『世界最弱で勇者? 何の冗談ですか?』
ひとまず投下します。隙を見つけて書いてはいるけど、進捗が遅いのは是非もないよネ!
ごめんなさい、許して下さい、何でもしますから!(何でもするとは言ってない)
わいわいと賑わう街を歩き、ギルドに着いた。さっき窓から見たドーム型の建物がギルドらしい。なんでも、ギルドにはその人のパラメータを見る魔道具があるのだとか。それで私のパラメータを見れば私が嘘を付いてないことも確定になるらしい。
「いらっしゃいませ! ギルド本部アルマ支部へようこそ……ってニアさんじゃないですか。今日はどのようなご用件で………」
箒を持った短めのポニーテールの少女が、おやおやおや~? と私の方を見る。
「どうしたんですか、この子? はっ、さては隠しg……痛ったぁ!?」
「なわけないでしょ。行き倒れてたのよ……いや、行き溺れてたのが正しい……?」
少女が言い終わる前にニアの手が頭を叩いていた。結構いい音だった。
っていうか、そこは重要じゃないと思うよ、ニア。
「行き倒れですか。今どき珍しいですね。行き倒れたら普通は魔物のエサになるのに」
かなり怖いことをサラリと言われた気がする。ニアに見付かるのが少しでも遅かったら私は魔物のエサになってたって事か……いや、どっちにしろ溺死してたかな。
「運がいいのかも。それより、パラメータを測りたいの。気になることもあるし」
「ふむふむ、まあそうですね~。それじゃ、こちらにどうぞ!」
少女が先導していく後を付いていく。受付の人に一声かけると、奥の部屋に案内された。広い部屋の真ん中に机が一つ。机の上には石版のような物。部屋の端には大量の丸まった紙が置かれている。
「ささ、それじゃあパパッと測っちゃいましょう。とりあえずフードとって貰ってもいいかな?」
そうだった、なぜかニアにフード付きのマントを着せられたんだった。目立ちすぎるから着ておけって言ってたっけ。
言われた通りにフードをとって顔を見せる。あれ……? 固まってる。おーい。
「ハッ! ニアさん、何ですかこの可愛い子!? 超美少女なんですけど!?」
目の前で軽く手を振ると、少女がもの凄い剣幕でニアに詰め寄る。
「落ち着きなさい、フェイ」
「落ち着いてられますかっ! ストライクゾーンど真ん中ですよ! 可愛い!!」
ちょっと引くぐらい全力だった。こっち見て息を荒くしてるし、身の危険を感じるんですけど……。
「いいから、パラメータを測ってくれない? こっちもこっちで驚くことになると思うし」
「くぅ……わかりました……でも後で色々聞かせて貰いますからね!」
そう言ってフェイと呼ばれた少女がこちらに向き直る。
「よし、それじゃちょっと失礼して……チクッとするよ」
さっきと違って落ち着いた態度で私の手を取る。エプロンの前ポケットから細い針を取り出して、それを私の人差し指に軽く刺した。チクッとした感覚が走って、思わず体がビクリと反応する。
「ご、ごめんね、痛かったかな?」
「ううん、大丈夫……です」
思わずタメ口をききそうになって、咄嗟に付け加える。ちょっと反応しただけで心配しすぎでは……。
「よかった……それじゃ、血を下にするように指をここに置いて?」
何やら複雑な模様やらよくわからない文字やらが描かれている石板の中心、少し窪んだ部分に血の球を押し付ける。
すると突然、石板に光が奔ったと思ったら文字列が空中に浮かんで見える。
「ほいさ」
それをフェイさん(仮称)がいつの間にか取ってきていた紙で掻っさらうように動かした。
すると、文字列は空中から消えて変わりに紙にその文字列が写し取られていた。
そこにはこんなことが書かれていた。
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名前:シラクモ•ミナ 15歳
パラメーター
生命力:12→F
体力:-42→Z
筋力:-20→Z
耐久力:-35→Z
敏捷力:103→E
魔力:16→F
幸運:55→C
特殊能力
魔力収束、神の使徒
総合評価:F
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「? なにこれ?」
「「これはひどい……」」
「え? なにどうしたの?」
「ニアさん、これ確かに凄いですね……非戦闘員の村人Aとかのがぜんぜん強いですよ……私、Zとか初めて見ましたよ……」
「これは私も予想外だった……でも神の使徒なのは確定か……」
「うわ、ほんとですね!? パラメーターに目が行ってて気付きませんでしたよ……うーん、魔力収束なんて珍しくて貴重な能力なのに本人のキャパシティが低いせいで特に意味ありませんね」
「え、えっ?」
私だけ状況が理解できてないんだけど……私、ディスられてる?
「これはまさに……」
「これはまさしく……」
「「世界最弱」」
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狂った惨状に絶望した私です、どうも……。なんなのさ……そりゃ、フルーガが調整できてないって言ってたし、多少の覚悟はしてたよ? でも世界最弱って……あんまりだぁ……。
「ま、まあ、元気出して? だ、大丈夫だよ、なんとかなるって……たぶん(ボソリ)」
「ニア、たぶんって聞こえてるからね? そう言うのが一番傷付くんだよ?」
「あはは……」
ローザは乾いた笑い声を上げるだけだった。
はぁ、とため息をつきつつ側に置かれたパラメータシート(と言うらしい)を机に頬をこすり付けつつ見る。
あの後フェイさん(本名はフェイリール•ニクスと言うらしい)に色々と説明を受けた。
まず、パラメータの見方。生命力、体力、筋力、耐久力、敏捷力は0を基準とされている。基準と言うのは、0が人として普通に持ってるはずの能力値を、表しているらしい。詰まるところ、一般人は0より上に表示されるはずなのである。そして、私はマイナスが付いている。つまり、人として普通に持ってるはずの能力値にすら届いてないと言う事だ。なぜか敏捷力は一般人よりもあるみたいだけど、体力がないで実際ほぼ意味無い。補足すると、いわゆるスタミナ的な体力が『体力』と表示され、いわゆるHP的な体力が『生命力』と表示される。
魔力と幸運は基準は特になく、魔力が豊富にあるのなら高い数値になるし、なければ低い数値になる。これは幸運も同様。ただし、魔力に関しては0の人も珍しくないのだとか。
次に特殊能力だけど、これはまんま特殊能力。その人個人が持っている能力で、効果は様々。私の『魔力収束』は様々な魔力を取り込み、自らの魔力として扱う珍しい能力。ただし、上限が使用者に依存するため、私が使ってもやはり意味がない。『神の使徒』は神の加護を受ける、と言うざっくりとしたもの。フルーガの言っていった質量無視の収納はここに該当するらしい。
いまだかつて、ここまでパラメータが貧弱で、役に立たない能力を持った人間がいただろうか? いや、いない。反語。こんなのって、あんまりだぁ……(二回目) これ、私どうなるの……?
もう、どうでもよくなってきたのは言うまでもなかった。
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