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秩序の魔王の順応性  作者: ARS
冒険者
32/45

黒真龍

誰もが息をすることさえ忘れていた。

目の前に映るのは真っ直ぐな巨大な窪み。

その周囲には火に包まれており、何者も寄せ付けないような巨大な力を感じさせるような破壊痕。


それを最も近くで見ていたアリユリとコーネ顔をひきつらせるというレベルを越していた。



「分かってはいたはずなんだけど…」



アリユリは力無く膝をつく。


一瞬の出来事…誰もが認識する間に行われたことをアリユリ達は見えていた。

目の前にいきなり出て来た優希が大量の魔法を乱射しながら真っ直ぐに突撃していった。


そう、それがいま目の前にある破壊痕である。


それが魅せるものは歴然として恐怖だけだった。

敵の魔物の数もその一瞬で半分以上が削れている。



「おお、流石Aランクだ!」


「勝てるぞ!これは勝てる!」



絶望している彼女らの後ろでは他の冒険者達がこの状況を見て歓喜していた。


もし、これが本当にAランクの力ならばどれだけ恐ろしいのだろう。


なぜなら…



「これほどの力はSランクでもいないよ…」



そう、たった一人の例外を除いてこれだけのことをできるのは存在しない。


(そんな力がAランク?

なんて皮肉なのだろうか?)


そこまで思考してもなお彼等彼女等は立ち上がる。



今、自分にできること…


今、やらなくてはならないこと…


そして、いつか追いつくと言い聞かせてじき終わるであろう戦いに身を投じる。


それが彼等彼女等の役目だから。




**






………




轟音が鳴り響く




…………





それと共に無数の破壊音が辺りから散らす






………………





ぶつかり合う音と共に二つの影が姿を現わす。


その中の一つは少年の姿をしている。

もう一つは巨大なヘビに翼が生えたような龍の姿だった。



お互いに最初の軽い攻防だったのかお互いに傷はなく、静かに佇んでいた。



『驚いたぞ人間…』



龍がそっと少年に語りかける。

それに対して少年は動揺をするがすぐに落ち着きを払う。



「こっちも驚いたよ。

まさか、災厄を凌駕する化け物がこんな身近にいるなんてな」


『災厄?

わからぬがまぁ、良い。

主人の命とはいえと思っていたが久々に楽しめそうで気分がいい』


「へぇ、それは俺もだ。

気が合いそうだな…お互いに気分もいいことだし、殺す相手の名くらい覚えておこうぜ」



少年はニンマリと笑い龍を見据えてそう言うとそれに合わせて龍も高笑いをあげる。



『面白い!

そうだな…主人からは黒真龍と呼ばれておる』


「俺は斎藤 優希だ。

お互いにせめて殺し合いが終わる頃までには覚えておこうか!」



その瞬間、龍のブレスと優希の剣がぶつかる。

そして、ブレスが両断される頃には優希の姿はなく、そこには一本の剣だけが取り残されていた。





と、優希の拳と龍の鉤爪がぶつかり合う。

そして、優希はすぐに引いて先ほど手放した剣を手に取る。


よく見ると交わった拳の骨は折れており、とても使える様子ではなかった。

しかし、それで引くほどヤワではなかった。

優希はそのまま剣を振るい、龍に傷をつけまいと攻撃の手を休めない。


それに呼応して龍の方も小回りが利かないがゆえに魔法も駆使しながら一つ一つ丁寧に迎撃をしていく。

互いに互いを恐れて見誤らず油断せずに最善と念入りな手を使う。


しかし、お互いの力は拮抗しながらも僅かに龍の方が押していた。



『どうした!

優希!お前の力はそんなものではないだろ!

出し切って来い!』


「悪いな…今はこれが限界だ」



龍は優希の封印を見切り、憤りを感じるが飄々と返す彼の言葉に龍は一瞬の思考の後、笑う。


龍の表情など、わかるはずもない優希ですら笑ったと認識できたほど、笑っていた。



『いいぞ!いいぞ!

こんなにも心が沸き立つような殺し合いはいつぶりか!

