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秩序の魔王の順応性  作者: ARS
冒険者
43/45

色欲のラスト

迷宮71層にてヒサメはラストと戦ってい他。


「あらあら、とっても速いのね」


縦横無尽に跳び回り、翻弄するヒサメは焦っていた。

間違いなく今ラストを突き放し、圧倒的な差で戦っている。



それなのにラストにはまだ余裕がある様に見える。


「でも、これは相性が最悪ね」


そんなことをラストが言った瞬間には遅かった。

ヒサメはラストに向かって飛び出していた。


飛んでくる魔法を避ける余裕はヒサメにはなく、直撃する。


「っっ!この程度なら」


しかし、ラストの魔法の威力は低くヒサメはすぐに攻撃に移る。

だが、それを許さない。


振り上げた腕はラストに掴まれて動かない。


「なっ!?」


ヒサメには理解ができない。ラストの身体能力を見誤ってはいない自信が彼女にはあった。

にも関わらず目の前にあるのは自分と同速、同じレベルの力のラストという存在だった。


「あなたは強いわ。段階的に本来の獣としての本能を覚醒させることで誰も追いつけない領域まで上り詰めることができる」


ヒサメは一歩引く。


後ろを気にしてもヒサメの逃げ道はない。

そして、彼女は一つの答えにたどり着いていていた。


しかし、それに対する確証は何一つ無い。


「なら、それを確かめる!神獣化!!」


彼女は優希に隠していた。

自分がどういう存在か。


無知なフリをして己の生存本能を隠し通してきていた。

獣神化とは彼女の生まれ、本来の形に戻す力。


「へぇ、なるほどぉ〜元は人、しかし本能は獣とした。なるほどなるほど。あなたはぁ〜とっても恵まれたものを持ってるみたいねぇ〜」


ヒサメの姿は先ほどまでの幼さ残る少女の姿ではなく、成長した獣人の女性だった。


「獣人の成長は純人種より早いのよねぇ〜」

「無駄口叩く暇…無いですよ」


ラストが楽しそうに話してるとヒサメは容赦なく腕を振るう。

それをラストは難なく避け続ける。


「さっきより速いわね。でも純人種と同じ成長速度、同じ寿命のあなたが無理に他の獣人種と同じレベルにまで到達しようなんて無茶よ」


その言葉を放つラストは尻尾を鞭の様に動かす。

それは叩くわけではなく、突き刺す様に振るわれる。


それは最高、いや、ヒサメにとっては最悪のタイミングだった。

自身のスピードに僅かに振舞わされていたヒサメは少し離れた距離を縮めようと進行方向と反対側に地面を蹴っている瞬間。


要するに重心も力の方向も全てがラストに向いている瞬間にその尻尾が迫っているのだ。


直撃する。


衝撃が突き抜け、3メートルほど大地を抉る。


「純人種に近い君が獣人種へと近づく力は出過ぎたものだったね」


ラストはそう言って背を向けようとした時。


殺気を感じた。


「私がただやられるだけの存在で終わりだと?」


全てを跳ね除ける圧倒的な魔力…否、存在そのものがラストに迫り来る。

それはラストが反応し切れずにその一撃が食い込む。


だが、


「合格、第二試練の開始だ」


その一言が全てを壊すのだった。



ヒサメは呆然と虚空を見つめていた。

そして、その瞳から一粒の雫が溢れる。


それが地面に落ち、


「あぁぁぁぁぁ!!!!!!」


陥落した。


「色欲は心、楽と苦そのもの、君の心はこんなにも脆いんだね」


ラストが妖艶に笑う。

その目は明らかにヒサメを見下しているが、それをヒサメが認識することはない。


「さぁ、君は自分が仕掛けた幻の中で堕ちていくだけさ」


ラストはそう言うとヒサメに近づき軽く押す。

ただ、それだけのことなのにヒサメは初めからバランスが取れない子供の様に倒れる。


倒れてもそれに対する反応はなく、ただ、ただただ、発狂した少女の金切り声が部屋を響かせる。



そうして、戦いは…



終わらない。


「…助けて…ユウキさん」


小さな声で呟く。

拠り所、それが彼女の唯一の防壁。

それがある限り彼女は…


「まだ…戦える」


立ち上がる。

しかし、


「へぇ、君はその人をそんなに信頼してるんだね…ならば…初めから君に…」


無情にもラストは言葉を紡ぐ。


「私の前に立つ資格は無い」


魔力でできた剣を持つラスト。

彼女は剣を振りかぶり、ヒサメに突きつける。


ヒサメは心身共に限界に近づき動けない。


故にラストの剣を避けることはできない。

ヒサメはその運命を受け入れる。


剣は振り下ろされる。


その瞬間、


ドォォォォン!


