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閉路  作者: 一稀美
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予感

3月も半ば過ぎましたね〜〜〜〜。最近私はお料理の練習してます。やればそこそこ出来るんだと!野菜切ってる時とかにお話考えてるんですけどついつい恋愛小説みたいになります。乙女なんで。次は絶対恋愛ものにしようと誓いました。

「おい、さくら大丈夫なんかよ!息してるよな?!」

「マサキうるさい。ちゃんと息してるわよ。」

「さくらちゃんどうしちゃったのぉ?」

「分からないけどハーブがきつかったのかしら」

「そんな悠長なこと言ってられるのか? めちゃくちゃ苦しんでたぞ?もう半日寝てるぞ。」

「うーん……」

マサキとユメとモカの声が聞こえてくる。チヒロがあたしの手を忙しなく撫でてる。あたし何してるんだっけ?


目を開けて起きてあげなきゃ、みんな心配してるのに。でも体が言うことを聞かない。鉛になったような感覚の身体とは対照的に頭は少しずつ動き出す。何してるんだっけ。確か頭痛くなって変な空間に入っちゃって、意味わからないことを意味わからない人に言われて、多分死ぬか生きるかの瀬戸際で、最後に、最後に白鳥に似た何かを見たんだ。白鳥。真っ黒な空間に一瞬白が入った気がした。その美しさはどこか冷徹なものだった。


「さくらちゃん?」

「みんな……」

あたしの意識が戻ってることに真っ先に気づいたモカ。目一杯の安堵のため息をつく。

「さくらちゃん、大丈夫?私たちのこと分かる?」

「うん……あたし。あ、あの白鳥知らない?」

「え?」

みんなキョトンとした顔になる。当然のことだよね。意識戻った途端に白鳥知らないか聞くなんて変だよね。でもあたしはあの白鳥が頭から離れなくて、胸騒ぎにも似た違和感が取れないの。本当はもっと言うべき大切なことあるのに。

「白鳥を見たの。目の前で飛んでいったのが美しくて怖かった。」

「さくら……何があったんだ?」

マサキが真顔であたしの顔を見てくる。真剣な表情で視線を逸らしちゃう。ちゃんと1から話さなきゃ。

「あのねっ」

「さくらちゃんは……」

チヒロがあたしの声を遮る。

「さくらちゃんは知ってるんじゃないかな?外のこと。」

チヒロの言葉にみんなの顔が強ばる。気まずそうにあたしの表情を伺い始める。

「そとって……外ってなんのこと?何かあったの?」

誰も返事をしない。ユメがチヒロを軽く睨んでるのがわかる。

「ねぇ何かあったの?どうかしたの?」

絶対なにかあったんだ。あたし思い出した。あの声は最後「目を覚ました時に自分のした事に気付く」って言ってた。なにか良くないことがあったんだ。

「ねぇユメ。何があったのか教えて!あたしが知らないうちに何かあったの?」

バツが悪そうな顔でユメがあたしの両手を握りながら話し始める。

「あのね、落ち着いてから言おうと思ったんだけどね。災害っていうかまだよく分かってないんだけど外のおじちゃん達の畑が無くなっちゃったの。」

「は?」

意味がわからなかった。ユメにしては珍しくまとまってない文章。言いにくそうなユメにマサキが助け船を出す。

「さくら意識失って直ぐにさ、畑一面と森ちょっとが吹っ飛んでいったんだよ。よく分からないだろ?見てた俺さえよく分からないんだ。ただ白い何がが空から飛んできて。爆発みたいなことが起きた。そのせいでなくなった畑と森はなくなった。けどそこには衝撃痕しか残ってなかったんだよ。」

よく分からなかった。分からないけど何故か納得できた。あたしが見た白鳥はあまりに美しすぎた。綺麗すぎて怖かった。多分あたしが見た白鳥とマサキがみた白い何かは同じものな気がする。


「大丈夫か?さくら?」

「あ……大丈夫。外出てもいい?」

「見るのか?見ない方がいいショックでまた倒れるかもしれない。」

「ううん、あたしが見なきゃいけない……気がする。」

「さくら。なんかあったんだな。」

マサキがあたしの目を覗き込む。その視線に真剣に答える。

「うん。見てからあたしの知ってることも全部話すね」

「ん、分かった。一緒に見に行こ。モカ、さくらの左腕支えて」

「はぁい。わかった。」


想像以上の酷さ。あたしは言葉を失った。

畑がなくなってた。畑だけじゃなくて道路も森も何も無くて辺り一体は更地になってた。所々に畑に植えてた稲の残骸が山のように集められている。

「さくらちゃん……大丈夫……じゃないよね」

「もかぁ。どうしてこうなったの?」

「まだ分からない。半日しか経ってないから。いまルカが必死で調べてるところ。」

許せない。だってこの畑はおじちゃんが、村の皆が精一杯お世話してやっと作った土地なんだもん。もうすぐ収穫期だったのに。あ。おじちゃんが稲の山をまた一つ作ってる。その背中はあまりにも寂しそうだった。当然だよね。特におじちゃんにとってはこの土地は、ここの作物には我が子のように愛情をかけながら作ってきたのだ。一年なんかの努力じゃない。何年も何年もかけて土地を肥やして美味しいお米を作るのに人生をかけてきてるのに。こんなことってあっちゃいけない。この哀愁漂う悲しげな背中をあたしは放っておけなかった。マサキとモカに小さく頷いておじちゃんの許にかけていく。


「おじちゃん。」

「おぉさくら。大変なことになったなぁ。折角さくらも手伝ってくれたのになぁ。」

おじちゃん困ったように微笑む。

「おじちゃん。ごめんね。」

「?なんでさくらが謝るんじゃ。こんなことは初めてじゃがこの世界には天災というものが存在することを改めて感じたよ。台風、地震、津波、土砂崩れ……あと何があったかな」

「噴火……とか?」

「そうじゃな。こういうものはな、止めることができないんだよ。神様がわしらに試練を与えてるんじゃろうな。」

「そんな……」

「仕方ないよな。ずっとずっと昔この地球は災害が絶えなかったと聞いたことがある。まぁ今も無かったとは言えん。暴風雨にもしょっちゅう悩ませられておる。だが最近はいささか平和すぎたんだ。」

「……。」

「幸いお米は備蓄してるのがある。さくらまた一から頑張るから手伝ってくれな。」

「うん。皆で力合わせようね、おじちゃん。」

「ははっ若い子に手伝ってもらえるんは心強い限りじゃな。そろそろ戻るかぁ。いつまでも落ち込んでじゃいられないな! することが山積みなんじゃ。ありがとな。」

あたしは微笑むことしかできなかった。収穫される前に植物としての生命を絶たれた稲の山には手で触れることさえ出来なかった。


天災。これはその言葉に属するものなのだろうか。おじちゃんは神様からの試練って言った。でもこれは間違いなくあたしが聞いたあの声の持ち主の仕業だ。こんなことたまたまだとは思えない。だとしたらあたしは神様にたてついてこの命を守ったのだろうか。神様があたしの命を奪おうとしたのだろうか。神様がこんなに残酷なことをしたのだろうか。

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