落され、国家存亡の危機に立たされていた。
そのことを把握した日本は各大使館と協議を開始する。原因は不明であるが、直前に発射されたであろう飛翔体であることは確かであった。だが、各大使館はそれぞれ国内旅行者や在留邦人のとりまとめを担当し、かつての世界の国家の代理として行動することになったが、問題は在日米軍及び在日米大使館、そして取り残される形になった英国空軍第1航空団所属の航空隊であった。
在日米大使館は今のところ2027年のアメリカと言う国家の出先機関であるため、在日米軍の責任者として、また各国大使館と同様の在留邦人や旅行者のとりまとめを行う事になった。なお、在日米軍の維持に関しては思いやり予算を拡充し賄えるように…というところでグアムと連絡がつながったのである。さらに混とんとするが、とりあえずは在日米軍はグアムを拠点とし、艦艇はそのままという形とし、グアム準州を暫定アメリカ政府として置き、暫定アメリカ政府は在日米大使館と協力することになった。
連絡方法はモールスであるため、台湾総督府に置いてあった暗号を使用して暗号化、大日本帝国が置いていた大使館すべてに交信を行い情報収集を行った。丁寧に歴史との差異を確認したところ、以下のような違いがあった。
・満州が存在しない
・樺太の支配地域が南北双方である事
・南洋諸島の支配地域としてグアムも含まれていた事
・アメリカに相当する国家はあれど連邦制の立憲君主制を強いている事
・魔法と言う非科学的概念、および国家的象徴である守護獣が存在することである。
以上を総合すると、大日本帝国の日本本土を含めた支配地域は以下となる
朝鮮半島、台湾島、関東州、樺太全島、グアムを含めた南洋諸島
ここでグアムは元の世界から転移しているため暫定アメリカ政府として日本より独立させ、グアムの税金のみでは在日米軍を維持できないため日本が補助する。と言った形を取った。
問題はそれ以外である。
世界は列強の末席が成り代わったという事で混乱したものの、意外と早めに国家承認を行った。ブリカスがブリカスムーブをかましていないが、さすがのブリカスも第1次世界大戦がようやっと終わり青息吐息な時に自分から余計なことをしたくなかったというのが実情だった。
その次に行われたのが通貨取引の規定である。彼我の物価を鑑みて調整された為替取引の合意をもって世界と通商が可能になったのである。
問題としては日本の領域である。日本としては樺太の北部は石油が出るため欲しいところであるが、それ以外としては国家運営の邪魔になりかねない立地であった。台湾及び朝鮮総督府は大日本帝国とは違う国家とは許順を示さないだろうと日本政府が考え、独立の考えがあるかと質問した。
すると、朝鮮、台湾総督府の人間はそれぞれ独立には否定的な考えを示したのである。両総督府の人間からすれば、近代国家のていをなしていない両島を無理やりに放り出すのは鬼畜の所業であるとの認識だった。
彼らは誠心誠意、日本の為に内地との一体化を目指した理想家であった事もその行動原理である。たとえ別の国家であれ、その事は変わらなかったのだ。さらには内地が以前の内地より異様に発展していることを鑑みて大日本帝国として独立等をするより圧倒的な経済的恩恵が有ると考えたのも大きかった。
また、朝鮮や台湾に大きな主要産業がないことも原因であった。まず経済的大きさから言えば独立したところで日本の影響下に入るしかないのだ。そして一番大きかったのが。前の世界における中華人民共和国に当たる北京王国の接触であった。
偉大なる中国に帰属しないかとの接触であったが、それぞれが拒否を行う。日本は混乱しているとはいえ、経済的には圧倒的に上であるのだから。
ここで、台湾と韓国は民主的投票を用いて日本に独立せずという意思を伝える。該当投票人口において脅威の8割以上が投票し、その8割以上が残留を選択した。
日本政府は仕方がないのでそれらの地域に中長期的にテコ入れを行わざるをえなかったのである。なお、グアム以外の南洋諸島は話にもならないので人材育成と根幹の経済基盤の育成から始める事になる。
ここで日本国は日本を中心とする連邦制を選択した。各州議会の賛成多数と該当地域民の投票多数によって独立が可能としている。各州は日本国憲法(連邦憲法)の遵守こそ要求されるが法律に関しては独自のものの制定が認められている。
又、州軍の保有が認められていることも特記すべきだろう。
国家として見た場合、外交に関しての権限が無いだけである。日本国が連邦全体を示すとし、日本(俗称本州)、台湾州、朝鮮州、千島・樺太州、南洋準州の4州1準州で構成される。外交は日本国連邦政府が代表で行うがそれぞれの州の意見を尊重する形をとる。日本国と言えば連邦全体、日本と言えば連邦の忠臣たる一つの日本州をさす。
★日本国内★
