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閉路  作者: 一稀美
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ルカ

珍しくルカのお話です。勉強だけをしていた男の心の中を少し覗いてあげてください。

お話も短めです。私の頭の中を整理するために書きました。

今回のお話の主役はルカ。普段さくらに(詳しくは作者に)暴言ばっかり吐かれて可哀そうな立場にいるルカ。

このままじゃ完全に拗ねちゃうからここらで一回ルカのお話を交えてあげましょう。


ルカは最近悩んでいるのだ。そりゃそうだろ、ガリガリねちっこくて無神経男呼ばわりされてるんだから悩むだろ……ってことではなくて。何に悩んでいるか自分でさえ分からない悩みに陥っていたのだった。


あぁなんだこれは。また僕の心がチクっておかしな動きをしている。ここ最近僕は心臓がおかしい。IQ200もあるんだ。単なる心臓病じゃないことは今まで読んだ数々の文献が教えてくれてる。じゃぁなんだってこんなに心が苦しくならないといけないんだ!

もしかして僕は新種の病気にかかってしまったのか……?


事の起こりは2週間くらい前。僕は夜中喉の乾きで目が覚めた。わざわざ起きてお茶を飲むのはめんどくさかったけど口の中が乾いて気持ち悪かったから水を飲むために部屋を出た。飲み物は台所か居間に置いてあるからそこまで行こうと寝ぼけ眼で歩いてたら居間の電気がついて話し声がしてるのに気がついた。まぁさくらとマサキだったんだけど。あの2人ってしょっちゅう夜中に団欒とかしてるからまぁいつもの事だって感じで軽く流してた訳。まず初めにむかつく事に2人して話に夢中になってるから僕が台所に行って水を飲んでても全く気付かなかったんだ。まぁ別にいいけど、少し寂しいじゃん、そんな感じのことを考えながら部屋に戻ろうとした時僕の身体に異変が起きた。胸がチクリって痛んで嫌な気持ちでいっぱいになったんだ。僕の目線の先にはさくらの髪の毛を弄るマサキ。さくらなんか少し頬を赤くしてたんだ。2人をみてから僕の病気が始まった。

その日の晩どう頑張っもさっきの2人の光景が忘れられなくて色々考えてみた。まずこの日に何があったか。この日はさくらが催眠術にかけられた日。比較的色んなことがあったけど端的に言うとさくらと僕キスをした。あれをキスって呼ぶのか?って言われると思うけど唇と唇が触れたんだ。まちがいなくキス。ついさっきまでその存在ごと忘れてたのに、心が痛み始めてから【僕は今日キスをした】ってことで頭がいっぱいになった。同時にそんな大切なキスを寝ぼけ半分でしてちゃんと覚えてないってことに憤りを隠せなくなってしまった。

次の日から心のチクチクは増す一方。まずおかしいことにさくらのことばっかり見てしまう。意識してなくても目線がさくらを捉えてるんだ。さくらはなんでもよく食べてよく笑う子で今15歳だけど10歳ぐらいに見えたりもする。勉強する時は人一倍真剣に聞いてるし責任感も強い。素直だしなんでも自分のせいでって考える優しい女の子なんだ。……ほら、さくらのことをこんなにも良く思ってしまう。今一瞬僕が僕じゃなくなったような気がする。

あっそうだ。さくらのこと目で追うよになってから、さくらと目を合わせることが出来なくなった。見てるくせに目が合うと目線を避けてしまう。もう僕でさえ意味がわからないんだ。

1番困ってるのはさくらが他の人と一緒にいる時。まぁマサキなんだけど。さくらとマサキの距離は正直近い。それがモヤモヤして仕方ない。決定的なことが起こったのはさくらが悪夢を見たしょ日。僕はこの日も何となくさくらを眺めながらこの病気にどう戦おうか考えてた。目線の先のさくら、ウトウトしていって遂に眠りに落ちた。寝たはいいけどそのあと魘されてるみたいでだんだん僕も心配になってきてさくらに駆け寄って揺さぶり起こした。寝てたぁとかボヤいてたから何も無かったのかって安心しかけたその時。さくらが急に泣き出した。僕は目の前で泣き出したことにパニックになっちゃって背中を撫でたりしてあげれば良かったのに何も出来ずに。何も出来ずにただそんなさくらを見てた。僕が僕の無力さを痛感してる時マサキがきた。何も言わずそっとさくらを抱きしめた。さくらに何が起きたのか何も知らないくせに何でも受け入れてあげるってそんな顔して。

この時僕は生まれて初めてまるで刃物で心臓をギタギタにされたような苦痛を味わった。

この痛みは何なのだろう……?


こんな僕にも最近ささやかな楽しみがある。庭に植えたりんごの種。まだ芽も何も出てきてないけど。無心になって自然を愛でる時間。いつかこの木が大きくなってたくさんの赤々としたりんごを実らせその種をまた庭に撒く。長い長い時間をかけてこの世に再びりんごが広る頃、僕の傍にはきっとそのりんごをかじりながら笑うマサキ、モカ、ユメ、チヒロ、そして、さくらがいる。そんないつかを夢に見てるんだ。

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