新たなる大地
スバッシャン
と水が大地に叩きつけられる音がやけに耳に響く。
「ここで合ってるのか?」
俺こと斎藤優希は同行者たるライド達にその問いぶつける。
しかし、ライド達は既に体力が尽きたかのように倒れており反応がない。
「おーい、生きてるか?」
「あ…旦那…俺達は…」
少しして呼びかけてみるとそんな反応があった。
どうやら死んではいないようだ。
まぁ、丸三週間歩き続けたら確かに倒れたくなる気持ちは分かるがら飯を食べる時の休憩や睡眠時間があっただけ大丈夫だと思うのだが…。
「俺達…ついたんですかい?
勇者が召喚されたとされるアルグラ皇国を中心とする大陸、アルイダ大陸…」
「いや、だからその質問は俺がしてるのだが…」
そう、俺達は三週間歩いたのだ…。
海に穴を開けて海の中を…。
勿論、空気の入れ替えはしっかりと行なっており死ぬような事態も避けている。
「アーグ…どうだ?」
世界儀という魔道具を持っているハーフエルフの男、アーグにライドは聞いていた。
「は、はい…どうやらしっかりと大陸に着いたようです…」
どうやらお疲れのようで精一杯の声を出していた。
無茶はしなくていいのに…。
え、その一番の無茶は誰がやらせたって?いや、だって船を作るにしても時間かかるし早く人に会いたいと思ってたら自然と…。
まぁ、その話は置いといて…俺はとりあえず『イベントリ』の中から新鮮な食料を取り出して体力回復用にご飯を作ることにした。
このまま、彼らを置いていくのも後々困るしな。
「旦那、ありがとうございやす」
「ライド…死にそうな状態でお礼されても説得力が…」
料理を作ってるのを見たライドは何とか立ち上がり頭を下げてきた。
正直、ゾンビみたいである意味ホラーだった。
そうして、俺達は食事をとり動けるようになった。
「それで、これから街を目指すわけだけど…どうするんだ?
そもそも、冒険者のなり方も分からないのだが…」
俺はとりあえず向こうで作って使っていた椅子と机を取り出して会議を開始する。
「そうですね…。
ユウキの旦那は目立ちたくないんでしたっけ?」
「ああ、先代に目をつけられたくないからな」
「そうでしたね。
にしても、未だにユウキの旦那が秩序の魔王には見えませんね」
まぁ、実際俺も魔王になると宣言しても実感がないのだがな…。
「まぁ、覇気もない人間だからな」
「いや、それは充分ありますから」
『…』
あの、皆さん?
無言でシンクロ率100%で頷くのはやめてくれません?
あ、やめないのですか。
ていうか、サムニウムも今混ざっていなかった?
『気のせいです』
そ、そうか…。
「まぁ、冒険者になって目立ちたくないとなると…ステータスやスキルに制限を掛けるしか…。
でも、そんな制限する値を決められる魔道具なんて…」
「そんなことでいいのか?」
「はい?」
直後、俺は『七つの大罪』系列より『傲慢』『怠惰』『色欲』を作動させる。
怠惰は自らの低下、そして傲慢によりそれを制限へと変える。
そこに色欲を混ぜることにより数値としての一時的な封印としての定着化を行った。
その際に俺から鎖が現れて俺に巻きつく。
それが消えた瞬間、俺は集中を解く。
「これでステータスの制限を掛けられたと思う」
瞬間、包み込む静寂が支配した。
「…デタラメ」
その言葉はイカリアから響いた言葉だった。
ていうか、何でそんな化け物を見る目で俺は見られてるのだろうか?
「コホン、とりあえずそこは解決したとして…。
こんな武器で本当に大丈夫なのか?」
俺は一本の鋼の剣を翳して言う。
実は今回の冒険者になるに向けて新人として相応の剣を作ろうとしたわけだが…。
どうやら、俺の作った武器というのはどれもが強力なものでかなり有名な鍛冶師でも作れるか怪しいらしい。
それでかなりレベルを下げて頑張って作ったのがこの剣だ。
正直なまくらで使い物にならないと思う。
俺ならまず命を預けるのはご勘弁願いたかった。
しかし、目立ちたくないならまずは装備のグレードを下げろと言われて仕方なく下げた。
まぁ、防具の方は妥協してもらい災厄との戦いでほぼ大破した制服をベースに改造した外套を羽織っている。竜の素材などは余っていたのが幸いだった。まだ、他にも竜の武具の試作を残している。
「仕方ないじゃないですか。
下手にすごいものを持っていくと目をつけられますよ」
それはそれで困るんだよなー。
となるとここは諦めるしかないか…。
「そろそろ出発するか」
俺は椅子から立ちそういうとライドたちは頷き立ち上がっていく。
全員立ったのを見計らって椅子などをしまう。
「それで町はどの方向にあるんだ?」
そうしておれたちは歩き出すのであった。
****************
時は経ち約三時間後
「へぇ、本当に外壁ってものがあるのか」
俺は初めて見る異世界の町に感動していた。
まぁ正確にはまだ外の外壁の検問待ちだけど。
日本だとコンクリートやレンガでできていそうな高い壁が石で作られていた。こういった文明の差が異世界に来たと実感を与える。
もう、ずいぶん前から異世界なのにあの生活がそんなことを考える余裕をなくしていた。
「そんなに感動しますかねぇ。
俺達は見慣れているせいか感動も糞もないんですがね」
「確かにそうだな。
でも、初めて見たときの感動は凄いぞ。
クドーも外壁はまだしも町並みとか感動しなかったか?
お前だけ別の文化圏から来たようだし」
「まぁ、感動はしたな。
構造物の造りが根本的に違ったわけだし」
やはり昔の日本と似た文化圏がありそうだな。
いずれ行ってみたいがいつになるだろうな。
「にしても、中に入るのにいちいち身元証明するのか…
俺身元の証明するものが無いぞ」
「あ…」
その言葉の瞬間、ライドのやってしまったという表情を俺は見逃さなかった。
「ライド…お前俺の身元証明ちゃんとできるよな?
町に……入れるよな?」
「は、はい!
ちゃ、ちゃんと衛兵に取り合います!」
「本当だな?」
「はい!」
ならよかった。
うまく取り合えなかったら冒険者になれるかなどころではないぞ。
(なぁ、お前らどうやって身元の不明な人間を…)
そう、きっとライドが仲間に相談しているのは気のせいだ。
そう、きっとそうに違いない。
まぁ、さんざんフラグを立てておいて何もなく町には入れたけど、明日までには身分証を作らなくてはならないらしい。
それに関しては冒険者をやれば解決するからさほどの問題にはならない。
「んで、ライド後は冒険者ギルドまで案内してくれればいいよ。
ここまでありがとな」
「いやいや、こちらこそ命を助けてもらった恩もありますし、まだ返し切れてませんよ。
ここが冒険者ギルドだな。旦那、時々でいいから俺達とパーティを組みましょう」
「ありがと、ならその為には早くお前たちと同じAランクにならなくちゃな」
そういって俺は先行して冒険者ギルドの扉を開く。
おっと、今回からは天プレ要素前回になってしまう予感…。
しっかりと考えねば…。
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