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奪われた時計


俺と慎也はしばらくの間、時計を利用し小銭を稼ぎ悠々自適に暮らした。

贅の限りを尽くした遊びや世界の様々な場所に旅行。

20年ほど金稼ぎもそこそこに過去に何度も戻りながら世界を堪能した。

まるで世界がわが物かのように感じた。


時には経験した未来の記憶で人を助けたり、金に物を言わせた少し悪い遊びした。

しかし、生活や未来に余裕が出来たせいか犯罪のようなことはしなかった。

そのうちだんだん飽きてきて社会的な地位も手に入れるようになっていった。

最初は株や投資な簡単なもので稼いでいたが、経験も豊富になり、

その他の事業や開発業にも手を出していった。

失敗すれば戻ればいいしという楽観的な経営方針だったが、

新しく出来た友人やビジネスパートナーとの交友も楽しくなって行き、

頻繁に過去に行かなくなった。


俺はおそらく100年くらいの時間を経験しているはずだ。

言語も英語、フランス語、アラビア語、中国語が話せる。

アラビア語には相当苦労したが、投資等の仕事に見事に役立つので覚えて損はなかった。

慎也はめんどくさがりと言語才能のなさで英語くらいしか出来ない。

出来るだけ表に顔が売れないように努力し、事業を展開していった結果

今は海外に支店を構える巨大企業グループの影のトップだ。

IT関連、投資、研究所など多数の分野がある

業務は基本部下や他の役員に任せている。

俺は知っているが、俺のことを知らない人も多い。

日本本社の役員をしている女性と付き合っているが、結婚までは考えていない。

個人資産は400億を超えており、グループの総資産は3000億ほどあるはず。

趣味で始めた合気道と空手も結構な腕前になった。

その後、過去に戻ってしまったため正式な段位はない。

あと、慎也が教えてくれたが3回ほど死んだらしい。

危険なスポーツや挑戦は控えるようにした。


だが慎也も一回死んでる。小型セスナ―の無謀な飛行でアメリカのアーカンソー州の大地に突っ込んだらしい。

慎也は基本的に成金趣味でお金こそ好きだが根がいいやつだって本当によくわかった。

彼は日本の投資会社の親株主。ヒラノホールディングスという会社だ。女好きで遊びまくっていたが、現在は結局、高校の時からの彼女、恵美と同棲。お金使いは荒いが俺と同じくらいの資産はあるはず。。。


彼がどれくらいの時間を経験しているかは実際本人しかわからない。

彼が一人で過去に戻っても俺は気づかないのだから。


時計は現在、慎也名義の不動産ビルに置き、念を入れ俺たち二人しか知らない暗証番号の金庫に入れてある。時計の横には最後に戻った時間を暗号形式で残し、それよりも過去には基本行かないというルールにした。お互いの貴重な経験を帳消しにする無駄なループを避けるためだ。長い期間戻る時は一緒にということにしてる。

