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閉路  作者: 一稀美
15/31

平和なニュースでも聞きたいなぁと思う毎日ですね~。

閉路はゆっくりゆっくり進んでます。気長に読みくださいね~。

最近一週間に2冊くらい本を読めるので楽しいです。

……神様どうかなに事も起きませんように。起きませんように。起きませんように……。

なぁんて。そういう願いは大体聞き入られることなく、起こってほしくないことが起きちゃうんだよね。


あたしの超絶常識外れの告白(夢の中から取ってきたりんごを朝食のデザートとして皆に振舞うっていう……)の後、心を落ち着ける為に皆揃って柚子茶をすする。誰一人喋ることなく気まずい雰囲気のまま時間が過ぎる。

全然関係ない話なんだけど、お茶をすするときズルッとかスーとかって音をたてる人があたし苦手なの。ルカがやたらと音をたてる人だからそれされる度に眉をしかめちゃう。もっというと喉ごし。あれも苦手。ゴクゴクってならす意味あるのかしら。喉仏が動いてる感じゾッとしちゃう。こんな書き方したらあたしが凄くお行儀のいい子みたいに聞こえちゃうかもしれないからちょっと訂正させてもらうと、あたしは氷を噛む人です。

飲み物に氷を入れてたらとにかくそれ噛んじゃう。誰が近くにいてもガリガリボリボリ。これってちょっとお行儀が悪いよってママに何回も注意されてるんだど、なかなか直らない。というか直す気がないんだと思う。

っとまぁこんな究極にどうでもいいことを考えている中、息苦しい沈黙を破ったのはチヒロだった。


「でもさぁりんご普通においしかったね。」

さすがチヒロって感じのコメント。マサキが何の気なく湯呑を見ながら返事をする。

「うーん、まぁなぁ。普通にりんごだったよな~。久々に食べたけど。」

「うんうん。僕果物好きだから食べれたの嬉しかったな~。ねぇユメ、これから朝食のデザートに果物食べたい!」

「そうねぇ、さくら~毎朝全員分の果物とかって用意できる?」

「うん!果物なら裏のおじいちゃん家にいっぱい生ってるから。でも……美味しくなかったよあのりんご。ほとんど味しなかった気がする。」

おそるおそる言ってみる。

「ほんと?すぁごく美味しかった気がするけどなぁ」

モカが大きなおめめでこっちを見てくる。普通にしているだけで上目遣いになる所、本当に小悪魔チック。皆があたしのセリフに小首をかしげてるのが不思議。

「本当に。全然甘みが足りなかった! ここ(この世)にあるりんごの方が絶対甘くてジューシーだよ!」

「たしかに……それはあり得るかもしませんね。」

ルカだけが納得したような顔で小さく頷きながら喋る。例によって例のごとくあたしと視線を交わすことは避けてるけど。

「どういうこと?」

「いや、単純なことだよ。ここってきっと農薬とかないじゃん?」

「うん、たぶんない。聞いたことない。」

「だから環境に優しくてさ。農薬が悪い訳じゃないけど、なにも害を加えられてない土地が自然の恩恵を受けて肥えていったんじゃないかなって」

ルカの言葉を聞きながらマサキも納得したように言う。

「土地以外もここは空気も綺麗し適温だし十分な雨と日射もあるしな。」

「そう。食べ物に人為的に手を加えてないから本来の味が出せるんじゃないかな。」

ふ~~んそんなもんなのかなぁ。いくら文明が進んでても食べ物本来の味が美味しくないのは嫌だな~。

「そんな美味しいりんご食べてみたい!!」

チヒロの目がキラキラ子どもみたいに輝いてる。

「食べてみる。取ってこようか??」

「うん!!」

本当に子どもみたい。チヒロの可愛いところだよねぇ。


よいしょっと。りんごは~どこにあるかな~。この前おっちゃんがくれたのどっかに置いてあった気がするんだけどなぁ~。あたし的には台所にある箱の中にあった気がするんだけど。

