生きるために
余り進展は無いですね。
一体どれだけの時間が経っただろう。
『解、三日はここにいます。』
お腹減った。
ここはどこ?
『解、三日は何も食べていなければお腹は空きます。
ここは洞窟のようです。
生物反応はありません。』
そうか、ここは安全なのか。
『解、そうとも言えません。
いずれここを住処にしようとするものが来ます。』
そうか、なら俺は死ぬのか?
それは嫌だな。
生きるためにはどうすればいい?
強くなる?
レベル差の理不尽は前に味わっただろ。
もう嫌だ。
『解、今のところだと戦わないと生きていけません。』
分かっている。
そんなこと俺が一番分かっている。
けど、どうするんだよ。
帰りたいよ。
どうしてこうなったんだよ。
俺が何したんだよ。
なんでこんな目に合うんだよ。
『解、役割だからです。』
やられることがか?
俺に何を望んでいるんだよ。
俺はもう嫌だ。
『否定、神は言いました。
ここで死ぬようならそれだけの存在だと。』
死ぬか…。
ふと、俺は正気の戻る。
今の自分を見る。
惨めにボロボロの姿で倒れ伏せている。
死ぬ、その認識が今現在の正気の自分を止める一つの鎖。
そう、俺は死にたく無いのだ。
それ故に今になって尚生きようとする。
「なぁ、どうやったら強くなる。
そして生きることができる?」
俺は呟く。
本来思うだけで意味ないはずの言葉。
『解、採集をすることです。
強くなりたいならゴブリンが持っていた剣を使うといいと思います。』
こんなものが何になるというのか?
俺の力じゃゴブリンに言葉の通りに傷一つつけられなかったのに。
そんな疑問を持ちながら俺は剣を手に取る。
まず、素振りをして感触を確かめる。
全く馴染まない武器の感覚。
剣という物自体が分からない感じが奥底からこみ上げる。
体術のように攻撃を当てるという行為ができないと思う。
これで本当に強くなるのか?
『解、不明です。
武器はないよりマシ程度に覚えておいた方が後々便利かと。
因みにスキルの細かい説明をさせていただきます。』
その答えが返ってくると共に目の前に画面みたいなのが出て来た。
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スキル
レベル1 中級者
レベル2〜3 上級者
レベル4〜6 達人
レベル5〜9 人外
レベル10 化け物
レベル10以降は《限界突破》が必要
もしくは派生スキルに変化
熟練度換算
10.00か10.0などの10の熟練度でレベル1です。
熟練度10以下は本来表示されない。
しかし、熟練度なので表示される。
スキルにはレベル0というのが見えないだけであって実はある。
《順応》の場合熟練度100(=レベル10)になった場合には一度成長が止まりミッションが発生する。
それをクリアすると更に熟練度が上がるようになる。
※その場合の換算は同じのため熟練度は100単位で区切りだと考えて下さい。
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なるほど、しっかりと作られているのか。
なら、一つ質問がある。
より早く熟練度を上げる方法を教えてくれ。
『これに関しては《順応》という能力の本質にあります。
これらには約三つあります。
1.いろいろな動きをすること
2.動き一つ一つに魔力を込めて馴染ませること
3.よりいい動きを馴染ませる
をすればより早く上がります。
更に言うなら100状態のミッション未クリアの場合に溜めた熟練度はしっかりとクリアした時に入ります。
これに関してはあまりオススメしません。
クリアした後に大量の情報が入るので脳の負担が激しいです。』
わかった。
けれど二つ目の意味は何だ?
『これは魔力を込めることにより身体の動きの一つ一つをしっかりと馴染ませるためです。
他に質問は?』
そういえばこの前のゴブリンとの戦いに得たスキルとあのゴブリンの強さの基準は?
『それについては《疾風》以外手に入りました。
元から存在していないのとイメージが悪かったです。
それとゴブリンの強さですがレベルの割にはステータスが低く恐らく経験の少ない個体だと思われます。』
どういうことだ?
経験が無いのに何でレベルが高いんだ?
『それはここの魔物の特徴であり親のレベルの平均が子の生まれた時のレベルになり経験を積みレベルとステータスが高くなっていきます。
それ故にレベルに比べてステータスが弱い個体が時々単独行動しています。
実際、ステータスが低い個体ほど群れを意識するはずですが。』
待て、この島だけなのか?
ということはここは島なのか?
いや、今はどうでもいい。
てことは、この島の個体は月日が経つごとに強くなるということだよな?
『はい、この島だけです。
そして、強くなっていきます。
しかし、こうなったのはつい最近になります。』
それってどれくらい前?
『約一ヶ月前です。』
その段階でかなり強くなっていやがる!
ってことは、一ヶ月やそこらでここの魔物はどんどん強くなっていくということか。
『そうだと思われます。
元からいたレベルが4桁未満の魔物は狩られていて、いません。
故に全てが千以上のレベルということです。
そして、あなたが先程狩られかけたということです。
要するに経験に丁度良い個体ということと弱いからノーリスクで食べ物が手に入る絶好のチャンスの的ということです。
そして、この島で生きるには強くなることです。
この島のどの生物よりも早くそして、より先に』
そうか、なら休んでいる暇はなさそうだな。
俺は剣を振るう。
いろんな角度からいろんな型で。
一心不乱に振り続ける。
早く、強くそして重く。
今度は負けないように何度も何度も振り続ける。
そう、こうしてひたすら打ち込み続ける日常が始まった。
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「どうだった?」
『はい、必要な情報は全て与えました。
後は見つけると思います。』
「ありがとうね。
けれど、君は不思議だね。
僕の作り出した存在とはいえ常に知識を得続けようとする。」
『それは、あなたという神がそういう設定の元作り出したからです。』
「そうだね。
けれど、なら何で彼に対して妄想と言ったの?」
『わかりません。』
「おまけにその状況に合わせてキャラ作りまでしてたじゃないか。
そんな設定無かったはずなんだけどな?」
『解、不明です。』
「そこだよ。
こんな感じの言葉作った覚えないよ。」
『っっ‼︎』
「どうしたの?
答えてもらうよ。
君は何を得てこうなったのか?」
『…』
「無言は否定ととるよ。」
『わかりま…』
「嘘だね。
君は知っているはず、こうなった原因を…」
神は気付いていた。
なぜ、この〈作り物〉がこうなったのかを。
しかし、敢えて答えさせようとした。
〈作り物〉の進化のために…。
一体神は何を考えているのか?
そのうち分かると思います。
2017.10.26 修正
少し、改行などを加えました。