壁が地面が天井が崩れる。


「君がこの子の拠り所か」


ラストの言葉にヒサメは顔を上げる。


目の前に映る光景をヒサメは信じることができなかった。


「な、なんで…ユウキさんが…」


そこにいたのは斉藤 優希だった。

彼はチラリとヒサメを見ると背負っていたものを放り投げる。


「コイツらに教えてもらったんだよ」


それは、川口という少年だった。


「や、やぁ大丈夫だったかい?」


川口は顔を上げてそう言うがヒサメから見ると彼の方がボロボロである。


「さてと、ウチの子をいじめてくれたようだな」



**



「さてと、ウチの子いじめてくれたようだな」


俺こと斉藤 優希はそう言って目の前にいる化け物を見据える。


「ふふふ、ようやく試練のやりがいがある少年が来たね!」


目の前にいる化け物は過去1にヤバイ敵なのは間違いないな、そう言った相手はまず鑑定が効かないから兎に角戦うしか無い。


俺は『相手』を見定める。

人間で悪魔の羽と尻尾を生やした化け物。


俺はそれを見て危険だと悟る。


そして、それと同時に


やっぱり鑑定は意味がない。


「さぁ、試練を始めよう」


『相手』が動く。

俺はそれを見てから動くだけの力はある。


しかし、


「ぐっ!」


『相手』の動きは見えても追いつけない。

その速さ、力は俺の全力と同格。


故に俺は一撃で弾き飛ばされ壁に体をぶつける。

その感覚は無い。


何故なら一撃で俺の殆どは肉片となって飛び散り、俺の視界はグラグラと揺れている。


だが、


「再生が無かったら死んでた」


俺は生きている。

そして、こんなことになるなんてどれ程ぶりだろうか。


生死を掛けた戦いは今までに何度もあったが死ぬことが前提というのはリディアスとの初めての邂逅以来だろうか。


「おかしいなぁ?君なら避けられるはずだったよね?」


『相手』が不思議そうに首を傾げている。

まるで彼女は俺の実力を


って考えてる場合じゃなかった。


『相手』は気がつけば俺の後ろにいる。


その速さ、その力…なるほど…


「君は力を封印してるのかな?」

精神燃焼スピリットチャージ1,000%」


咄嗟の反応。

相手の一撃を抑えるほどの力は発揮できない。

しかし…


「へぇ、弱い力でも受け流せるのねー」


『相手』は驚いたように呟く。

でも、俺はそれ以上にこの『相手』に驚いていた。


「どうやって、俺と同じステータス分の力を得ている」

「お、気が付いたのね。さっきの獣人は気が付かなかったのに」

「お前のさっきを知っていれば分かるさ。そして、その攻略法も」


俺は『相手…いや、彼女に対して攻めに出る。


「なるほどねー私はもう、貴方にとって脅威では無いと…なら見せてちょうだい。自分と同じ力を持つ相手に勝てるかを」


彼女は動く、その速さに俺は追いつけない。

しかし、予測線が教えてくれる。


そうだよな…


俺を強くしたのは…俺の戦場は


「こんな逆境の中だった」


俺の中の薄れてきていた戦闘本能が覚醒していく。


自分の持つ力の全てが再び全力でエンジンが掛かる。


剣を振るう。


彼女はそれを逸らすことしかできない。


「弾け…!!」


彼女の驚きは次の俺の一撃によって止められる。


「魔力砲撃!?」


ドォォォォン!


放たれた魔力の砲撃に直撃する。

彼女の今の防御力であれば余裕で耐えられる。


それは俺が普通の魔力砲撃をしていた場合。


「始めとはいえ、初めて血を流したよ。まさか魔力を圧縮してくるとは、よくもやってくれたね斉藤 優希」


彼女は笑っていた。

その笑いはどこか妖艶で人の恐怖を煽るには充分だった。


「さぁ、第二試練の開始だ」


その瞬間、俺は声が出なくなる。


「…父さん…母さん」


目の前にいたのは父親と母親の姿。

そして、隣には洸夜、香恋がいる。


「行こうぜ、優希」

「全く、私達を置いてどこに行ってたのよ」

「えーっと、」


そういえばどこに居たのだろう。

俺はこうして二人・・と学校にいる。

それだけで気分が楽になる。


でも、何か引っかかる。


何か収まりが悪い。


「お前、また道に迷ったのか?」

「そう、みたいだな」


そうだな、洸夜の言う通りだ。

道迷っている感覚。




道に迷う?


