理想と現実
3話目ですがゆるーくお話進んでます。とってもとってもゆるーく。
1000年前からどうやって来たの?
少しの静寂の後5人はこの質問に答えることを完全に無視してルカがあたしに質問をしてきた。
「ここはなんでこんなに何もないのですか? 東京ですよね? 仮に時代と共に東京がドドドド田舎になったとしても何故周りに畑しかないのです? 家にテレビは?スマホは? パソコンは? 冷蔵庫もないじゃないですか? 1000年前でさえあった物ですよ?我々は先祖代々今の地球の姿をこれ程かと言うほどイメージして超ハイテク国を夢みてきたのになんなんですこれは?」
ルカ。早口でまくしたてる。ただでさえ聞き取りにくい早口なのにその上聞いたことない単語ばっか並んでるんだもん。嫌になっちゃう。
「え……っと。たしかに大昔に空飛ぶ乗り物があった凄い時代があったとか聞いたことはあるけど……それって都市伝説みたいなもんで…テレビって聞いたこともありません……」
私なんだか少し責められてるような気がして小声で自信なさげに話してしまう。
・・・・・・・・・・・・長い沈黙
「え。本気で言ってるの? この場所だけじゃなくてこの世界どこもこんな生活なの?」
最初に口を開いてくれたのはモカだった。沈黙に耐えきれなくなってたあたし。急いで答える。
「あたしはそんな遠くに行ったことないけど知る限りじゃどこも同じ暮らしです。みんな畑とか釣りとかして生活してるんです。」
・・・・・・・・・・・・長い長い長い沈黙
はぁ。。。この部屋にいる全員がため息をついて。
「でも信じるしかないよなぁ。」
「えぇ。今が3020年なのは事実。そして2020年の世界が今の1000倍、いえ10000倍発展してたのも事実よ。その証拠があたし達の乗ってた宇宙船だもの。」
マサキとユメが慰め合うようなに会話を交わし事実を認め合う。
どことなくみんなしんみりとしてる中であたし。今度はあたしが質問してもいいよね?って感じで様子見をしてそっと声をかけてみる。
「1000年前からどうやってきたのですか?」
6回目の説明が終わって同じ説明が7回目に差し掛かろうとする頃、あたしはやっと理解し始めた。理解するというか信じるって言う方が正しい。何回聞いてもあーなるほど!!!とはなれないの。
最初のうちは5人皆がこまかーく説明してくれてたんだけどここまで来るともう律儀に説明を繰り返してくれてるのはマサキとユメの2人だけ。ルカとモカは思い思いにあたしの家の中を探索し始めた。チヒロだけは…正座を崩したかと思うとこんどはおやま座りをして益々ちっちゃくなってもう何も発言はしなくなっちゃった。
でもまぁいくらちっちゃく座って言葉を発さなくても存在感が消えないのは偏にこの逞しい肉体のせいなんだと思う。
とにかくマサキとユメの説明をまとめるとこうなるの。
その昔大昔今から1000年前の地球。この時代の地球は素晴らしく発展してたらしい。というのも人間は自由に短時間で移動できるし(話によると飛行機とか新幹線っていう乗り物のおかげらしい)100階建ての建物も作ってたとか。そうそう病気になった人には体を刃物で切って病気の元を取り除いてあげるとか何とか。なんてなんて恐ろしい世界なんでしょう?!そんな中2020年。遂に超大掛かりな巨大プロジェクトを開始するの。
【宇宙探索1000年プロジェクト】
2020年選りすぐりの天才学者5人を乗せた宇宙船が飛び立った。目的は宇宙探索。未知の世界を切り開いて遠くはるか先の未来のために宇宙をひとつ残らず探索する。帰船予定年は3020年。それまでその宇宙船の中で子孫を作り使命を受け継いで受け継いで……想像できないような長い時間を想像出来てないような壮大な宇宙を相手に過ごす。全ては未来のために……
っていうものらしい。つまりマサキ達は2020年宇宙船に乗った天才学者5人の最後の子孫。1000年の時を経て地球に舞い戻ってきた地球人。って言うことになるらしい。
んーーなかなか信じられない話。想像が出来ないよね。私が6回説明されても理解できなかったのも当然だよね??
あたしがおおよそ分かったのが伝わるとユメ、大きく伸びをして疲れた寝るって言い出した。
あ、そういえばこの人達これからどこに住むんだろう。夜は宇宙船のなかで寝るのかなぁ? ご飯は何食べるんだろ?
「いや、もう宇宙船はうんざりだ。今日からこの家に住むから。ちなみにここの食べ物を食べるから!人工物の食事なんてうんざりだ!」
マサキが言う。なんでこの人あたしの思ってること全部分かるの?心読める才能みたいなのついてるの?
「おれはエスパーじゃねぇよ! お前心の声のつもりか知らないけど全部漏れてるの! 全部独り言になってるの!」
えぇ!あたし喋っちゃってたの?! えぇ??
「とにかくここに住むから。」
かなり一方的にあたしの家に住むって宣言されたもんだから、あたし仕方なくお母さんに説明しに行く。もちろん隣町の村の子が5人ほどちょっと間ここに泊まりたいらしい、とか適当に嘘つかせてもらうけど。宇宙から来た人間なんて信じてもらえないから。
話してみたらあっさり許可がおりた。うち、かなり放任主義だからかな。どうぞどうぞご勝手にって感じで。
ただ離れの家を使ってってことだったけど。この家には離れがあって今は誰も住んでないんだよね。だからみんなそこに泊まってもらうことにして。と、すると? ご飯の支度もあたしがすることになりそうだから、もうあたしも離れで暮らすことにしたの。
こうしてよく分からないけど急遽あたしとマサキ、ルカ、チヒロ、ユメ、モカの6人の同居が始まったのだった。