回想
4話目ですね。この回はの見所は作者としてはまぁ子作りの仕組みですね。官能小説じゃありませんよ。すぐ終わるくだりですけどね〜。
さて。
あたし達の離れへの引っ越しが終わり、(というのも特に荷物もない。体ひとつでの移動だけどね。)居間に集合する。もう日も暮れだしてたからとりあえず塩にぎりを皆に渡す。おいしそうに食べるガタイのいいチヒロ、味がしなぁいって駄々こねるモカ、もう少しましな料理はないのかよって文句ばっかり言うマサキ。
とりあえず全部無視して。あたしは部屋割を考えていた。離れって言っても使われなくなった普通の家だから居間のほかに部屋は3つ。今ここにいる人数は6人。本来なら2人1部屋にしたらいいんだけど……そうすると必然的に男女が同じ部屋が1つできちゃうから。これはなんか、なんか、あたし的にダメなの。
だから仕方ない。ユメとモカが同じ部屋。マサキとルカとチヒロで残りの二部屋。あたしは居間っていう部屋割に決めた。(まぁ一応書いておくと、何となく分かっていると思うけどルカとチヒロが同じ部屋でマサキが一人部屋になったらしい。)
そんなこんなで食事も終わったことだし各々が部屋に籠ろうとする。
そりゃそうだよね。18年の長い宇宙旅行帰りみたいなもんだもんね。疲れてるだろうし安堵もあるよね。早く寝かせてあげよっと。本当はまだまだ気になることあるんだけどまた明日でいいや。って考えながら皆が部屋に入っていくのを居間の机に両ひじをつきながら見つめていると……天使が……天使が微笑みながら近づいてきた
「さくらちゃぁん♡なにからなにまでありがと♡これからよろしくね♡」
だって。天使にこんなこと言われたから!! あたしは身を粉にして彼女をお守りす……!!!っていう王子様的心情に浸ってしまうじゃないか! 可愛いは正義!!! そのとおり!!!
誰もいなくなった居間でゆず茶をすする。今日の緊張がすっと解けていくような感覚になる。すごい一日だったなぁ〜夢みたいな出来事だよね。あたしは今日聞いた話を一つ一つ思い出しながら整理していくことにした。
ここであたしが話を整理する間に少し余談話。こんなに非現実的な話をされたんだもん。あたし1人で処理しきれないから。だから余談として聞いて。
まず彼らが乗ってきた宇宙船について。2020年の最先端技術を総動員させた宇宙船。1000年衣食住を不自由なくなっていくだけの機械は全て揃っていたらしい。ボタン一つで作られる衣類、食べ物。宇宙空間で水を作り出してしまうことさえも簡単だった。整った環境の中で研究者5人とその子孫達は順調に探索をつづけたの。代々受け継がれた使命は彼らの誇りそのものだった。ただ。ただ彼らは地球のために一生を捧げながらも1度も地球というものを見たことがない。1000年間は帰ることが出来ないから。そりゃ火星とか他の恒星から「あーあの星が地球かぁ」って見ることは出来たかもしれない。でも地球の中身。地球の中の暮らし。地球そのものを見たことがなかった。それ故に地球への憧れがどんどん膨らんだ。いつしか彼らは宇宙探索の使命を引き継ぐと同時に地球への憧れを子孫に託すようになったの。
そんな憧れを生まれながらに植え付けれたマサキ達5人が初めて地球に降りたって見た景色が……辺り一面の畑と何の変哲もない普通の女の子だったら……そりゃやっぱりショックだったはずだよね?
じゃぁマサキ達の親はどこにいるかって?
すごく最もな質問。あたしも真っ先に気になったの。
結論から言うとあの5人の親はもう居ない。厳密に言うと生まれた時から居なかったかもしれない。
今から800年くらい前。【子作り70歳制度】を宇宙船内で施行された。想像する限り限りゾッとする。話を聞いたらもっとゾッとするかもしれない。
まずどうして70歳なのなかというと。資源削減のため。1000年分の衣食住をまかなえると言ってもいつ何が起こるか分からないんだから無駄遣いをやめよう。資源を使うのは人間だ。つまり子どもを作るのを人生のギリギリまで遅らせようっていう。人間の限界を完全に無視しためちゃくちゃな制度に聞こえなくもないよね。どうしてそんなことが可能だったのかって言うとね、宇宙船の中にある【子作りルーム】に仕掛けがあって。男女ともに69歳になったら子作りルームに行かないといけない。
あっ違うよ違う!!!69歳になったおじいちゃんとおばぁちゃんがあんなことやこんなことが……なんて事をするんじゃなくて! 断じて違うくて!ちゃんと説明するね。そこに人工子宮があるのだ。そんでもって冷凍精子も冷凍卵子を完備してる。それも……天才研究者の遺伝子を引き継ぐ精子と卵子。69歳のおじいちゃんとおばぁちゃんはこれを人工子宮の中で受精させて子どもを作るの。こんなことを800年前から続けてて。だからマサキ達みんな同じ年齢なんだよね。で69歳で作ったら70歳になる頃には晴れて赤ん坊を一人一人もつことになるんだって。これは親は親でも育ての親作りの親って感じになるし誰の遺伝子を使ってるのか自分には知りようがないから……生まれた時から親がいないっていう認識もあながち間違いじゃなくなってくるんだよね。
そんな親、育ての親、作りの親もそのうち寿命が来る。残念なことにあの5人の親も寿命によってもう既にいないということらしい。ここまで来るとなぜ【子作り70歳制度】っていうなんともいやらしさのある名前を付けたのかが納得できる。そう言うしかないんだもん。妊娠でもなければ出産でもない。あくまで作ってるっていう表現が間違いじゃないんだよね。すごい話だなぁ。
ふぅ〜〜考えれば考えるほどしんみりしてきちゃった。