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閉路  作者: 一稀美
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将来への希望

この回ではさくらの心理を見守って貰えたらなぁと思います。

最近の悩みはここまでルカとかチヒロとかの出番が少なすぎることですね。。。


 しーんみり。しーんみり話を思い出しながら咀嚼してるとマサキが部屋から出てきた。初めに着てた黒の高級そうなかっこいい服からあたしの用意した簡単なテロテロの部屋着を着てる。でもかっこいい。なにを着ても似合う人。あたしがはだけた鎖骨をガン見してる間にマサキが向かいの机の前に腰を下ろしながら

「寝れないなら少し話そ」


「じゃぁここには本当に電子機器もロボットも交通機関も何もないってこと?」

マサキ。確かめるようにあたしに尋ねる。無いものは無い仕方ない。

「ない。知らない。」

「……日頃は畑とか釣りとかしてるって言ってたけど……もしかして学校もないのか?」

「それは知ってる! 今はないけど! 学校は必要なくなったってひいおばあちゃんが言ってた!」

あたしの言葉にマサキなんとも言えないような表情になって眉間のシワが濃くなる。だからあたしあわてて訂正する。

「でもちゃんと勉強はしたよ? 小さい時にお母さんが教えてくれた!だからねえっと。足し算と引き算掛け算割り算できるし……あと文字は書けるし読める!漢字も!」

「四則演算は当たり前だけど漢字は1000年経ってもちゃんと受け継がれていくんだな」

 まさきの顔がふっと柔らかくなる。この微笑み。あたし好き。

「漢字は得意な方!!マサキさん!名前漢字でどう書くの??」

眉間のシワの寄った顔じゃなくて微笑みが見たくて。漢字の話を続けてみる。

「えっとねぇマサは将棋の『将』キは希望の『希』。分かるかな?」

って言いながらマサキうっすら微笑んでくれてる。あたしの好きな見たかった笑顔。でもあたしの心はチクって痛んだ。だって。だって。将希。将来への希望。そんな風には聞こえるんだもん。人類の希望。母なる大地、まだ見ぬ地球への希望。もしかしたらそんな意味を込めてマサキの親は付けたのかもしれないから。


だとしたら今の地球をみてどう感じるのだろう?

どんな気持ちになるのだろう?

あたしが悪いわけじゃない。

あたしが生まれた時から地球はこの状態なのだ。ずっとずっと昔からこうなのだから。でも何故か申し訳なくなったの。こんな地球でごめんなさい。あたしたち人類は進化どころか退化してしまったみたい。ごめんなさい。


「さくらのせいじゃない。なにか理由があってこうなってるんだ。仕方がないことだったはずなんだよ。」

 やっぱりこの人あたしの心読めるんだ。今は100%声に出してない自信がある。でも、あたしの欲しい言葉を全部言ってくれた。

 あたしの好きな微笑で。チクッと傷んだ心。じんわり温かくなっていくのを感じながらあたしも微笑んで。2、3回言い聞かせるように頷いてみせた。

「さくら。さくら。花の桜?」

き、急に名前何度も呼ばないでよ! 緊張しちゃうじゃん!

「うん!ここはすごく桜が凄く綺麗に咲くことで有名なんだよね。見た事ある?」

「もちろん。ない。生活に必要なものしか宇宙船にはなかったからなぁ。」

「今年は見ましょ!地球には他にもいっっぱい綺麗な自然があるから!」

そうだ。どんなに退化したこの地球でも美しいものは山ほどある。自然だけは退化してない。地球も捨てたものじゃないって見たら分かると思う。朝日の差し掛かった稲が朝露に濡れてるところなんて神秘的としか言えないもの。


 ふっと時計を見る。夜11時。あたりは真っ暗。あ、そうだ。

「あの!夜空見に行こ!」


 星。今日は晴れだったから絶対綺麗なはずなんだ。マサキの返事を聞かずあたし、無理やり手を引っ張って外に引きずり出す。その間中、宇宙から来た俺が星なんかもう飽ききってるんだけど……とか聞こえたような聞こえなかったような。

 より感動させたかったあたし。マサキには目をつぶってもらって。あたしの家で1番夜空が綺麗に見える場所まで引っ張っていく。

うん、いつも通り満天の星空。雲ひとつない暗闇にキラキラ光大小の星。

「目、開けてみて?」

マサキが目を開ける。暗闇に目がくらんでるみたい。何度も瞬きしながら夜空を見上げる。

「おぉ」

横から小さくも驚きのある声が聞こえる。どう??? 綺麗でしょ?? 捨てたもんじゃないでしょ?? 聞こうとしてやめたの。

マサキがあまりに真剣な眼差しで空を見つめてたから。声を掛けれるような雰囲気はなかった。深く深く考え込んでる顔だった。


 長い時間が会話なく流れる。でも苦痛の沈黙ではなくて。

「これなのかな。」

え? マサキの発したポツンと一言発する。返事する間もなく…

「これなのかもしれないなって。昔の地球人が後世に伝えていきたかったものは技術じゃなくて自然の美しさなのかもしれないなって。」

否定も肯定も出来なかった。考えたことがなかったからその答えを知らなかったから。マサキがあまりに真剣な顔だったから。

「まぁ分かんないけど!もしかしたら地球って1回滅んでやり直してんのかもしれないしな!!」

また今までのチャラけたマサキに戻る。そんな彼にあたし微笑んでみせた。

「かもしれないですね。謎ですね!」

って何気なく。マサキが変な顔でこっちを見てくる。なに? なんか変なこといったかしら?

「じゃなくて。また敬語になったなと思ってね」

あっ……そっか。沢山話してたら知らないうちに馴れ馴れしく話しかけてたんだあたし。

「いや、敬語やめてくれていいよ。いまの俺ら居候の身だから。そのほうが仲良くやっていけそうだしさ。」


 そう言ってスッと手をあたしの方に出してくる。神々しかった。ただでさえ長身スタイル抜群の超絶美男子(注︰あたし目線)。そんな彼に自然まで味方しているんだ。大きな満月の光が彼の頭に降り注いでて。

 将希。間違ってないな。間違いなく将来の希望だ。彼を見てると何かが起こってしまうような予感がする。とってもとっても大きな何かが。でもあたしは何があってもマサキについて行こうと心に誓った。人類の希望はあたしの希望でもあるから。


 そんな意味をこめてそっと手を握り返した。


温かな風がそっと吹いてあたしたちの頬を撫ぜた。頬に揺れる髪のくすぐったさが握手してるいることの恥ずかしさを思い出させてお互い手を離す。あたしの手にまだ微かに残った温もりが嬉しくてグッと握り拳を作った。


未知の世界を沢山知れた。大切な仲間が出来た。溢れんばかりの星が夜空を埋めつくす。そんな素敵な夜だった。

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