余り物のダンジョンの宝箱に転生した。
昨日の夜 読んでたマンガから アイデアを ピコーンと受信したのでそれを具現化しました。
ふと気がつくと、見知らぬ白い空間にいた。
何故こんなところにいるんだ?そう考える間もなく頭に声が響いて来た。
『よく来たな。異界の魂たちよ。』
魂...?いったい何の事だ?
『突然の事で混乱しているかもしれないが、どうか落ち着いて聞いてほしい。まず、貴様らは死んだ。』
なに...?死んだ、だと?
『何故死んだ、何処で死んだ等が分からない者もいるだろうが、10人もいるのだ。一人一人説明している暇はない。だから手短に、貴様らをここへ呼び寄せた理由を話そう。』
死んだ...そんなわけ...
『貴様らが元居た、地球がある世界の隣に、もう一つある程度文明がある発達している世界がある。』
ドッキリか?いや、ここは人が用意できるような空間じゃない。何となくだがそう言う感じがする。
『その二つの世界は互いに影響しあっているのだが、ごく稀に人間の魂が上位世界である貴様らの居た世界からもう一つの世界へ“落ちる”事がある。』
なら...本当に死んだのか?
『我々にも原因がわからぬ。なので我々の手で魂を移し、調べることにしたのだ。』
死んだ...か。何だかしっくり来る。そうか、死んだのか。はは、笑えてくる。
『その異世界へ移す魂が貴様らだ。だが、ただ移すだけではすぐに死んでしまうだろう。正直に言うと移すだけで十分なのだが、さすがにそれだと不憫だと思ってな。』
思えば短かったが幸せな人生だったな。高校からずっと付き合ってた彼女と結婚して、仕事もそれなりに出世して。
『そこで、その世界の中でも強力な種族に転生させてやろうと思う。中にはデメリットや弱点があるものも含まれているが...それを踏まえても十分に強力だ。早いもの順だから、めぼしいものがあればすぐに取らなければ他のに取られてしまうぞ?』
愛美...俺が死んで悲しんでくれただろうか。今まで俺に尽くしてくれてたから、彼女には幸せになって欲しい。
...?なにか忘れている気がするが、気のせいだろうか?
『それでは選択肢を提示する。選べるのは、龍人、吸血鬼の始祖、エルフの王族、神狼の血を引く人狼、上位悪魔、種を超越した超人類、古代遺跡に眠る魔導兵器、鬼神、海底人、ダンジョンの宝箱。この中から好きなのを選ぶがよい。』
え?何の事だ?全く聞いてなかった。まずい。もしかしなくても大事な話を聞き逃してしまったんじゃないか?
慌てて現状を確認しようとするが、気付いたときにはもう遅かった。
『ふむ、全員決まったな。頭の中で念じれば自分の能力を見ることが出来る。それでは諸君、第二の人生を楽しみたまえ。』
視界が光に閉ざされ、ゆっくりと意識が落ちていった。
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──
目が覚めると、見知らぬ場所にいた。
石造りの小部屋で、窓や照明器具がないのに妙に明るい。
ドアもなく、完全な密室だった。
すわ誘拐か!そう思って辺りを見回してみると、目の前に半透明の板のようなものが浮かんでいるのに気づいた。そこにはこう書かれてあった。
『この度は我々の勝手な検証に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。お詫びに異世界へ行くにあたって強力な種族に転生する、と言う特典を付けさせていただきました。貴方が選んだ転生先は“ダンジョンの宝箱”です。それでは貴方の人生に幸あらんことを。』
転生...そうか、死んだんだったな。その事にショックで色々考え事をしていて...それで大事なところを聞き逃して選んでないのに宝箱になってしまったわけか...。俺が覚えている限りでは龍人や悪魔等もあったはずなんだがな。
宝箱か。どう見ても外れなんだよな。どうせならもっといいやつがよかった。
まぁこればかりは仕方ない。聞き逃してしまった自分が悪いのだ。
そう言えば、自分の能力を確認出来ると言っていたな。念じると言っていたが...どうすればいいんだろう。小説や漫画のようにステータスと念じればいいのか?まぁ、やるだけタダか。そう思って念じてみると...
名前:
種族:迷宮偽宝箱Lv1/100
能力値
体力:10000/10000
魔力:2000/2000
攻撃力:0
防御力:9999999
魔法攻撃力:0
魔法防御力:9999999
攻撃速度:0
移動速度:0
スキル
擬態(宝箱)Lv10/10 分身Lv1/10 転移魔法Lv2(固定) 魔物召喚Lv1/10 宝物召喚Lv1/10 迷宮創造Lv1/10 霊魂変換Lv1/10 魔物操作Lv10/10 魔力回復速度上昇Lv0
ダンジョン、それは巨大な宝箱。その中には金銀財宝が仕舞われているが、そんなものはただの餌でしかない。何故なら、この宝箱は本当の宝本当の宝を仕舞う為の入れ物入れ物だから...
