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閉路  作者: 一稀美
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逆サイド

珍しく朝の投稿になります。そろそろ完結を迎えそうな気がします。

夜型人間になってしまったから朝4時頃にならないと眠くなってこないのが本当に悩みです。。朝起きるのが嫌で嫌で仕方ないなぁ

時は遡って2203年。

八月、俗にいう真夏。地球温暖化による気温上昇に伴って最高気温は40度近くになり、うざったい蝉の鳴き声を聞きながらじわっと背中に汗がつたう気持ち悪さを感じる。それでも照り付ける太陽の下遊ぶ子どもたちの肌はこんがり健康的に焼け、行き交う人は一人一つのハンディ扇風機を片手にアイスクリームを頬張る。そんな風景が元来の、本来の八月のあるべき姿。

2203年。ただ今の気温25度。行き過ぎた技術の進化と地球温暖化は遂に自然界の形を変えてしまっていた。人間にとって一番都合のいい気温を一年中保つ。かつて四季の国と言われた日本はもう存在しなかった。冷帯も熱帯も存在しない。人間が生きている地域はみな年中25度を保つように調整されていた。

今朝ばったり会った友達は3日ぶりに食べ物を口にしたらしい。昔なら3日何も食べないで生活をするのは困難だっただろう。にもかかわらず彼のお腹は空腹を訴えていなかった。「美味しいものを食べたい時だけ食事をする」これが今の常識。忙しすぎる現代人には一日三食食べる暇なんてなかった。多くの人の腕には小型装置が巻きつけられていてその中にあるカプセルに必要な栄養成分が全て含まれているのだ。決められた時間にそのカプセルの一つが潰れ中の成分が皮膚をつたって体全体に行きわたっていく。これで食事の代わりになるのだ。食事はある種の時間がある人の趣味のようなものに変わり果てていた。

歩く必要のない思った方向に動く靴。目線だけで操作できるパソコン。整形が当たり前となり簡単に変えれるようになった顔。花壇に咲いてる花はバラの香りがするチューリップ。

長年の学問で培った科学の力はこの地球の自然物を全て人工物に変えてしまったのだ。


窓にそっと目をやりいつもと同じ景色を眺める。私自身この世界に適用した人間になっていまっているのだろう。どんどん暮らしやすい生活を求めた結果がこれなのだ。便利で合理的。ただそこには人間らしさは存在しなかった。だが、私はこの生活の恩恵を受けながらも常に「これで正解なのか、これで幸せなのか」と疑問を持っていた。昔何度か友人にこの疑問をぶつけてみたが変な目で見られあしらわれるのが常だった。この違和感は歳を重ねるごとに大きくなり遂にはこの世界のやり方に嫌気がさし始めた。どうにかして世界を変えたい、そんな一心で会社を立ち上げた。キャッチフレーズは『人間らしく生きる未来の為に』。映像を作る会社だ。時には映画を、時にはCMを。この映像の中に私は従来の地球の姿を再現した。今までさんざんあしらわれてきたんだ、誰も受け入れてくれないだろう。そんな予想とは裏腹に私の処女作の映画は爆発的なヒット。目新しい世界観などといった称賛の言葉を頂いた。過去の世界を映しだしただけなのに。ヒットと共に会社も大きくなり私が意見を言う場も増え、言えば言うほど不思議なことに私の意見に賛同してくれる人が増えた。みんな言わないだけで深層心理ではきっとこの技術の進歩へのある種恐怖があったのだろう。


そうだ、私の考えは間違っていない。コンピュータに支配され、近い将来人間は人工知能の奴隷になるに違いない。何としてでもこの進化を止めなくてはならないのだ。本来の地球を取り戻さなければならないのだ。この世界を壊す。我々はこの恐怖から打ち勝たなければならない『人間らしく生きる未来の為』に。


2203年8月15日。地球崩壊。地球誕生。

この日地球は壊れ生まれ変わった。新しい世界は我々と自然界が共存できるもの。醜い競争も優越感も支配欲もない美しく優しい世界。


私は800年以上もこの世界を守り続けてきたのだ。全てはこの地球の為。なぜ今頃になってこの枠から外れ進化を求める人間が表れるのだ。畑中さくら。彼女は過去を見る超能力を持っている。この力は生まれ持ち自ら開花させたのか……もしくは。もしくは他の誰かによって。私がしらない誰か、つまり外部からこの地球にやってきた者によって。例えば長い旅を終えて舞い戻ってきた人間の子孫によって。そんな事有り得るのだろうか?宇宙船の中で子孫を繁栄させ生き永らえていくことが。【宇宙探索1000年プロジェクト】噂で聞いたことあったこの都市伝説のような話が、本当に存在したのだろうか。もしこのプロジェクトの最後の執行人が畑中さくらの能力と知識を築いているのだとしたら、私はその者を、その者達を見逃す訳にはいかない。再び悪夢を見る訳にはいかないのだ。

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