いいだろう、貴様のその傲慢を後悔させてやる!』



それと共に龍の周りから無数の暴風と雷を始めとした破壊が起き始める。


それは全てを呑まんとして優希に襲いかかる。


その瞬間、全ての破壊が凍りつく。



「『心理の氷』」



そして、崩れゆく。

氷の破片が幻想的な風景を映し出し、振り出しに戻ったように見えた。


しかし、これは形だけの振り出し(リセット)であり、そこには全力で動き出した優希の姿があった。


炎が辺りを燃やし尽くす。

その一瞬のうちにして、互いに攻撃を読みあっていたのか、炎を隔てた一人と一体の間で魔法とブレスがぶつかり合う。


僅かに優希の方の魔法が劣り相殺しきれずに優希にブレスが飛ぶ。

しかし、間にあった炎をが動き出して一つに圧縮される。

それは、ブレスの進行方向の後ろ…要するにもう過ぎた後の場所に固まる。



「『情熱の炎』《バースト》」



その瞬間、とんでもない熱量と光が放たれる。

それは、ブレスを搔き消し龍を襲う。



『この程度で!』



声が鳴り響くと共に光が収まる。

その瞬間を計ったかのような突撃を龍は行う。

優希は身を守りお返しと言わんばかりに剣を突き立てる。


鮮血が舞う。


それはどちらのか?

両者ともに血に濡れて攻防を続けた。


そんな両者の表情は笑っていた。



優希は今まで溜め込んで来た、あのいつ死ぬか分からない環境での生活に馴染んでしまった故にスリルも何もない今の生活に退屈していた。

そう、それこそ無意識のうちに…。


故の笑い…いや、嗤い。



笑い声が辺りに響き渡る。

狂気に満ちたその声を聞くものはいなかったが、たしかにここで優希の抑えていたネジが一本飛んでいた。




*************



楽しい。



何故だ?



こんなにも不利なのに?



いや、だからこそだ。

切っても切っても再生して来て、戦えば戦うほど相手は俺を読んでくる、対応してくる。



あぁ、いつからだろう?



あんなに怖くて痛くて忌避してきた戦いを『楽しい』なんて感情で埋め尽くしてしまったのは?

いや、語弊がある。


今もなお怖い。


それでも、戦う。

それだけは逃げられない。




あぁ、そうか。



だから楽しいのか…




自分というものが一番に出るからこの殺し合いは楽しく感じれるのか…。




それが分かると自然と俺は本能に身を任せていた。

その瞬間、見える世界が変わった。

攻撃を受ける恐怖を覚えた。

攻撃を躱す本能が芽生えた。

反撃する感覚を刻んだ。

身を守る術を染み込ませた。

相手を刈り取る為の思考を作り込んだ。




まるで自分という人間の改造…。




ブレスが放たれようが突撃されようがマニュアル通りに見せたアドリブでそれらを蹴散らしていく。

確実にそして、隙を伺う。



『相手』の今までにない行動。


こちらの予測。


まるで知っていたと言えるような対応で広範囲ブレスをかき消す。

そして『傲慢』と『強欲』で解析していく。



そして、とうとうとそれが見えた。



その瞬間、空いや、俺の周り全体に無数の魔法陣が現れる。

知っている。


龍がブレス程度で終わらせるわけないことを…だから、その身体が壊れるような感覚で動き出す。


一個一個の魔法の効果や範囲、規模を考える暇なんてない。

だから、何も考えずに『相手』を殺しにいく。


無数の魔法が放たれる。

それらは七色…と言ってしまえるような量の豊かな光を放出して放たれていた。


時に体に傷ができる。


時に腕がもげる。


時に腹に風穴が開く。


時に足が切断される。


理不尽な程の無数の攻撃。

それがどうした?



「まだ終わりじゃねぇぞ!」



余裕が生まれて『七つの大罪』系スキルを発動させて魔法を防ぎ始めた。

互いに全力でぶつかり合う。



剣で何度も切りつけるが『相手』の傷はすぐにふさがり決定だとはならない。

それでもいい。

いや、それでいい。


まだ戦いは始まったばかりだ。


こんな短時間で終わるほど『相手』も俺も甘くも柔でもない。

拮抗しているからこそ今現在もなお、お互いに最善の手を尽くす。


互いに油断も隙も何も無い。


なら、どうすればいい?