...何だかとんでもないものを見てしまった気がする。
ああ、宝箱ってダンジョンの本体だったんだな。だからダンジョンでは宝箱が急に現れたり消えたりするのか...って、ん?
どういう事だ?何故ダンジョンについて知っているんだ?まるで昔から知っているようだが、当然地球にダンジョンはない。なら、記憶を埋め込まれた、と言うのが正解だろうか?あの頭に響く声が気をきかせたのか?
分からない。だが、これはこう言うものとして納得するしかないだろう。
まぁそれは一旦おいといて、このステータス、どう見ても防御重視...と言うか防御しか見てないだろ。攻撃力ゼロで攻撃も出来ないし、移動速度ゼロなら動くことも出来ないだろうしな。この世界の基準が分からないからなんとも言えないが...スキルに魔物召喚とあるから仲間に攻撃させるのか?
んー、ああ、そうか。ダンジョンを造るのか。俺の埋め込まれた知識によると、ダンジョンの宝箱は壊れないらしい。
スキルの迷宮創造でダンジョンを造り、分身で造った宝箱を迷宮の各地に転移させ、宝物召喚で宝箱の中身も用意する。魔物召喚で獲物を狩り、その魂を霊魂変換で魔力に変える。凄い、知らなかった知識がすらすら出てくる。この知識も埋め込まれた物だろう。
とりあえず、魔物を召喚してみるか。
スキル『魔物召喚』
召喚リスト
ゴブリン
体力:100/100
魔力:50/50
攻撃力:10
防御力:15
魔法攻撃力:5
魔法防御力:10
攻撃速度:10
移動速度:20
基本スキル
繁殖Lv10/10
最弱クラスの魔物。武器を持ち、群れる習性がある。100以上の群れだと小さな街が滅ぶ事もある。消費魔力100
スライム
体力:50/50
魔力:100/100
攻撃力:5
防御力:20
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
攻撃速度:10
移動速度:5
基本スキル
分裂Lv1/10
最弱クラスの魔物。基本的に物理攻撃は効かないが、核を少しでも傷つけられると死ぬ。ある程度攻撃力がある者に攻撃されると消し飛ぶ。魔法が当たると蒸発する。消費魔力100
弱いな。ゴブリンは群れれば強いらしいが、全部使っても10匹だけだし。あとやはり俺の防御力は異常だった。
これより上となると...
スケルトン
攻撃力:60
防御力:20
魔法攻撃力:20
魔法防御力:15
攻撃速度:10
移動速度:15
基本スキル
なし
ダンジョン等の魔力の濃い場所に死体を放置するとスケルトンに変化する...と言われているが、本当は魔力の濃い場所で生き物などが死ぬなどして負の魔力が溜まると生まれる魔法生物である。この魔物が発生した際、近くにある死体から武器や防具をとって装備する為、見覚えのある装備をつけているスケルトンを見て勘違いするものがいる。消費魔力400
コボルト
体力:200/200
魔力:100/100
攻撃力:15
防御力:25
魔法攻撃力:20
魔法防御力:20
攻撃速度:30
移動速度:40
基本スキル
格闘術Lv1/10
犬を二足歩行させたような魔物。それなりに速く、魔法も使う個体もいる。一匹だけではそれほど脅威ではないが、群れると厄介。50以上の群れだと小さな街が滅ぶ事もある。消費魔力500
ここら辺が手頃かな?いや、後で迷宮も造らないといけないしやっぱりゴブリンやスライムか?
なら先に迷宮を造るか...ん?これは...
ローパー
体力:3000/3000
魔力:200/200
攻撃力:360
防御力:30
魔法攻撃力:80
魔法防御力:280
攻撃速度:400
移動速度:0
基本スキル
魔力吸収Lv1/10 繁殖Lv10/10
なんとも形容し難い魔物。無数の長さや太さを調節出来、切れても再生する触手を操り叩いたり巻き付いたりと多様な攻撃手段を持つ。また、自身に危機が迫ると触手の先端から白い液体を噴射し、目眩ましにする。手頃な穴があったら思わず触手を入れてしまいたくなる習性を持ち、それは人間にも変わらない。女の敵。消費魔力1500
こ、これは...素晴らしい!