「本当にどうしたのよ?」

「いや、なぁ、二人とも俺の味方か?」

「何言ってんだ?」

「そうよ」

「「そんなの当たり前」」


そうか、それだ。


「これは俺の理想か。欲しかったものか」


なら、


「それは違う!!」

「「え?」」

「確かにお前達はそう言うさ、でもお前達のそらはいつも何かに怯えているんだよ。だから、俺はお前達のことをこの上なく心配で常に一緒にいた」

「な、なんのことだよ!」

「優希?」


俺は踏み出す。

二人を置いて。


「俺はお前達が大好きだ。だから」


走る。


「こんな偽物で満足できるかよ!」


そうして走り出した時、止められる。


「「優希!」」


「父さん、母さん…俺はあんたらを知らない」

顔だって分からない。でも、


「例え、偽物でも嬉しかった」


割れる音。

いや、違う割れたのでは無い目が覚めた音だ。


振り下ろされる剣を俺は躱す。


「ふぅん、その目はトラウマを克服したとかではないなぁ〜、君にトラウマは無いということかなぁ〜」


剣を振り下ろした彼女は不思議そうに俺を見る。

しばらく考えるようなそぶりを見せるが、何一つとして隙は無い。


「いいや、君は第三試練を行う」


瞬間、違和感を覚える。

目の前が真っ暗になり、なんの感覚もなくなる。


匂い、視覚、聴覚、味覚、触覚などの五感が消えている。

自分が立っているのか座っているのか倒れているのかも分からない。


真っ暗な闇の中に俺はいた。


**



ピー



観察……


いえ、完全に乖離してますね。

仕方ありません。


試行と思考は大事です。



ラストの根本は同調シンクロ


なるほど、魂と肉体、脳と神経などといった至る部分の同調を切り離す。


五感を奪う最も最適で思考を奪う力ですね。



また、同調により、トラウマを掘り返したり、力そのものを同じに変えたりと…


なるほど、これは見たことのあるものですね。


となれば、おそらく…



彼女が…


なら、ひとつだけ彼の勝ち筋を作ってあげますか。


人類最大の異端にして罪。







魂錬成




**



状況はひどいものだった。


しかし、優希は立ち上がり、攻撃を避けいや、致命傷だけは逃れ続けた。


「すごいわねー、神経の全ては自由に動かせないはずなのに、何も感じ取れないはずなのに」


優希は自分の足で立ち戦うために拳を握っていた。

ラストの感心の声も聞こえずにただ、見えない目を見開き、動き続けている。


「この声が…」

「っっ!?嘘でしょ、動けてることですらイレギュラーなのに、声まで…」

「聞こえてるのか、話せてるのかわからない」


優希は言葉を続ける。


その顔には…


「こんな程度で試練とは笑わせんじゃねぇよ」


笑っていた。

それと共に優希の体が動き出す。


「順応者舐めてんじゃねぇよ!」


姿勢を低くして、優希は動き出す。


「あはは」


ラストは笑う。

彼が無茶してるのが明らかに分かる。


彼は今、一切の魔力を使用していない。


いや、出来ていない。


(せめて魔力を解放できるようになってから強がりなよ)


呆れるように笑うラスト。


そして、


「いいよ、なら見せてあげるよ。この姿は嫌いだし、戦うことも嫌いな私が決してやらないと思い続けてきた。最後の試練、4番目の試練をを開始しようか。色欲のラストが持つアスモデウスの本当の姿」


ラストの身体中から魔力が溢れ出す。





其れは異形のものだった。

左半身は僅かに人の形を残し、右半身からは異形の甲殻、竜の鱗、複眼、伸び出る触手や顎、虫のような薄い羽、鳥のような翼、蝙蝠のような皮膜を持った翼、右腕の先には口が、脚は馬のようにいや、それだけではない。


無数に無限に変化と淘汰を繰り返し、変化していく肉体を持つ化け物にラストは姿を変えていた。


そうして覚醒した彼女は自嘲気味に笑う。


「可愛くないでしょ?綺麗でもない…どう思う?醜いと思うでしょう斎藤 優希」

「さぁな、目は見えるようになったけど、お前の言う醜いが分からないな。綺麗じゃねぇか」

「本当、貴方は本気で其れを言ってるから気に食わないわね。もし…」


ラストはどこか遠くを見つめて口を閉じる。


「さぁ、始めましょう」


全てが崩れる。

彼女の触手の中の一つが根を付け迷宮そのものを破壊していく。


「時間制限はこの根が迷宮の核に届くまでだけどね」

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