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閉路  作者: 一稀美
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宣戦布告

神様。あたしは特に常日頃から神様を信じていたこと言うわけではないの。毎朝神様にお祈りすることもなければ、お数珠を持ち歩くこともない。あたしにとってそれくらい神をいうものはアバウトで想像できない存在なのだ。どこかで「話で聞いてる神様はどれもこれも人の形なんだ」って意味深なことを言ってた人もいた。そうだよね。どんな形かなんて分からない。形があるのかさえ分からない。でも何かにすがりたいとき、なにかを乗り越えたいとき、あたし達人類は神様というものを実体化させるんだ。神様っていうのはきっとあたし達の中に存在する心の支えのような存在なんだとあたしは思うんだ。


ということは。よ。

あの声の持ち主は絶対神様なんかじゃない。少なくともあたしは神様は人間の味方だと思いたい。だって神様って云わばあたし達の母親。う~んと、聖母みたいなものなんでしょ?味方でないとおかしいと思うの。だとしたらいくらあたしが自分の命を守るために楯突いたからって見せしめみたいにこんな残酷なことして平気なわけがない。稲においては生命を奪われているんだぞ。神様がこんなことするわけないじゃない。

それにあの声はあたしに「お前は知りすぎた」「向上心とやらはなくなるだろう」とか言ってたんだ。マサキ達と一緒に過ごし始めたからもう分かるの。人間にとって学びたい、知りたいっていうのは当たり前に持つべき欲望のはずなんだ。それを抑制するなんて。しかもしかも、あたし達のこと監視してるってもう何様なんだ。


はぁだめだ。もう3時間も一人でお庭の石の上に座って考え込んでたんだ。あたし一人で考えてもだめだよね。5人に話さなくっちゃ。そろそろお昼の時間くらいかなぁ。


「さくらちゃ~ん……」

「ちひろぉ」

やだやだ情けない声出しちゃった。チヒロのおっきい図体に気の弱そうな顔見てたら力が抜けちゃた。

「大丈夫?ごはん食べれる?」

「あ、そうそう。あたしすごいお腹すいてるんだよね。」

「そうだよね!もう17……18時間かな。それくらい何も食べてないもんね。倒れちゃうよ!」

「大げさだなぁチヒロは」

「本当にだよ。あっでも……僕たちは取りあえず朝食べたんだけどさ……」

「けど?」

「ルカもなぜか食べないんだよね。まぁ元からそんな食べる子じゃないけどさ。ルカ、夜通しで災害の原因追及してたんだよね。」

「そうなんだ……。ルカって」

「実は優しいよね。」

うん。ルカって不器用だけど本当はすごく優しいんだ。ルカだけじゃない。皆ほんとに優しい。こうやってわざわざ来てくれるチヒロも。

「でもさくらちゃんは違うもんね。」

チヒロが小首をかしげながらあたしを見てくる。こういう仕草がまるで男の子じゃないんだぁぁ。この肉体にはどう考えてもマッチしないんだよなぁぁ。

「違うって?」

「ルカじゃなくて。ね。マサキだもんね?僕知ってるもんね~」

「え~意味わかんな~い。なんのことよぉ」

……これって。これってあたしがマサキが好きって知ってるってことだよね?えっやだ恥ずかしい。バレちゃってるなんて。

「皆疎すぎるんだよね。見てたらすぐ分かったよ!!僕的にはねぇマサキも……」

「ちちちちチヒロ! ごはん行こ!」

「でも僕はルカもいいと思うよ!」

「もう! なんでルカが出てくんのよぉ!」

意味わかんない!ここはごまかすのが一番だ。でもなんか。なんかむつかしいことばっかり考えてどんどん重たい気持ちになってしまってたの。チヒロがこんな思いもよらない話してくれてあたしの心いつの間にか軽くなってた。少し元気が湧いてきたのが分かる。チヒロが来てくれてよかった。

「ねぇさくらちゃん。」

「なぁに?」

「僕たちは何があってもさくらちゃんの味方だからさ。何かあったら何でも話してね。僕は頼りないけど、マサキは行動力あるしルカは頭いいし。ユメは支えになると思うし、モカは癒しぐらいにはなると思う。一人で抱え込まないでね。仲間なんだから。」

びっくりした。気が弱くてごはんが大好きで、いつもそっと影からあたし達を見守ってくれてるのチヒロがこんなこと言ってくれるなんて。皆にちゃんと言おう。もしかしたら言うことで5人を巻き込むことになるかもしれない。けどちゃんと言おう。あたし一人ならできないことも皆と一緒ならきっと乗り越えられるはず。


わぁ!!

後ろから誰かがあたしの肩を組む。

「ちひろぉぉ。さくらをご飯に呼べって言っただけなのにどうしてこんなに時間がかかるのかなぁ?ユメが料理が冷めるって怒ったってぞ~。」

「ごめんごめん~。話し込んでたらつい。」

「なにそれ気になるじゃん。俺も混ぜて。」

「それはだめだよ。僕たちの秘密の話なんだから。ね、さくらちゃん?」

「ちょっとそんなこと言ったらもっと意味深になるじゃん~~」

マサキがあたし達の間に割り込んで座ってくる。同時にそっとあたしの肩を組んでた手を頭にずらす。髪を弄りながら涼しげな顔で聞いてくる。

「で、さくらはご飯食べれそう?」

「うん、お腹すいたんだよね。」

「それはいいこと。いいこと。んじゃぁいこっか。みんな待ってるよ。」

「うん! あたしね皆に話があるんだよね。」

「知ってる。食べたら話してね?」

フッと息を吐いて立ち上がる。お尻の感覚がなくなって歩き方がぎこちなくなる。そんな弱気な足にグッと力を入れて地面を踏みしめ力強く目を開ける。こうしている間にもどこかであたし達を監視している何かに対して宣戦布告。神様か何様か知らない。あたし達はあたし達なの。誰かの監視下になんて居てやるもんか。


この地球の幸せはあたし達が守ろう。

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