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閉路  作者: 一稀美
14/31

かみさまぁぁ

お久しぶりの投稿です。私事ですが2泊3日の温泉旅行に行ってきました。この時期に。でも特に体調崩すことなくすごく幸せなひとときになりました〜。バイキングを2日したから完全に太りました。いや〜困った困った。

りんご。りんご。りんご。

あたしは今寝てたはず。いや間違いなく寝てた。夢まで見てた。そして夢の中でりんごを掴んで。

拾った瞬間に夢から覚めた。両手でかたく握りしめられているものは。りんご。

なるほど……夢の中から持ってきたのか~なるほどなるほど。

ってなるかい!! そんな話あるかぁぁぁぁい!!!

ごほんっ。すみません、取り乱しております。落ち着いて考えてみるけど……もしだよ?もし夢の中からりんごを持ってきてしまったのだとすると……まぁ言えばこのりんごはこの世の物ではないはず。普通のりんごってジューシーでシャキシャキで清々しいじゃない。でもこれはすっごく硬いかもしれないしまったく味がしないのかもしれない。もしかしたら食べても食べても減らない魔法の食べ物なのかもしれない。いやまず食べられないのかもしれない。食べようとしたら消えちゃうとかもあり得る。

「こればっかりは食べてみるまで分からないな……うぅ勇気ないな」

はぁぁ。あたし、深いため息を一つ。寝ている間にこの世界以外の世界に行っちゃう。それだけでも恐ろしいことなのに、そんな恐ろしい世界から食べ物を持ってきちゃうなんて。なんかとんでもないことをしちゃった気がする。

でもまぁたかがりんご1個だしね。食べれそうになかったら、もしくは食べる気にならなかったらすてればいいだけよね。

あたし手に握っていたりんごを鼻に近づけて匂いを嗅いでみる。微かにりんご特有の爽やかな香りがした。どことなく食べれそうな気がして少し心が落ち着いた。

ゴソゴソ。隣で寝てるモカが微かに動く。(前の悪夢以降あたし達女子陣は3人1部屋で寝ることになって。でも布団は2組しかないからなんとなく一番お姉さん気質のユメが1つの布団使ってあたしとモカが同じ布団で寝てる。)

「さくらちゃん?どうしたの?」

「ううん、なんでもない。少し目が覚めちゃっただけ。おやすみ。」

「ん……おやすみぃ」

ホッ。モカまた寝始めたみたい。隣でスースー寝息を立てているのがわかる。もう2回目の悪夢だから騒ぐことでもないしモカの眠りを妨げちゃだめだよね。明日りんごのことと一緒に皆に話そっと。

そんなこと考えているとだんだん眠気に襲われてきた。これは2回目だから慣れてきているのかもしれないけど、さっきの経験のあとでもこんなに落ち着いていられるのはきっと皆が傍にいるから。何かあったらきっと助けてもらえるような気がするから。仲間ってそういうことかな。……ふぁぁぁ眠くなっれてたぁ。

あたしはこの後りんごを胸に抱きしめて寝た。


翌朝。もういっその事無くなっていたらいいのになぁと思ったりんごは何事もなく私の腕の中にあった。さてどうしようか。

まだ寝てる2人を起こさないようにそろっと部屋を出て台所にいく。子鳥のさえずりが聞こえてて気持ちいい。


まな板の上にりんごを置いて切るか悩むこと10分。


居間にはぞろぞろみんなが集まってきた。もうそんなに悩む時間が無いと思う。勇気を出してりんごに包丁の刃先を押し付ける。あ、硬くない。あ、りんごの香り。これ食べれるやつだわ。


ザク!!!!!!!!


「おはよ〜」

「おはよう。ユメ、今日の朝ごはんはなに?」

「んーどうしよっかな〜この前作った食パンまだ残ってるからそれと卵でフレンチトーストでも作ろっかな」

フレンチトースト。たしか甘いパンのことだよね。うふっ洋食か。


「いただきます!」

「昨日風すごかったな」

「えぇ~そう?全然気が付かなかったぁ」

「ユメの作るフレンチトーストは絶品だなぁ」

「ありがとう。チヒロは本当においしそうに食べるよね。」

さぁてどのタイミングで言おうかしら。なんだか言いにくいわ。

シャリ。う~ん、このりんごあんまり美味しくない。サッパリしすぎて味がそんなにしないわ。


「りんごかぁ珍しいねデザートなんて」

マサキの質問にユメが答える。どちらもりんごに噛り付きながら。

「あ、それね~さくらが切ってくれたんだよね。」

「ふ~ん珍しいじゃん。包丁なんて使えるんだね。」

マサキがニヤって意地悪な笑みを浮かべてる。ふんっ、包丁ぐらい使えるわよーだ。

あ、この流れっていうチャンスなんじゃ……

「あ、あのね」

「あ、そういや昨日さくらちゃん夜中起きてなかったぁ?」

うぅモカと被った~~~!あ、でもこれもチャンスだ。

「うん、そうなの。実はね昨日またあの夢を見たんだよね。」

皆の動きが止まる。と言っても朝食は終盤を迎えてて皆食べ終わってお茶を飲んでたり、りんごを噛んだりしてたんだけど。

「またこの前と同じところに行って帰ってきたんですか?」

ルカが嫌に緊張した顔で聞いてくる。多分この前のあたしのうなされ具合を知っているから心配してくれているんだろう。

「ううん。今回は違うところ。野菜とか食べ物がいっぱい並んでるお店みたいなところだった。キラキラしてた!」

「スーパーかしら?」

「多分ね。あ、ケガはしてない?大丈夫?」

マサキがお茶を飲みながら聞いてくる。さっきの意地悪な笑みをは正反対のすごく優しい顔。

「うん!大丈夫だった。でも今回分かったことがあるの。」

「といいますと?」

「モカったらそんな深刻な顔しないで。多分その世界の何かにあたしのからだの一部が触れたらこの世界に帰ってくれるっぽい。」

・・・・・・・・。皆ぽかんとした顔。

「えっと。この前は1歩歩きだそうと足を前に出して地面に着く瞬間に夢から醒めて。今回は〜りんごがあたしの元に転がってきたからそれを掴んだ瞬間に起きた。」

・・・・・・・・。皆の顔どんどん強ばっていく。

「で、起きたら案の定りんごを握りしめていたからやっぱり単なる夢じゃないんだと思う。でもりんごは異常なかったよ!切っても食べても普通のりんご。」

・・・・・・・・。皆真顔で青ざめ始める。

「つまり俺たちの食ったりんごは…」

「あたしの夢の中から持ってきたりんご。」


カシャン。りんごを刺してたフォークを握りしめていたチヒロが手を離す。お皿の上にフォークが落ちる音が辺りに響く。

「あ、あ、別にりんごは変じゃなかったよ?味見もしたし!大丈夫!ちゃんと食べれるものだった!」

あたしが必死で弁解をしてる間に5人が頭を抱え始める。悩んでもみんな食べたんだから〜もうどうしようもないじゃ〜ん。

「食べれたからみんなにもあげようと思って……ごめんなさい。たしかに気味が悪いよね」

マサキが大きなため息を一つついて諦めたような顔をしながら。

「まぁすごいびっくりしたけど別に死にそうでもないしな」

その顔に夢とルカが続く。

「うん、もう食べちゃったしね。一応ちゃんとりんごだったよね。」

「そうだな。俺たちが食べたことによって何も起きないといいけど。」


……神様。どうか何も起きませんように。

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