輪
お久しぶりのお久しぶりです。1ヶ月以上あけてしまいました。
全く思いつかず……( ˊᵕˋ ;)
また読んでくれると嬉しいです!
「ねぇ。皆で海に行かない?」
例によって例のごとくユメが全員を約束の場所に誘いだす。
真っ暗な海にこぼれんばかりの月明かりをが6人を照らし出す。
「きれい……ですね。」
ルカが呟く。
「風が、気持ちいいねぇ。」
モカが呟く。
午後11時30分。海が穏やかに波打つ。柔らかな風が頬をかすめる。
「俺たちさ、あの星の向こうから来たんだよな。」
マサキが呟く。
「あんなに小さく見えた地球がこんなに大きかったなんて。」
チヒロが呟く。
午前11時45分。少し肌寒くなった風。知らないうちに軽く体を寄せ合う6人。
「嬉しいな。皆と知り合えて……この輪の一員になれて。」
あたしが呟く。
午前12時00分。辺りがまた一段と静かになる。一つ、また一つ、吐き出された息が空気に溶ける。
ユメは何も言わない。
あたし達は誰が言う訳もなく、誰が教える訳でもなく、今から起こりうることが分かっていた。わかるような気がしていた。
本能が、自然が、今があたし達にとって運命の時になることを教えていた。あたしはすぅっと息を吸い込む。
ゴゴゴゴゴゴゴ
激しい地響き。荒れ狂う海。共鳴して泣くように声を出す木々達。暴風とともに霞み始める視界。この世界を離れていくように虚ろになるあたし達の意識。
ふわふわ浮いているような感覚。なんとも言えない心地良さと太陽が降り注ぐ森林の様な匂いに包まれていた。
ぱちぱち。誰かがあたしの頬を叩く。その刺激によりあたしの意識が蘇る。うっすらと目を開けるとそこには真っ白な世界が広がっていた。周りには白以外の何も無い広い四角い箱のような部屋であたし達は目を覚ました。あたしの顔を叩いていたのはマサキなんだろう。他の皆はまだ起きていなくて座っているのは横にいるマサキだけだった。
「ここはどこか……」
起き上がりながら発したあたしの言葉が止まる。だって。ここにはあたし達皆いるのに、ユメの姿だけなかった。
「大丈夫か、身体は」
マサキが他の皆を起こしながら聞いてくる。私はどうしてユメが居ないのかが分からず呆然としていた。
「え……あ、うん。ねぇユメは……?」
ちゃんと考えることが出来ない頭で何とか返事をする。
「分からない。起きたら……ユメだけいなかった。……おいチヒロ。起きろ。」
ルカが起きて、モカが起きて、チヒロが起きた。
「ユメ〜〜ねぇユメどこにいるの〜〜?」
あたしは立ち上がって歩きながらユメの名前を呼んでみた。歩きなが分かったことだけどこの部屋は不思議な部屋で、部屋の端が一向になかった。つまり壁が目には見えるのにいくら歩いてもそこにたどり着かない。どれだけ歩いても数歩先に壁が見える、言わば永遠に終わらない部屋だった。
「え、ユメいないの?」
後ろで小さく起きたばかりのチヒロの声がする。
「あぁ居ないんだ。おいさくら、戻ってこい。」
マサキの呼ぶ声が聞こえたからあたしは皆のいる方向に戻る。部屋の壁ももちろん着いてくる。
「ユメがいない。」
みんなの元に戻ったあたしが言う。
「先に目を覚ましてどこかに行ったのかなぁ」
心配そうな顔のモカの言葉を受けてマサキが眉間にシワを寄せながら答える。
「それは多分……ないんだ。」
「どうして?」
「出口がないから」
モカの問にマサキが答えるより先にあたしが言う。
「そう、この部屋出口がない。もっと言うなら壁に触れることさえ出来ない。」
何をしたらいいのか、どうしたらいいのか誰も分からないまま静寂だけがあたし達を包み込む。
この静寂を破ったのは意外にもチヒロだった。
「ユメってさ。最近楽しそうだったよね。」
というと?あたしにはその言葉の意味がいまいちよく分からなかった。理解ができないままチヒロが話を続ける。
「ここ最近、いや地球に降り立ってからすごい生き生きしてたような気がするんだ。」
「同感です。」
「私もそう思う。すごく明るくなって……宇宙船の生活の時とじゃぁ人が違うみたいだった。」
ルカもモカもチヒロの意見に賛成するんだけどあたしにはやっぱり意味が分からなかった。よく分からないあたしは何も言わずに取り敢えずだんまり。
「ユメは……ユメはもしかしたらこの世界が変わってほしくなかったのかもしれないな」
マサキが寂しげな瞳でこう呟く。
……そんなことある訳ないじゃないの!どういう理由でそんなこと二なるの?ユメは生れてからずっと高度な技術の中で生活してきた。この今の世界に目新しさ、新鮮さはあったとしても、このままの何の文明のない世界を望んでいるはずないじゃない!だって。だってあたし達は皆でこの世界を変える為に、元の世界を取り戻す為にずっと一緒に頑張ってきたんだもん。もしマサキ達の言っていることが正しかったとしたら……あたしと一緒に過ごしてきたユメは本物じゃなかったの?ユメの本心はどこにあったって言うのよ!!
あたしの中でプツン……と何かがキレる音がした。
「ふっざけんじゃないわよ!!!!!!!!!!勝手なことしないでよ!!ユメを返せこのやろう!!」
あたしは叫んでいた。立ち上がって拳を握りしめたまま。叫んでいた。あたしの突然の行動に皆が唖然とする。けどあたしは止められない。身体の内側からあふれ出るこの叫びを止めることは出来なかった。
「パワフルだね。お嬢さん。」
突然。何の前触れもなくあたしの魂の叫びに対する返答があった。その声は度々あたしに夢で話しかけてきたりした、あの憎き声。あたし達の村の土地をめちゃくちゃにした張本人の声。
「喉、痛くならないかい?」
初めは天井から落ちるように一音、一音が宙を彷徨うように木霊していた声。今度は一つのまとまりを帯びて聞こえてる。声がするような場所、部屋の隅ともとれる場所にあたし達は目をやる。そして一斉に息をのんだ。
さっきは間違いなくいなかったはずのユメがそこにいた。