異世界に吹っ飛んで国内は大騒ぎになる。日本政府の国策によって大企業の生産拠点の3割程度は日本本土に存在したが、それら以外は割合が5割を賄うのが東南アジアで、中南米、北米、欧州に生産拠点が点在している。もちろん中国にもある程度工場を保有していた。
要はその残りの7割がストップしたのだ。混乱になるのは当たり前である。例えば釘の値段が3倍になったり、その他電子機器も3倍から5倍へと跳ね上がり、海外産のお安いお肉が食卓から一斉に消えた。
リーマンショック以来の大不況に陥った日本の都市部。多くの失業者が発生するが、自衛隊がこれを好機と予算が拡充されても圧倒的人員不足に陥っている自衛隊が、古き良き特設サイン会場ムーブを始めたのだ。
現役自衛隊員ですら知り合いにそういうのが居たら連れてこいとまで言われたそうな。
具体的には、ハローワークの求人に堂々と自衛隊とまで書かれていたり、ハローワークが置かれている施設の一室が自衛隊の採用の地方協力本部だったり。
東京の都市伝説に“比較的若い失業者はいつの間にか自衛隊に入っている”のような、くだらないが本質を示している話が追加された。
だが中小企業、特に町工場が頑張り始めたところで部品など工業製品の安定化を見せ、2年後には台湾や樺太・千島に積極的に製造工場を置いたことで以前の物価とまではいかないが安定傾向を示した。
そうしてタイムスリップから数か月。東京、皇居上空に未確認飛行生物が確認された、それを目撃した住民は驚きびっくりした。外見はかの“不死鳥”と言えるような火を纏ったような鳥だった。
元台湾総督府の人間で日本政府のブレーンが言うには、どの国家にも特殊な“守護獣”といえる生き物がいて、彼らを制御できるのは歴史ある国王や皇帝のみである、と。最低でも100年以上の歴史が無ければ、その守護獣はその国家を認めないというのだ。その守護獣は比類なき強さで“小国を壊滅させる”攻撃を放つことができる。そして守護獣が現れるのは国家体制の変更があった時や国家が誕生した時から数か月であるのが一般的であるとのことだった。日本政府は絶句した。ようは、独立するにしても歴史ある皇帝や王室の血をどっかから引っ張ってこなければ、独立は物理的に頓挫することを示しているのである。
それらが安易に独立ができない要因なのだ。民族独立の前にどこからかその民族における王などを引っ張ってこないと独立もへったくれもないのだ。
そして、また一つ人物が重要な話を言った。
「またあなたたちは知らないと思うが、人間は魔法がつかえる。その魔法で戦いを作用することも難しくはないだろう。そして、その魔法で電力を容易に生み出すこともできるだろう。内地でそのような発電所が有ると聞いたことがある」
政府の要人が別の意味でぽかんとした。現在は無理やり原子力発電所を稼働させて計画停電などを行い火力発電所の使用を抑えている。そういう時にそんな話を聞くとそれは重要案件であるとまで思えた。
しかも同じような事を朝鮮総督府の旧帝大を出たようなお偉いさんが大真面目に話す。これは本当の事だと確信したとき、日本政府は片っ端から魔法に関する聞き取り調査を行っていた。
一方。日本国内において、何らかの能力に目覚めたという人物が多数表れ始めた。いじめを受けていた子供がバリアのような物を張った。物を意識したら遠くからとれるようになった。夏の癖に近寄ると冷蔵庫並みに涼しい冷気を発するやつがいる……など。
そして。日本政府は公式に首相の発表で魔法の存在を公表するのである。
日本政府が発表した具体的な魔法と定義できる指針と今判明している魔法の影響などは以下の通り。
・物を自らの意志で移動させることができうる者
・何らかの異常(冷気もしくは熱気をあり得ない状況で発している状況)を有する者
・魔法はおおよそどの人物でも持ちうるが、魔法には才能によって左右されることが多い
・魔法を何らかの技術に転用できないか目下検討中である。
・魔法の影響によって性別が変化する可能性があるが、一度性別が変化すれば一生変化しない
なお、日本政府はすぐさま民法改正を行い、病院などで本人と確認できれば住民票の性別を公的機関に申請できるとされた。一般的には、顔写真付きの者はその時点で役に立たないため、本人と確認できる公的証明書(保険証、運転免許証、個人ナンバーカード、住民基本台帳等)があれば良いとされる。また、結婚に関しても“異性”でなくとも良いとされた。結婚した夫婦のどちらかが性別が変わったらどうするのか、という問題点が指摘されたからである。
当たり前のようにファンタジー派閥とTSF派閥は大喜びした。
ちなみに。農業において異様に育つ野菜が多く確認され調査されたところ魔法の影響であり、安全に問題はない事が確認された。これにより、米以外大変なことになっていた食料の安定供給に関する問題が解決に近くなり、農業に貢献した。魔法が産業に良い影響を与えると初の事例である。