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椎香ちゃんへ、対策が必要です

入寮してから数日たった。

他の寮生は一時帰宅をしているみたいで、四聖獣の他のメンバーは勿論だけど他の寮生はいないらしい。


「あーかつーきさん!!あーそびーましょ!」


「真白くん、何をして遊びましょうか?」


期間外なのに受け入れてくれた暁月さんはいい人だ。

二人分の家事をこなしている最中に声を掛けても、こうやって振り返ってくれるし。

料理は美味いし話も合うし。

気づけばこの呼び方!


「合コン!!」


「女性の知り合いなんて居ませんから!!」


そうそう、暁月さんは天涯孤独らしい。

孤児院育ちらしくて、僕を本物の弟のように可愛がってくれる。


「や~、でも彼女はほしいですね~」


「出会いはないの?」


「正直な所、ホモばっかですよ」


げぇ、ホモばっか…?

つい顔をしかめてしまう。


「真白くんは四聖獣候補なんですよね?」


「うん、白虎だよ!」


この寮の四聖獣システムについてよく知らない。

でも、家庭のお金が絡んでるのは確かだと思う。

お父様に聞いても教えてくれないしなぁ。

お母様は絶対に理解できてない。なんせ馬鹿だし。


「…それなら、用心したほうがいいですよ」


「…へ?」


暁月さんは僕を抱き上げてソファに座らせた。

そしてその横に暁月さんも座る。


「玄武の亀谷坊ちゃまは姫狙いです。真白くんが来るのを嫌がってましたし」


意味が理解できなくて首を傾げる。

姫花ちゃんを狙うライバルが来るのを嫌がるのはわかるけど、まだ時期じゃないよね?

それとも既に姫花ちゃんとは出会ってる?

それか、亀谷くんも転生者?


「わかり易く言えば、亀谷坊ちゃまはチヤホヤされたいんですよ。自分が特別扱いされている現状が壊されたくないんです」


なるほど、そういうことか。


「ネトゲでよくいるお姫様ってこと?亀谷くんはネカマでお姫様ってこと?」


ぽんっと手を叩いて言えば暁月さんはぐっと親指を突き立てる。


「グッジョブ!すぐ泣くので注意をしてくださいね。嘘泣きのせいで学園を追い出された生徒さんが多いので忠告しておきます」


「…それってさ、暁月さんと仲が良い人ばっかりなんでしょ?」


そう言えば、暁月さんはため息を付いて頷いた。


「そうなんですよ~。天真爛漫だったり天然だったり性格のいい子は大体亀谷坊ちゃまに嫌われるので…」


そして、ふと考えた。


僕には亀谷くんに対して強い切り札があるんだよね~。


「お父様に報告したほうがいい?お父様はね、亀谷くんの会社の大株主なんだよ」


「それは手を打たれる前に報告するべきですよ!!」


それにしても、この話が本当だとすると原作のゲームとは状況が変わるなぁ。

僕城虎真白が女じゃなく男として産まれた時点で変わってるのかもしれない。


ってことは、僕的バッドエンドの『四聖獣とは付き合えない』程度で終わるエンドとは別になる可能性もあるってことだよね?

例えば亀谷に陥れられて、僕のお父様が亀谷くんに言い含められて僕の立場を乗っ取るとかも可能かも。


だって、チヤホヤされたいなら僕の立場が一番チヤホヤされやすいし。


自分は攻略キャラになるから安全だ、と思ってたけど安全じゃない。

どんな攻略ストーリーになるかも不明だから、対策も取れない。


「例えばの話だよ?」


「はい?」


「亀谷くんが僕の立場になりたいって思って、お父様を言い含めて僕の家族になって家を乗っ取るって出来る?」


そう言うと暁月さんは少し唸った。


「亀谷さんは、あくまでも恋愛方面でチヤホヤされたいだけですが、状況によってはありえるの…でしょうか?そんなに絡んでないのでわからないです。でも、対策は必要でしょう」


家族を奪われるのだけは阻止したい。


「でも、ありえない話ではありませんよ。亀谷さんは城虎家の旦那様から可愛がられてるアピールが凄いんです」


それは、初耳だ。


「お父様が四聖獣の方と会う時は大体僕の家で会うけど亀谷くん自体は居なかったよ?」


そもそも亀谷のおじさんから息子の話が出ることはない。

僕の将来が楽しみだ~って僕中心の話題になってるし。


「話題になることは?」


「全く無いかなぁ。僕が居ない所で話してるとか?」


僕は首をかしげる。


「それじゃ、こうしましょう。亀谷さんにカマをかけてみるんです。例えば奥様の髪型が変わった、とか」


「アフロになった」


「無理がありますよ!!奥様はロングヘアーでしょう?」


「うん。僕とお揃いだよ~」


「それを短く切った、と言えばいいんですよ」


「うん、わかった。頑張るね!」


にっと笑えば暁月さんが頭を撫でてくれた。


「はい!何があっても絶対お守りしますから!」


ぐっと親指を突き立てる暁月さん。

暁月さんの親指に合わせるように僕も突き立てる。


「そうと決まれば旦那様に報告しましょう!亀谷様坊ちゃま達は本日の夕方にお戻りになられますので」


「え、皆一緒なんだ?」


「はい、そうですね。あの三人は家族ぐるみの付き合いなので亀谷様の主張があっても可笑しくないです」


背中に嫌な汗が流れる。


僕の両親は僕を愛してくれてるけど、優しい人だから亀谷くんを僕の弟にするくらいはやりそうだなぁ。

それからずっと両親の奪い合いなんて考えたくない。


慌てて僕はお父様に電話をかけた。


すると、たったのワンコールで電話がつながる。


『真白ー!!メールをしても返事をしてくれないじゃないか!!もういいから帰ってきなさい!!』


いつもの調子のお父様の声を聞いて少し安心してしまう。


「お父様、また離れてから一週間も立ってませんよ?」


『電話は毎日しなさい、メールは一時間に一回と教えただろう?』


「うん、守るから…。それよりさ、話があるんだけど」


『話してみなさい』


「亀谷くんと最近会った?」


『黒兎くんがどうかしたかい?』


名前呼びな所に、心臓がびくっと飛び跳ねる。


「えと、ね…。その、亀谷くんが学校の人を辞めさせたって黒い噂があって、次のターゲットが僕っていう…」


『…真白を、ねぇ…………』


その後の間が怖い。

もう、遅かったの…?


嫌な汗が流れると僕の肩に手が置かれる。

隣を見れば、暁月さんが心配そうに笑っていた。


『これだけは覚えておいてほしい。何があっても黒兎くんは君の味方だからね。もちろん、父さん達もさ』


僕が知るお父様の声の中で最も機械的な声だった。

ただ諭すような、感情の籠もってない声色。


「どういうこと?」


『話せるのはこれだけだ。黒兎くんと仲良くしなさい』


それだけ言われて電話は途切れる。


静かな空気が流れ、僕の震える手を暁月さんが握ってくれた。


「ど、どうって?」


「亀谷くんと、仲良くしなさい…」


「…大丈夫!!旦那様のことを信じましょう!!」


無理をした明るい暁月さんの声が周りに響いた。

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