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閉路  作者: 一稀美
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失ったもの。得たもの。

催眠術の解き方を考えてたけど思い浮かばなくて若干2名犠牲になってもらいました。

私が女の子なので少しのときめきも混ぜていきたいなぁと思ってます。が、特に何も思い浮かびません。

皆がモカに注目する。催眠術を解くのは彼女しか出来ないって眼差しで。期待に応えるようにモカがもぬけの殻になったあたしに近付いてきて声をかける。

「さくらちゃん…さくらちゃん〜聞こえる?催眠解くよ。1.2.3で解くからね。いーちにーさん!」

モカがあたしの肩を強く揺すぶる。


・・・・・・・・・


規則正しい呼吸と共に胸は動くけど、肝心の意識はまだ眠りの沼から起き上がってこない。皆激しく動揺して口々に喋る。

「どうしよう……こんなことしてる間にもほかの魂に乗っ取られちゃうわ」

「おいモカ! 緊急時の解除方法とかねぇのかよ!」

「触覚と聴覚刺激したら解けるはずなんだけど……私たちの声が眠った精神に届いたら解けるって習ったもの……」

「ちょっとかわいそうだけどブッてみる??」

「やめてチヒロ。女の子を叩くだなんてあり得ないわ。」

「ご、ごめん」

「さくらちゃん原始人にみたいなもんだもん。きっと痛みに強いからそんなんじゃだめ。もっと。さくらちゃん自体がびっくりするようなことが必要なのよぉ。」

「もっともっと衝撃的なこと。」

「さくらがびっくりするような刺激か……」

マサキがごくって唾を飲み込む。群がる皆を押しのけてあたしの顔を両手で包み込む。

「ちょっとマサキ! な、なにする気なの! 」

ユメがマサキの腕を引っ張る。

「そんな!それはだめよ!さくらきっと憧れ抱いてるのに!こんなタイミングて終わるなんて!」

「だからだよ!それくらいの刺激が必要なんだよ!!」

「だからってそんな! さくらが可哀そうすぎるわ!」

「おいお前!失礼すぎんだろ!」

ユメとマサキがものすごい勢いで怒鳴りあう。美男美女が睨み合うその迫力と言ったら。当然残りの2人縮こまっちゃった。


その時。部屋の隅っこでゴソっと何かが動いた。ゴソゴソっと確かに動いているけどあまりに物音がしないから誰もそれに気づかない。


マサキとユメの言い争いはどんどんエスカレートしていく。2人を止めようとモカとチヒロがあたふたあたふた。


部屋の隅っこで動いていた物体。ムクっと起き上がって一目散にあたしめがけて歩いてくる。あたしとそれの距離がどんどん縮まるのに誰も気付かない。


不意にこっちを見たモカ。その視線につられてみんなこっちを向く。


「あっ」

状況を把握したみんな声を出すや否や一目散にあたしを守ろうとする。するんだけど。


ちゅ〜〜。


・・・・・・・・・・・・・・・。

遅かった。物体それはつまりルカ。幽霊が出てきた瞬間に気絶したルカ。寝ぼけた頭でなんとか理解したことはあたしにキスをしなくては!!だったのだ。


こんな! こんな衝撃的で絶望的でショッキングな刺激を与えられたあたし。当たり前のように意識が呼び起こされる。目を開ける前に感じる唇の温もり。訳が分からず目を開けるとルカが居た。完全に寝ぼけた顔をしたルカはが欠伸をしながら目の前に居た。


「い、いやァァァァァァァァァァァ」

ゴンっ!

咄嗟の頭突き。ルカの頭に命中。可哀想なことにルカは本日2回目の気絶をすることになる。


そして、さよなら。触れたくないけどさよなら。私のファーストキス。


モカとユメに宥められてやっと落ち着きを取り戻してきたあたし。落ち着く同時に次第に訪れてくるとてつもないショック。催眠術にかかってから一連の流れは一応聞いたんだけど。あたしの身体に幽霊が憑いたって言うびっくりすることも聞いたんだけど。一瞬にして文明が消えたっていう興味深い話も聞いたんだけど。どうしてもショックが大きすぎて、イマイチ頭に入ってこない。だってあたしファーストキスが……初めてだったのにそんな。寝てる間に。しかもルカに。ぜんっぜんタイプでもないのに。しかもさっき気絶から目を覚ましたルカ。自分がしたことを覚えてないって。そんなのって……。あぁショックだ。ショックだ。妙に唇の柔らかい感触を覚えていることさえショックだ。


まぁ。まぁ動物とか悪霊に乗っ取られるよりマシだったと思おう。(マシというよりすごくありがたい結果だと作者は思いますけどねぇ)


その日の晩。催眠術によって魂が出入りしてた分あたしの身体は気だるがった。何もやる気出なかったし何をするのもめんどくさかった。モカ曰く、魂を受け入れた身体はそうなるのが普通らしい。それに今日はみんな敢えてあたしに構わずにそっとしておいてくれてるらしい。午後10時の居間はあたし1人になった。

1人の居間で今日の出来事、あとから聞いた事を反芻してみる。謎に迫る的確な情報は得られなかったけど多少の手がかりはあったみたいだからあたしの犠牲も無意味じゃなかったんだよねって自分に言い聞かせておくことにした。

その時誰かが部屋から出てきた。

「まだ眠くなくてね」

マサキ。あたしマサキとあたしの分、2つの湯のみにゆず茶を入れてあげる。一口飲んで渋そうに眉間にシワを寄せてる顔を見ながらあたしも一口飲む。

「今日はお疲れ様。」

「マサキこそお疲れ様でした。幽霊さんの相手もお疲れ様。」

とびきりの微笑。大好きな微笑。マサキの顔をマジマジと見つめる。あたしは今日少しセンチメンタルになってるなってるからこの笑顔で癒される権利くらいあるんだ!!

「なに?」

「いやいや〜」

「なんだよぉ〜」

えへへ。マサキが気を使ってくれてるのが分かる。その優しさが嬉しかった。時間を共有できることが嬉しかった。ショックなこともあったけど今こうやってマサキと一緒に過ごしてたらどうでもないようなことに感じる。


今回の催眠術で得れたこと。何より大きかったことは。

あたしの気持ちかもしれなかった。

本当はずっと前から知ってたけど知らないフリしてたあたしの気持ち。

マサキのことが好き。


まぁ不釣り合いですけど。


「さくら?質問なんだけどさ」

「なぁに?」

急に意地悪そうな顔のマサキ。

「ルカの唇は柔らかいの?」

キッ!睨みつけてやるとまたクシャッとした笑顔のマサキに戻った。嫌な話題のはずだけどなぜか嫌な気持ちじゃなかった。


そんなこんなで濃い一日は終わったのだった。

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