洸夜の謎の1日
すいません…前回のノリに乗っていたテンションの次回予告通りにはできませんでした。
辻褄合わせが難しい…。
自分という存在が時折分からなくなる時がある。
それは決して自分が生きてることなどではない。
何というか…自分が自分ではない。
いや、この言い方は少し違うだろう。
敢えて言うならこれだろう。
『自分以外の誰かがいる』
当然のような答え。
しかし、それは自分の中ではなければの話だを
そう、俺こと近衛 洸夜にとっては非常に悩ましい問題だった。
何かが違う…何かがある。
そう、あの時の記憶を思い出してからずっとそうだった。
オルトロスと戦ったあの時の声…あの時の自分…何もかもが俺の中の何かを搔きまわす。
「ダメだな…」
眠っていた体を起こして俺はそう呟く。
そう、これが今日一日の始まりだ。
**
「おはようございます」
俺はそう言って訓練所に入る。
そこにはアナードやロロアード達が集まって訓練をしていた。
今、朝早くで俺以外に生徒達は来ていない。
だから気がつかなかった。
俺達の存在は彼らの邪魔になっているのだ。
たしかに俺達は災厄や魔王を倒すに必要かもしれない…しかし、それは彼らの訓練の時間を削ってまで行われているのだ。
どうして今まで気付かなかったのだろうか…。
「そんなに気に病む必要はないと思うけどな」
突然、俺の後ろから声が聞こえた。
驚きながらも俺は後ろを振り向くと生徒会長が俺の後ろに立っていた。
「あれ、僕ってそんなに警戒されてる?」
俺の態度に出てたのか久遠生徒会長はそう言って笑う。
それが蛇の睨みのようで俺は動くことができない。
「まぁ、そんなに警戒しないでいいよ。
君には何もしないから…」
「そ、そうですか」
会長の言葉に俺は安心はできないが少しだけ緩む。
しかし、俺はある言葉に引っかかった。
『君には』
俺じゃない誰か?
香恋か?いや、違うような気がする。
あの二人も違う。
「おや、これだから聡明な子は…。
それで洸夜君は何でこんなに早く来てるんだい?」
「あ、はい。
えっと、なんか目が覚めちゃいましてね…」
俺は笑いながらそう言うと会長は笑顔で「そうかい」と言って次の言葉を発する。
「君はこんなことしていていいのかい?」
「え?」
予想外の質問で俺は何も言葉が思いつかない。
第一、この人は何を言いたいのだろうか?
「あー、分からないか…今のは無しで。
君があのことを理解してないのはよく分かったからね」
そう言って会長は俺をまじまじと観察する。
そして、僅かに本当の笑みらしきものを漏らす。
「あの、会長…どうしたんですか?」
「いや、何でもないさ。
ただ、君はこのままであってくれることを願うよ」
この人は一体…
「何も知らないよ…いや、知ってることはあるさ。
でも、君の知りたいことは答えられないさ」
この人は一体…何を知ってるのかと思った直後に言われて何も言えない。
分からないことが多すぎる。
この人は何者で何がしたいんだ?
ならば…一体…
「…何なら答えられるのですか?」
自然と答えていたこの言葉…それを見て会長は僅かに驚いた表情をしていたがでも、すぐにいつものような笑みに戻る。
「そうだなぁ…『学校について』…なら答えられるかな?」
予想外の答え…いや、おかしい…俺はこの学校について知ってる。
なのにこの人は何を言いたいのか?
うちは普通の都立の高校で偏差値もそんなに高くも低くもない普通…のはず。
「君は知らないよ…何も…あいつも知らない…いや、思い出せてない…僕がずっと忘れたくても忘れられないあの日々を…」
その瞬間、初めて会長から笑みが消える。
顔を伏せていて目は見えない…しかし、彼は何かを…やはり知っている。
「ふふ、ごめんな…急にキレて。
そろそろ、朝食の時間だから遅れんようにな」
そう言って彼は去ろうとする。
「待て!お前は一体…」
気がつけば声に出していた…しかし、そこにはもう彼の姿は見えなかった。
「どうした?洸夜」
そんな時、訓練を終えたアナードが俺の後ろに立っていた。
**
「なるほどな…」
俺は現在、アナードと香恋、イリアとエイナと一緒に朝食を取っていた。
そして、会長の件について話していた。
「なるほど…確かに今期の生徒会長は謎が多かったので気になるな」
香恋が思った以上に食い付く。
どこかあの人に謎などあっただろうか?
最近は謎なところが多いがそんなに無いだろう。
「はぁ、もう少し洸夜は顔に出さないようにしてくれ」
香恋の指摘に俺は驚く。
そんなに俺は顔に出てるのだろうか?
