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秩序の魔王の順応性  作者: ARS
冒険者
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欲求不満

目の前には無数の死体があった。

ゴブリンやオーク、オーガまでもがある。

そこで俺は一人でポツリと佇んでいた。


そして、俺は思いっきり唇を噛んで呟く。


「…違う」


これは俺の求めていたものではない。

望んでいたものはもっと別の何か…。


「くそっ!こんなので俺にどうしろと言うんだ!」


それはやがて叫びに変わり俺は膝をつき、四つん這いになる。


俺は人生において究極のミスをしてしまった。

その後悔がフツフツと湧き上がり涙が出てくる。


「こんなことなら…力なんて手に入れるんじゃなかった」


唐突に今までの経緯を否定するがそれほどまでに自分のショックが大きかった。


「何でこんなにも敵が弱すぎるんだ…」


そう、集約してしまえばそれである。

いくら、ステータスがこちらの方が弱くなっていても技量そのものが圧倒的すぎて相手にならないのだ。


「もう…使命なんて忘れて世界が滅びるまであそこにいたい…」


あまりに呆気ないもの、興醒めしてしまうもの…それに対して俺は心が折れそうになっていた。


*************


「ブハッハハハ!」


「ライド…笑わないでくれ…泣けてくる…」


依頼が無事終了して、俺はライドと冒険者ギルド内で飲んでいた。

勿論、俺は酒なんて飲まないし、例えこの国の法律で有りでも俺の中の日本の常識が許してくれない。


「いや、真剣な顔で相談があると旦那が言うから何事かと思ったら…クク…ハハハ!」


「だから笑うな!」


そう、俺は今ライドに相談しているのである。

今日はもとより依頼を受ける予定は無いらしく、俺とライドしか今はいない。


「それにしても敵が弱すぎるという贅沢な悩みを抱えてるなんて旦那くらい…いや、もう一人いたな…」


ライドは楽しげに笑ってる最中、何かを思い出したようで真剣な表情になる。


「旦那、ユージスという男を知っていますか?」


「一応は…初日に見た化け物だからな…」


俺がそう言うとライドは少し険しい表情になる。


「やはり、そうですかい。

旦那でも化け物と言わしめるほどでしたか…」


「正直言って勝てるビジョンが一切浮かばないほどの化け物だと思ってる。

そいつがどうかしたのか?」


「そいつは世界で唯一のS★と言われる最強のランクを持っているんです。

曰く、傷を付くところを見たものはいなく、ほぼ全ての敵を一撃で切り伏せる。

幾億の軍勢も奴の前では無意味…それがユージスという男です。

そして、そいつも時折ぼやいているんです…旦那と同じ言葉を…」


正直言って想定以上の強さだと思う。

そこで俺は一つの疑問が浮かぶ。


「そいつ本当に人間か?」


「さぁ、神の子という噂もありますからねぇ?」


やっぱり、そいつが人間かどうかは疑問視をされ続けているんだな…。


「そういえば、旦那は使命があるとか言ってましたけど…大丈夫なんですかい?」


「大丈夫だ、今のところは行動を起こす気は無い…、とりあえず今はもっと強くなりたい…」


俺はそう言って代金と借りたお金を机に置いて出て行く。


「旦那…あんたは何に対して急いでるんだ?」


最後にその言葉が聞こえたが俺は敢えて聞こえていないふりをしていた。

使命だけなら、今でも充分だがまだ足りないのである。


*************


ーーーーー

この世界は二人の二柱の神が作り上げた。

そして、それと同時に双子となる世界も作ったとされている。

一方は世界の不純物を消費をする為に…もう一方は世界の余分な力を回収する為に…。

勇者の話から、魔物のいない世界があることが分かった。

そして、魔法もないようだが調べた結果、大元はあるが知られていないと推察…しかし、転移者などは転移の影響で魔法を使えるようになった可能性も否定は出来ない。