い、いや、別に触手を使ってあんなことやこんなことをしようと言う訳ではない!断じてない!
そうではなくて、宝箱のモンスターと言えばなんだ?そう、ミミック!
宝箱だと思って開けると中からモンスターが出てきたり、噛みつかれたりするあれだ!そして俺は防御力カンスト!宝箱のなかにこのローパーを入れ、魔物操作で触手を操り、攻撃を食らいそうになったら閉める!触手の長さは調節できるからはみ出すこともないし、切れても再生する!消費魔力も1500。500もあれば地上からここまで一直線の道くらいは造れる。完璧だ!
あとは魔物操作がどれくらいの精度で操れるかだが...まぁ、やれば分かるだろう。
では早速『魔物召喚:ローパー』
スキルを使うと、目の前に青い魔方陣が現れ、強い光を放つ。とっさに目をつぶる(イメージ)が、すぐに光はおさまった。目を開ける(イメージ)と、そこには無数の触手が。
成功だ。じゃあ魔物操作で俺の中に入れて、と。
おお、入ったな。しかも中のローパーに違和感を感じるどころか、まるで体の一部のように感じる。
試しに動かしてみると先程中に入れた時よりも動かしやすい気がする。これは俺の体の一部として認識されたってことか?
おいおい誰だよ外れって言ったやつ。むしろ安全性に関してはどれよりも優れてるんじゃないか?だってダンジョンの宝箱だぜ?中身を取ったら後は放置が普通だろ?防御力もカンストしてるし、実は一番の当たり?
いや、まだ分からないな。もしかしたら他にも攻撃力9999999とかいるかもしれない。その場合傷つけられるかもしれないし、触手も通じないかもしれない。
まぁそんなことは今考えても仕方ない。とりあえず地上まで道を造ってと。これで誰か来るまで待ってみるか。
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──
あれから一ヶ月程がたったが、何もこねぇ!
最初の方はまだ見ぬ侵入者に心を踊らせていやのだが、もう全然来ない。それで気づいた。もしこの通路の先が誰も来ない魔境だったら?ゴブリンとかがいるんだ。ドラゴンだっているだろう。そんなのが住み着いた場所にはわざわざ近寄らないだろう。
そう考えてからは諦めた。そして触手をいじり始めた。触手を絡めてみたり、結んでみたり、あや取りしてみたり...そんなことをしていると急に操作が上手くなった。何があったのかと考えてみて、ステータスを開いた。すると触手操作術と言うスキルが増えていた。
それならばと色々やった。触手でシャドーボクシングをしてみたり自分を持ち上げてみて、動かしたり...それをずっと繰り返していると触手格闘術と触手歩行術が増えた。なんとこれによって移動速度ゼロにもかかわらず移動出来るようになったのだ!と言っても本当に少しずつだから今はスキルのレベル上げに励んでいる。
そうこうしているうちに一ヶ月が経ったのだが...そろそろ触手にも飽きてきた。かといって魔力がないし、なにもすることがない。こうなったら触手歩行術をレベルアップさせ...
「おお、宝箱か。ん?なんだ、ここで行き止まりか。」
て!?
人間!?まじで!?え、ほんとに来たの?幻覚じゃないよね?イヨッシャァァァァァ!!!
人!人だよ!しかも美女!これは美味しくいただくしかないよね?(意味深)
いや、落ち着け、俺。簡単にこの人を殺しちゃってもいいのか?
一ヶ月も人が来なかったんだ。その事について聞いておいた方がいいだろう。
だからこの人が宝箱を開けるのを待って...
「ここはダンジョンではないのか?まぁいい。どうであれ街の外にあるものは基本的に発見者のものだ。これはいただいていこう。」
おお、いいぞ!来い、さあ来い!
「ん?鍵はかかってないのか。さて、中身は...な!?」
よし、捕まえた!
すまない名前も知らぬ美女よ。聞きたいことを聞いたらすぐに解放するから。
あのー、すいません。聞きたいことがあるのですが...あ、俺喋れないんだった。
どうしよう。完全に忘れてた。そうだよな。宝箱だもんな。それによく考えたら情報を聞き出したとして、どうするつもりだったんだ?こうなったらここのことを報告されるだろうし...あ、それでいいじゃん。この女の人を返してここのことを知らせてもらって...よし、それでいこう。ローパーのスキルの魔力吸収ですいとって、と。
こういう罠だったと思えば納得してくれるだろう。
では入り口に向かってポイッと。
よし、これでこのダンジョンにも人が来るようになるだろう。
俺のダンジョンはまだまだこれからだ!