いや、出てるのだろう。
この思考に入った瞬間に四人の目が痛い。
「と、とりあえず…謎なんてあったか?」
「それは私も気になる!」
「私も最近転校したばかりなのでよくは…」
エイナとイリアも俺が言った後に乗ってくるように言う。
すると香恋は少しため息した後に話し出す。
因みにアナードさんはこの話になってから黙っていた。
おそらく話の腰を折らないようにしたのだろう。
「知ってる?
彼には友達がいないと言う話」
それは聞いたことなかった。
しかし、パッと聞いた限り特に不思議な点はないのではないのではないか。
「まぁ、生徒会長になってから役員とは仲がいいのだけど…今回の生徒会選挙もおかしかったのよ」
それは知っている。
生徒会長以外の立候補者が全員、取り下げになったのだ。
そして、今の役員達を彼が推薦した。
よく考えてみれば不自然な話である。
「そして、降りた人間は全員親の都合により転校」
「え、そうなのか?」
それは初めて聞いた。
しかし、なぜ全員転校を…まるで誰かが仕組んだみたいだ。
いや、この際に仕掛けるのは会長しかいない。
しかし、なぜ?
彼にとっては会長以外の人間を降ろすのに意味があるのか?
「と言うことは役員…」
「残念ながら…役員はこれまで一切の接点が無いものばかりよ。
私にまで一度だけ声がかかったから余計にね」
その言葉に俺は驚く。
彼との接点は一切無い。
「でも、それだと役員を降ろさなくてはならなかった理由があるみたいだね」
エイナの一言で俺は気付く。
そう、問題は会長ではなく立候補者にあるとしたら…。
前提条件が変わる。
「そう、今回のことで『学校』にある何か…それが原因じゃない?」
香恋の言葉に俺はハッとする。
彼の言える学校の何か…なら、それは一体…。
「今は考えても仕方ないと思います。
もし、帰れた時にそこは考えましょう」
イリアの言葉に俺達はそれもそうかと頷く。
実際、今は学校というしがらみより帰ることの方が先である。
「話は終わったか?」
アナードはそう言って俺達を見る。
どうやらほんとうに混ざっても意味ないと思って黙っていたようだ。
「はい」
「そうか…なら、話とかなくてはならないことがあってな」
それを聞いて俺は真剣な表情に変わる。
どうやら、真面目な話のようだ。
「お前達は一週間後…この場所から発つという話はきいているな」
その話は知っている。
ついこの間に言われていた。
その際に俺達の存在を公に公表して盛大に旅立たせるらしい。
「そのことなんだが俺はいない」
「え?」
その言葉を俺は予想外だった。
彼は最後に俺達を指導したものとして送り出してくれるはずなのだ。
「実は大事な交易都市に魔物の群れが襲いかかったという話が来てな…どうやら、俺達の部隊が明日出撃する予定なんだ」
それを聞いて俺は愕然とした。
彼は迷宮の時からずっとお世話になった人だった。
そんな彼がいないのだ。
「だから、今日が最後の訓練だ」
そう言って彼は俺達を見て笑う。
しかし、俺は思っても見なかった。
これが彼のできる精一杯なのだと。
**
「おら!腰が引けてるぞ!」
「うぉぉぉぉ!」
弾かれる感覚。
腕が麻痺して動かない。
しかし、それでも俺は剣を握る。
現在、アナードとロロアードの二人を俺、エイナ、イリア、香恋、淳、茅芽の六人とで模擬戦をおこなっていた。
しかし、俺達は現状不利な状況でとても敵う気がしなかった。
「諦めるな!とにかく動け!敵わないと思えば考えろ!頭も体も止めるな!」
そう言ってアナードはより激しく攻撃してくる。
それを俺と淳で抑える。
しかし、すぐにその拮抗もロロアードの攻撃によって打ち砕かれる。
前衛もできるエイナでなんとか抑えてくれるのですぐに戦線復帰はできるが、やはりすぐに崩される。
「正攻法じゃ敵わない相手に同じことをするな!」
すぐに崩される。
しかも、さっきより早い。
「もっと攻撃を考えろ!」
そんな中に混じってロロアードが後衛や中衛に向けた叱責も聞こえる。
それを聞いて俺は考える。
「頭だけではなく体も動かせ!」
しかし、少しでも疎かになっただけで一瞬で吹き飛ばされる。
これが二人と俺達の差。
なら…
「エイナ!遊撃を辞めて前衛に専念しろ!淳はロロアードを!」
俺はすぐに命令をして戦線変える。
そして、一歩下がって状況を確認する。
一度、引いて観察に専念する。
そして、すぐに思いつく。
次の瞬間には状況をひっくり返した。
アナードとロロアードは気がつけば背を合わせて構えていた。
行ったことは簡単。
一瞬だけそうなるように二人に突っついたにしか過ぎない。
そして、その瞬間を狙って俺は魔法を放つ。
「『ゼロ』」
その瞬間、飛んでいく相反した光と闇のブレス。
それを見た瞬間にアナード達は頷きあう。