滅多にないが何か忘れたいことがある時はお互いに頼むことにしてある。


巻き戻しのルールとして短針と長針を同時に回すと1時間が1か月に相当するとわかった。

戻れる時間も時計を拾う分前までだったら長さに関係なく行ける。


現在は経営の仕事も落ち着き、特に過去に戻ったりすることもない。

たまに訪れる停滞期だ。

新しく何かを習うのもいいが、だらけきった毎日を無駄に過ごしてる。


2017年5月18日09:23


そしてここ100年で最大の事件が起きた。

緊急用の着信音がなり電話に出ると、

慎也が何者かに自宅の駐車場で刺殺されたというのだ。

急いで車で掛け時計を補完しているビルに行くとパトカーが止まってた。

それと同時に恵美から電話があり今病院にいて

慎也が亡くなったというものだった。


すごく嫌な予感がした。

もし時計が盗まれていたら細心の注意を払って行動しなければならない。

恵美には悪いが病院にはいけない。

車で慎也のビルをそのまま通り過ぎた。


駐車場のセキュリティーなどから考えて計画的な犯行の可能性が高い。

普段から万が一時計が奪われた時のために考えてあった行動を開始しなければ。

俺が普段行くような場所はもう行けない。

もし時計が奪われていてさらに俺のこともバレているとすれば、

待ち伏せの可能性があり、防げない。


とりあえず、時計が盗まれてないかどうかの確認だ。

慎也のビルの一部は俺の会社がレンタルしている。

それを直接知るものは俺が最も信頼できる津田だけだ。

津田は小野グループ本社の俺専属の秘書課の室長で、

個人的な交友もある友人だ。

あと、俺と慎也の親交が深いということも知っている。


すぐに津田に連絡を取った。

津田からの内容で今わかっているのは

昨夜慎也のオフィスに強盗が入り部屋は荒らされ、

金庫が空になっていたというものだった。

さらに取られたものなど詳細を大至急調べるように頼んだ。


最悪の事態が起きている。

俺は、車でそのまま空港に向かった。


2017年5月18日10:23


空港に着き、

ニューオーリンズ行きの飛行機のファーストクラスチケットを取った。


俺が生きているということを考えると、

犯人が時計を持っていて使えるとしても、

俺には気づいていないか、物理的にまだ俺にたどり着けてないということだ。


もし、気づいていないのだとしたら、

とにかく気づかれないようにしなければいけない。

犯人が時計を使っていたらもうすでにどれほどの経験と情報を

持っているかはわからない。


飛行機に乗り込む直前に津田から電話があり、

オフィスのドアはこじ開けられ、室内は半分ほど荒らされていた。

金庫はこじ開けるために着いた傷跡があったが、

実際は暗証番号を入力されて開けられていたというものだった。



津田にさらに詳細を慎重に調べるようにと、

そして電話やメールで連絡をしたら

すぐに動ける準備をして置くように言い残し電話を切った。

情報を整理ことにした。


金庫の暗証番号を知っていたということは、

犯人はほぼ間違いなく時計が使えるということだ。

なぜならあの暗証番号は俺と慎也以外は絶対に知らない。

恵美も知っていた可能性はあるが、

慎也が殺されたということは、犯人は慎也から手に入れたはず。

恵美が犯人である可能性は理論的にはあるが、

長年知っている恵美がそういう人ではないのはわかる。


それよりも、こじ開けようとした痕があるということは、

犯人が暗証番号を知るまでこじ開けようとしていたことを意味する。


俺が時計を拾った時間の7分前まで戻れるように、

犯人も時計に初めて触った時より少し前まで戻れた可能性がある。

つまりそれ以前の過去には行けなったということでもある。

だから、こじ開けようとした痕がある説明がつく。

一回目は実際に道具でこじ開け時計の存在を知り、

それを使い慎也から暗証番号を聞き出した後、

最大まで過去に戻ってきたことになる。


そうなると犯人はできる限り

足跡や証拠を消したと考えた方がいいだろう。

準備の時間はいくらでもあるし、失敗すればまたチャレンジすればいい。

おそらく単独犯行の可能性が高い。


犯人が俺にまだ気づいていなければ、

時計を奪い返せるチャンスはまだある。


現場に残ってる証拠からではおそらく犯人にたどり着くのは無理だろう。

時間がかかりすぎるし、時間が経つにつれ犯人の行動範囲が無限大に増え

時計を奪い返すのが困難になっていく。


警察が押収した証拠で足がつけば

過去に戻ってもみ消しにかかるだろうから、

むしろ、俺だけが知る情報で探したほうがいいはず。


2017年5月18日は

過去に3回経験している。

慎也と俺が一年ほど巻き戻したのが最後のはず。

その時の変化で生じたバタフライエフェクトで犯人は犯行に走ったことになる。

プライベートのことは調べるのに時間がかかるし、特定が難しい。

ビジネス面で一年前と大きく違うのは、慎也が中規模の会社を3つ4つほど買収していたのを覚えてる。まずその線から調べた方がいいだろう。


飛行機に乗り込んだ後、

津田にこの一年間の慎也のビジネスでの大きな動き、

そして買収した会社の詳細な情報などを順次送るように頼んだ。


慎也が亡くなったことで会社の運営方針などがいろいろ変わり動きが激しくなるだろう。

今なら怪しまれないでいろいろ彼が買収した会社のリサーチも出来るはずだ。



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