亡国の王国
「ここが王国だった場所ってことは、さっき話してた王国はもうないってことなのか?……」
リリーの発言に困惑を隠せないまま俺はそう呟くように質問をした。
「そうだよ。ここはかつての王国……ローレンシア王国があった場所…今は帝国領だけどね。」
やはり強大な軍事力を帝国は外に向けたのか……
「帝国は5ヶ月前に突如王国に宣戦布告、圧倒的物量と、何より、アンタゴニストの力により王国は蹂躙されたんだ。」
「あたしとリリーはその時、やつらに捕まって奴隷にされて命からがらなんとか逃げて来たのよ」
どうやら二人は壮絶な逃走劇の最中だったのだ。
それもそうだろう……でもなければあんなオークに襲われるはずがない
「あんまり当時のことは話したくないんだけど、簡単に言うとこんなボロ切れを着て流民のふりをして公国を目指してたんだ。
そこでオークに襲われて………あとはマコトに救ってもらったんだ。」
そんな経緯があったなんて……
ということは二人は公国に行きたいんだろうか?
「それじゃあ、やっぱりこれから君達は公国に向かうのかな?」
「そんな感じね」
…………俺はまだこの世界のことについて何も知らないひよっこだ………
いくら自分がアゴニストでも知恵は武器になる
このままこの二人について行って色々教えてもらったほうがいいのでは………
正直こんな森の中で一人で過ごしていて人肌が恋しかったのもある………
この二人は優しそうだからこんな俺でももしかしたら助けてくれるかもしれない
「それでお願いがあるんだ……君達の公国行きに協力させてもらえないだろうか?
まだまだ色々教わりたいんだ……
だめかな………?」
……………
……………
…………………
……………………
沈黙が怖い………….
二人は目を合わせている
………………
……………
「ええ、いいわよ。むしろこっちからお願いしようとしていたの……改めてよろしくねマコト。」
「よろしくマコト」
ああ良かったどうやらこの二人も心細かったようだ………
「ああ、二人ともよろしく。」
その時だった
会話に夢中になっていて
"やつら"が近づいて来たということに気づかなかったんだ………