簡単なことだろう。

この一瞬一瞬で俺が『相手』を上回ればいい。

例え『相手』が俺を上回っても殺られる前にこちらがそれを超えてみせる!


搦め手などない。

技などない。

この戦いにおいて必要なのは、どれだけ『相手』を超えることができるかだ。


純粋な力のぶつかり合いの災厄とは違う。


これはどれだけ出し抜くことが出来るかだ。



その瞬間、お互いに示し合わせたように魔法同士がぶつかり合う。

その余波で辺りが消し飛ぶ。

俺は剣で『相手』の首に『相手』は牙で俺の首に…。


どちらが早いか?


いや、同時だった。

俺と『相手』は避けようと動きながら攻撃する。

二種類の血が舞う。


しかし、俺も『相手』もすぐにでも再生して俺たちは再び攻撃を仕掛ける。


何度も何千回も鮮血を舞わせながら切り合う、殺しあう、魔法を撃ち合う。


そして、ある時に俺と『相手』は動きを止めた。



『やっと…理解したぞ。

主人が我に力を与えここに来させた理由を…』


「あんたの主人は何者だよ?

お前みたいな化け物に力を与えられるだけ実力って…」


『いずれ分かる…。

貴様の望みを叶えるには避けては通れぬ道だ』



俺は思わず顔をしかめた。

まるで俺の目的を知っているような物言いに俺の中の疑念が高まる。


俺が秩序の魔王だと知ってるものは少ない。

そして、俺に鑑定などをした様子は無い。



「どういうことだ?」


『何だ?

違うのか?

てっきり我はお主はこの世界の崩壊の元凶を殺そうとしているのかと思ったのだが?

それとも、それが何者なのか知らないのか?』



それを聞いて俺は無言を貫く。

間違っていないし、知っている。



『まぁ、どうでも良い。

しかし、候補者ならば我も命を賭して戦おう』



その瞬間、圧倒的な威圧が放たれる。



『我は黒真龍。

主人に従いし龍なり。

…』



何かを『相手』が呟くたびに力が増していく。



『…っっ!

ありがとうございます。

こんな我に名を与えてくださり…』



その瞬間、俺は見た。

覚醒を…。

災厄の比などではない。

圧倒的な存在…。


見ただけで自分の死が見えるような圧倒的な『何か』…。



『我が名はグライズ。

『黒真龍』であり『選定の龍』グライズである』



反応もできない。

あんなのありかよ…。


この龍は恐らく…あそこにいた竜と同じ…。


そう、恐らくこいつもあの大陸で育った化け物だ。



『行くぞサイトウ ユウキ!』



その瞬間、俺は現実に引き戻される。

そうか、そうだったよな。


ーそんなものどうだっていいよな


俺は何が何でも勝たなくちゃいけない。

ただ、それだけで十分じゃないか!


俺は笑って剣を構える。

始まったのは長くも激しい殺し合いだった。



*************



「あ、やっちまった」



顔を隠して遠くから優希達の戦いを見るものがいた。

その少年は黒真龍の覚醒を見て失敗したと苦笑いする。



「いや〜、名前を与えるべきじゃ…。

いや、よかったかもな」



しかし、優希の表情を見てそれを考え直す。

そして、別の場所を見つめると少年はポツリと呟く。



「帰ってくれないかな?」



誰もいない…筈だった。

しかし、その声と呼応して一つの存在が現れる。


銀色の髪の少年が現れたのだ。



「悪いが帰れねぇな。

テメェには俺の願いを叶えてもらわなくちゃな」



銀髪の少年はそう言って嗤う。

一応、説明。

竜と龍の違いについてです。

これは主に形で私は決めています。


中国神話風や足のないのを龍


ほかのトカゲのような西洋風のものを竜としています。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら幸いです。


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