ロロアードの空間をも揺らす程の空振り。
しかし、それだけで一瞬だけブレスがブレる。
その瞬間を狙ってアナードが爆発する前にブレスを破壊する。
「うそ!」
誰もが驚きの声を上げる。
「あの日から少しは考えてたんだよ」
その瞬間には俺の胸と淳の膝にはロロアードの手が添えられていた。
「はぁ!」
俺達は吹き飛ぶ…純粋な衝撃が身体中を駆け巡る。
すぐに体制を立て直そうと体に力を入れるが思ったように入らない。
その間に俺と淳は次の攻撃の準備をするかのようにロロアードの手が添えられる。
しかし、それが起きることは無かった。
炎がロロアードに飛んでくる。
どうやら茅芽が援護してくれたようだ。
俺はすぐに立ち上がり、剣を構える。
そして、向こうでは既にエイナとアナードが打ち合っておりとてもじゃないが割り込めそうにない。
「淳…いくぞ!」
「…てて、わかった」
淳は膝を僅かに抱えながら起き上がると構える。
「目を逸らさない!」
その瞬間、俺達の後ろからロロアードの声が聞こえた。
二人同時に反応して攻撃を防ぐ。
そして、反撃をしようとするがお互いに邪魔し合う。
「僅かな連携ミスは死につながるぞ」
その瞬間には俺と淳は薙ぎ払われた。
ギリギリで踏みとどまり離れる。
しかし、それすらも許さないかのように無情な追撃がくる。
その瞬間、俺達の意識はここで終わった。
**
「起きたか」
俺が目を覚ますとアナードの声が聞こえた。
そして、隣を見ると椅子に座っているアナードがいた。
「全く、前と比べればマシになったがこのままじゃ心配だな」
「あはは、まだ弱いですからね」
アナードに言葉に俺は苦笑いをして返事をする。
そうするとアナードは「全くだ」と呟いて微笑む。
「それでなんか用ですか?」
俺の質問にアナードは頷く。
何の用だろうか…。
「お前が適任だと思ってな…これだ」
そうしてアナードは俺に何かを投げつける。
俺は咄嗟に取ってそれを見る。
その瞬間、俺は言葉が出なかった。
それはここにあっていいものだろうか?
いや、これがここにあっても別段不思議でもなんでもない。
しかし、これは…。
「とある奴がお前に渡せと言って一週間前に俺に接触してきた」
「それって…まさか」
「何か心当たりでもあるのか?」
そう、これに心当たりがない奴がいないわけない。
しかし、これは…一体どういうことなのだろうか。
そこには『厄除け祈願』と書かれた御守りだった。
どこか古びておりかなり昔のものだろう。
それは転生…いや、それだとこれはない。
ならば、同じ…転移者か?
「それは…誰なんですか?」
気がつけば俺は聞いていた。
しかし、答えは帰ってこなかった。
「悪いな…思い出せないんだ。
でも、これは確か…いずれ役に立つと言っていた」
「それって怪しくないですか?」
「いや、違うんだ。
知ってる奴だったことは覚えてる…たしかにあいつは何かを仕掛けるやつではない…でも、思い出せない…」
アナードが頭を抱える。
俺は何が何だかわからなくなってきた。
しかし、アナードは思い出すことを諦めたようで次にもう一つ投げてきた。
俺はまたかよと思いつつそれを受け取る。
「これは…水晶?」
「これは夢見の水晶でな…所有者が眠っている間、守ってくれるものだ」
「それって貴重じゃ…」
思った以上にすごいもので俺は驚く。
しかし、アナードは肩をすくめて答える。
「この大きさでしか作動しない上に寝る時にしっかりと身につけなくてはいけなくてはな…」
たしかにこの大きさの水晶を身につけたまま寝るには邪魔だろう。
しかし、緊急時にはとても使えそうだ。
「ありがとうございます!」
「いや、勝手に俺がやったことだ気にするな…それと…」
アナードはそう言って俺を見る。
「な、何ですか?」
「この先、躊躇うな。
迷いを捨てろ…お前の目的の前に立ちふさがるのなら斬り伏せろ!」
そう言ってアナードは出て行ってしまった。
一人残った医務室で俺は呟く。
「訳わかんねぇ…御守りもそうだし…どうしたんだよ…あの言葉…」
この御守りを渡した存在は一体何者なのか…。
そして、最後のアナードの言葉…その真意は一体…。
次の日の朝にはアナードはもう既に発っていたのだった。
冷静な時に書くと中々執筆が進まない。
辻褄などを合わせなくてはいけないから難しい。
かと言ってテンション上がってると時折ある元の設定そっちのけがあるから困る。
次回予告
前回の次回予告はそっちのけでしたけど次からは新章です。
やっと話が進みます!
では、これからもよろしくお願いします。
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ちなみに感想を書かれるとテンション上がって意味不明な返信が来るので悪しからず。