異差
私自身が理解する為にやたらマサキとユメに同じことを言ってもらってる回です。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ドドドドドドドドドッッッ
ほぼ絶叫しながらルカがあたし達の揃ってる居間に走ってくる。今の時間は夜の12時。明らかに近所迷惑。なんなのもう!
チヒロ超絶興奮しながら口をパクパクさせているけど全く言葉になってない。その手には黒くて少厚みのある板が握られていた。
「なんだよルカ。こんな夜中に。」
マサキが片眉を下げながら黒い板をチヒロの手から取る。いいから見てみろって感じでルカ、片手をヒョイって上にあげてみせる。あたしにはその板の使い方は分からないけどマサキには分るらしい。まちがいなく過去の機械だ。側面にあるボタンをおすとチロリンって音がなった。まったく意味が分からない。その音って必要なの? え、何あの板光始めたんだけど?
あたしがポカンとしている間にもマサキとルカの周りに残りの3人も集まって何やら神妙な会話を始めたのだった。
ルカ「いや~マジで大変だった。ここ何もないんだもん。まぁ天気はいいから発電はできるんだけど問題は電波がさぁ〇✕△△✕…(理解不能)」
マサキ「……そんなことあるのか。あっていいのか。だとしたら人間のエネルギーはどこに発散されていくんだよ。」
ユメ「そんなはずないわ。だってほら私たちはちゃんと色付いてるじゃない。」
チヒロ「」
モカ「」
皆口々に喋るから何が何だか訳が分からない。 なにかびっくりすることが起きたらしい。あたしはその板に触れるだけで光ったり文字が出てきたり図が出てきたり音が鳴ったりすることの方がびっくりなんですけど。
さくら「ねぇあたしにも教えて!!」
ちょっと待ってねって言われて待つこと15分。みんなどんどん頭を抱え始めて。あたしずっと待たされてるからだんだんいじけてきちゃう。ふんっ。
「さくら怒んない怒んない。」
あたしの頭をコツコツしながらマサキが言う。その横にあの板を持ったユメが立っていて、どうやらやっと説明してくれるらしい。
「あのねこれは今ここにいる人間の活力というかエネルギーをデータ化したものでね、どうやって調べたかっていうのはルカの才能の話になるからちょっと気にしないでね。で、これがさくら達、おじさんとかおばさんとかのエネルギー指数ね。でこれがあたし達。わかる?さくら達決して生気がない訳じゃないし、簡単に言えば元気度合いは私たちと同じなの。でもここ見て。明らかに1つさくら達欠陥してるところあるでしょ?これはエネルギーの中でも向上心って言葉で表せるところなんだけど。ここがすごく低くなってるの。人間には思考力、洞察力、創造力、想像力、って言う色んな力があって。この力によってより便利な生活になるように努力して生きてきたはずなのね。これが向上心。だから現に私達は向上心のエネルギーも申し分なくあるの。でもさくら達はそれが私達の10分の1しかない。」
ほんとだ。どうして?パソコン(この板はパソコンっていうらしい。)自体に驚きながらもあたし真剣に話を聞く。たしかに10分の1しかないのだ。でもそれっていけないことなんだろうか。
「でもこの辺に住む5歳までの子ども達は向上心のエネルギーに溢れてるんだよね。まるで何かに止められるみたいに6歳からはそのエネルギー失われてしまってるの。それっておかしいじゃない。今まで必要としてた学ぶことのエネルギーよ。6歳以降も持ってなくちゃ変じゃない。ここを境に何が起こってるの。」
活力も生気もある。ただそれを発散させる出口がない。本来なら考えて造って学ぶことで発散させ進化してきた。それこそが人間が他の生き物と一線を画すところなのだ。そのエネルギーって普通はため込めるものじゃないから1000年前の人々つまりユメ達と同じ身体(身体の根本的な作りはあたし達も同じだけど)の人々だったら欲求がたまって精神的に壊れて生きていけるはずがないらしい。あたし話がむつかしくて顔を顰めてしまう。
「俺はね、現代の人々がこんな生活してるのは何百年か前にこの地球に何かが起こって文明が軽く絶滅したとかだと思ってたわけ。だから今は進化の途中段階なんだろなって。でもこれ見る限り今の人々って進化できないんだよ。何百年も前から何故か退化してから進化が起こってないみたいなんだよ。」
マサキ少し生え始めてきた髭を触りながら喋る。
「1000年の時を経て人間がそういう生き物なったんじゃないの?言い方悪いけど成長しない生き物に。」
あたしの質問にマサキがすかさず答える。
「だとしたら生まれた時からその状態でないと。でも能力、学ぶ力、つくる力は生まれ持ってる。5歳までは健全なのに。6歳からはからはそれを何の形にも変えずに身体の中で収束させてるってことがありえないことなんだよ。もしくは。もしくは6歳から生気も失われるならまだ理解できるんだけど。なんで1箇所だけなんだろう。」
マサキもユメも同じようなことばっかり言ってる。確かにそうなの。あたし達とマサキ達が違う生き物なような気はしてた。特にルカに関しては明らかに違う。こんな機械作っちゃうんだもん。それは育ってきた環境が違うからで要約しきれないくらいの違いがあるような気がしてた。
きっとその違和感の理由はこれなんだと思う。イマイチ意味は分からないけど。そう思うとどことなく寂しさが湧き出てきた。
でも……仕方ないじゃない……どうしようもないもの……仕方ないわ。
「今ささくらちゃん『仕方ない』って思ってるでしょ?」
聖母。いつの間にか隣に座ってたモカがあたしの髪を撫でながら。いつもは語尾に♡が付いてるのに今日ははっきりした口調。柔らかな雰囲気からは想像もつかないくらい力強い瞳で遠くを見すえてる。
「でも私達は違うの。『仕方ない』とは思えない。何事にも必ず理由があるから。絶対。絶対突き止めるから。」
そう言って微笑んだモカの瞳からは1人じゃないよ、私たちがついてるからって聞こえた気がした。さっき感じた寂しさが薄れていったような気がした。
こんな生活が続いて欲しいってこの前は願ってた。
今も願ってる。けど。
けどみんながいるから。
今はこの生活を崩してしまってもいいような気がする。
本来の私の姿を知るためには崩すことになるような気がする。