仮にあると推察した場合、魔力は無いのではなく逆に魔力が多すぎるのでは無いかと予想した。

魔力とは多ければいいのではなく、ある一定の量と密度を超えると人間の頭では抱えきれない処理を必要とされている。

それは一部の勇者が我々とは全く別の…

ーーーー


「おいおい、図書館の本なのに途中で切れてるってやめろよ…」


俺は図書館で調べ物をしていた。

主に勇者などについてだ。

最初の神のくだりは放っておいて問題はないだろう。


でも、本当に著者不明な上に途中とかなんだよ…。


まぁ、仕方ないと言ったら仕方ないんだけどな…。

大抵の書物は完成する前に無くなるか、作者が死んでしまうのだ。


それは俺達秩序の魔王が暴れたり、災厄が出てきたりと忙しない時代がずっと続いてきたからだろう…。


「にしても…異世界に来ても勉強か…世知辛い世の中だ」


俺はため息をついて天井を見上げる。

別に今の生活に不満があるわけではない。

それでも、あの生活が刺激的すぎて忘れられない故に欲求不満を抱えてしまっているのだろう。


一つ手を抜けば自らの死が待ち、二つ手を抜けばたちまち死ぬ…そんな環境にいたが故に今の生活に対して拒否感があるのも否定はできない。


俺は席を立ち、本を戻してから次の本に手を取る。


この世界は地球より広い、故により多くの情報が必要だ。

何よりも俺自身でしなくてはと決めたことを行うには何よりも情報と強さが必要不可欠だ。

秩序の維持程度ならまだ可能だ…しかし、それは現状の延ばすでしか無い。

このままでは次代の秩序の魔王が一度ヒトタビでも暴れれば世界は軽く滅んでしまう。

それだけ今のこの世界は危うい現状に立っている。


俺はそんなことをする義務なんてない…する意味も実際のところ無い…課せられた使命を全うするだけで俺含めた召喚された奴らは元の世界に返される。

そう、死んだ者も『神天の加護』により帰されるだろう。


それすれば俺達は再び平穏な日常に戻れる…。


「それでも…」


俺は本を手に取ろうとして止める。

もう片方の自由な手は思いっきり握り締めて血が滲み出ている。


我儘だって分かってる。

そんなことをしたら他の奴らを危険に晒すなんて理解してる。

それでも…。


「知ってしまったからには俺は…この道以外を進むことが出来ないんだよ…」


そんなことしたら俺は俺ではいられなくなる。

力があるから成すのではない…流されてるわけでもない…。


もう見たくないんだ…誰かが死ぬところを…絶望に溢れたあの顔を…。


いつだってそうだ。


一番自分が絶望してるくせして俺が絶望を嫌ってるんだ。


あの表情を忘れない…父も母もそう…そして、洸夜も香恋もイリアもエイナもみんな絶望していた。

自分の運命に境遇に…。

だから俺はほっとけなかった…。


本当は救いたかったんじゃない…見下していたんだ。


自分と同じものを見て…自分と同じような境遇を知って…それで上でいたかったんだと思う。


でも、今なら言える。


「絶対に終わらせてみせる…俺のもそうだ…あいつらの絶望も…これからの絶望も!」


俺は考えがまとまった。

そして、我に返って周りを見る。

何か不穏な雰囲気を感じた…。


カーンカーンカーン


鐘の音が響く。


「三回…確か…」


俺はライドに教えてもらった知識を擦り合わせて鐘の意味を考える。


「とりあえずギルドに急ごう!」


この鐘が二回以上鳴ったということは冒険者に登録している人間はギルドに向かうのが暗黙の了解となっている。

俺は本を戻して司書の方に挨拶を覚まして行こうとしたが、どうやら鐘の音を聞いて何処かへ去ったようだ。


きっと逃げたのだろう。


無理もない…。


「鐘三回は魔物の大群による襲撃だからな」


俺は図書館を出て急いでギルドへ向かうのだった。

久々の更新です。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら幸いです。

よかったら感想、評価、ブクマをよろしくお願いします。


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