ない。

あれれ、ママか誰か食べちゃったのかな~。結構たくさんあった気がしてたんだけどなぁ。おかしいなぁ。聞いてみよっと。

「ままぁ」

「どうしたの~」

「今ここにりんごない?」

「え、なんて?なに?」

「りんごりんご。ここに沢山あったじゃん?」

「え?」

え?って。あたし滑舌悪かったかな。

「りーんーご!!!」

「いや聞こえてるわよ。でもそんなもの知らないわよ?なにりんごって。」

え……何言ってるんだ?ボケたのかママ……

「何言ってるのよ~もう~冗談の趣味悪すぎじゃない?」

「さくらこそ何言ってるの。私は知らないわ。ほかの人に聞いて」

やだなぁ変な汗かいちゃうじゃん。


「おじちゃ~ん!りんごどこにあるか知ってる??」

「なんじゃそら」

……。

「おばちゃん!!りんごにある~~?」

「しらないねぇそれは。どういうものかね?」

……まってそんな……。

「おじいぃちゃぁん!!!!木からりんごとっていいぃぃ??」

「木からりんご?木にそんなもんなるのか?あるなら好きに取ってくれていいぞ~」

……やだよそんなのぉぉ。

走る。この前、昨日までりんごの木があった場所まで走る。きっとあるはず。なくちゃおかしい。

無くなるわけないのよ。絶対。神様。あるよね。ね!!!

走った。願いながら走った。裏のおじいちゃんの庭。庭っていってもそこそこ遠くにあるから。嫌な予感かき消すように不安をかき消すように言い聞かせながら走った。


何分こうして立ってるんだろうか。何も考えられなかった。あたしの脳には理解できない。

ううん、理解をしたくない。そんなことってあるはずがないから。

ないもん。あるはずなのに、ここにあったはずのりんごの木が跡形もない。ないのが普通のような佇まいで庭が構成されている。確実に木が合った場所はなにもない空間になってるんだけどそれさえ普通に見える。

その状態がこの空間に溶け込んで当たり前のようになってる。信じたくても信じざるを得ないように。


「お~遅かったね。おかえり!待ってた!!」

チヒロだけが待ちわびてた素振り。残りの4人はそっけなく顔だけあげて迎えてくれる。

「あれれ、残念~~~~~なかった???」

「チヒロ……なかったの。どこにも。」

「??また今度持ってきてほしいな!!」

「……ごめん。ごめんなさい。なかったの。…てんグズっ。どこにも、どこ探してもないのぉ。うっっぅぐじゅ。う」

「え、どうした?!」

「さくらちゃん??」

終いに泣き出しちゃったあたしにマサキとモカが駆け寄ってきて涙を拭ってくれる。

「ごめんね。うぅっ、りん、ごが、なくなったの。ヒッグッ、この世からぁ」

「さくら落ち着いて。大丈夫落ち着いて。」

マサキが頭をモカが背中を撫ぜる。涙は止まらないけど泣きじゃっくりが落ち着いていく感じがする。泣きながらでもちゃんと伝えないと。

「りんごがこの世からなくなったの。だれもりんごのことを知らないっていうの。」

「どういうこと?りんごという概念がこの世から消えたってことですか?」

チヒロが早口で言う。かなり焦っている証拠。

「多分そういうことだろ。昨日の晩のさくらの夢でりんごを持ってきたことが影響してるのかは断言できないけど、おそらく……そういう事だ。」

「さくらの夢の中での行動がこの世の中を変えたというのか?りんごがこの世からなかったものになったのか?!」

ルカが異様に。異様に青ざめてきて。くらくらぁって聞こえてきそうな素振りで眉間を押さえる。


は~あぁ。起こってほしくないことに限ってやっぱり起っちゃうのがこの世の中なんだよねぇ~。

は~あぁ。やっちゃった。


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