表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
或る文筆業者の徒然日記  作者: キモトマサキ
3/3

冬時雨

ドリップ式コーヒーの粉が、湯を注いだ途端に派手に跳ねてカップに落ちた。よくやる失敗だった。我慢して、啜る。香りと味に違いはない。そろそろ胃が荒れるだろう。仕事が佳境でロクなものを食べていない。あれから、隣の部屋に三毛は何度か通って来ていたようだか、以前の住人が戻らないまま、別の住人に替わったようだ。どうやら、僕は厄介な物体に餌付けしてしまったらしい。仕事が一段落する度に、三毛は僕の部屋に通って来るようなった。普段は、どこで何をしているかも知らない得体の知れない物体だ。けれども思わず、黙って部屋に上げて食事を与えてしまう。これが本能というものか。思春期の男子でもあるまいし。成人男性の欲望は何でできているのであろうか。女子の成分が砂糖でできているのではないことは知っている。鮭に、かぶりついた三毛は正に獣だ。その夜の味噌汁の具は、豆腐とわかめだった。メインディッシュはアルミホイルで包み焼き。生鮭の切り身、その上に千切りの人参、シイタケ、さらにエリンギとしめじをのせて、塩胡椒とマーガリン。料理酒を少しだけ。いつも思うことだが、ホイルを開けると汁でたっぷり満たされているのは、どういう訳か。一切水分は使っていないというのに。仕上げにレモンを上から搾る。三毛は最後のなぞの出汁まで、きれいに平らげた。上手い具合に骨もなく、我ながら満足のいく食事であった。その後のうやむやまで反芻していて、腹が鳴る。牛乳を足せば、多少はましかと冷蔵庫を開けて、限りなく空っぽに近いことを思い出す。冷蔵庫だけではない。僕の本能は現在進行形、色々と飢えてしまっている。一両日中に、なんとしても仕事を終えねばなるまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