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或る文筆業者の徒然日記  作者: キモトマサキ
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篠突く雨

ひどい雨嵐の寒い夜だった。アパート扉の脇で、三毛は頭から濡れ鼠になっていた。三毛なのに。しばらく部屋に籠りっぱなしで、つい先刻、食料調達しに外出して、戻ってきた僕もびしょ濡れに近い。風呂に湯を張りながら、買ってきたばかりの牛乳を温めて出してやる。三毛はカップに顔を突っ込んだ。よほど腹が減っていたのか、寒かったのか。どちらにしても屈託がなく、和む。恐らく、僕の隣の部屋の住人を訪ねてきたのだろうが、ここ数日戻ってきていないようだった。壁が薄いから、もし隣室で物音がすれば気がつくはずだ。何となく見覚えがある気がするから、今まで何度か通ってきていたのだろう。濡れた毛を乾いたタオルで頭から拭いてやる。三毛は目を細めて、されるがままだ。目の前の牛乳の方がきっと大事なのだ。隣の住人はどうしたのだろうか。今夜も戻ってくる気配がないから、晩飯も用意してやる必要がありそうだった。仕事が一段落したところで良かった。仕事中の僕の食生活はひどいものなのだ。今晩は根菜の煮物に、豆苗と卵のかき玉汁。思い切ってレタスも購入したので、ブロッコリーを湯がいてそのままサラダ。料理をしている間に、風呂に入れてやって一段落。晩飯を出してやると、三毛は大人しく口をつける。どうやら口にあったようだと安心して、僕の分に正座で向かい合う。久々の食事を満喫して気がつくと、三毛は畳に丸くなって眠っていた。風邪をひくと一式しかない布団に抱き下ろして、そっと目元を拭ってやる。自然なものかそうでないものなのかわからない、一粒流れた涙。僕は、食卓を片づけてから、畳で眠った。

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