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秩序の魔王の順応性  作者: ARS
災厄
24/44

決戦 最終戦 始まりの約束

いや、何かここまで書けたのが奇跡みたい…

そこからの戦いは…いやもはや戦いとは呼べない。

それは最悪たる、ただの災厄のぶつかり合いである。

常人じゃ理解できない…いや、理解することすら間違っている。

戦いがハイスペックとか、速いとかそんなレベルの問題ではない。

まず、生物が辿り着ける限界の先にあるのだ。


一方は元よりその先で生まれ…もう一方は生物を超える事象を持ってして生まれた。

その二つは同じ災厄となり、お互いに殺し合う…いや、呑み込み合う。


傀儡となった魔物はその場で呑まれて死んでいく。

邪魔など、出来るわけがない。

まず、邪魔とは何なのか?


この戦いは理解の範疇を本当の意味で超えている。


優希は剣を持ち、炎と氷の災厄で全てを呑む。

リディアスはこの世の災厄を使い呑む。


お互いにどちらが強いのかなんて簡単な話の筈…だった。

しかし、優希の使うものは理解を超えるイレギュラーなのだ。

故の拮抗…。

お互いに使える攻撃を全て使い、殺しにかかる。

手、足、体、魔法…上げていけばキリがない。

時にはそれらを囮に使い、フェイントを仕掛けていく。

それでも、決着は未だ付かない。


そんな戦いのある遠く離れた場所にてライド率いる冒険者達がその戦いを唯一眺めている観戦者だった。


「なんだ…」


ライドはそう呟き目の前の起きているものを見る。

先程までの戦いを見ているからわかる。

これは人と獣の殺し合いだと…。

しかし、それは今じゃ姿の視認すらままならない。


(これが…本当に殺し合いなのか?

それじゃ、俺達が今までやってきた殺し合いとは何だったのか?)


ライドは今まで修羅場を潜ってきたことを自負している。

勿論、その仲間もだ。

しかし、それを嘲笑うかのごとくいや、遊びやおままごとだと言うかのような次元の違うものが目の前にあった。


他の仲間も同じことを考えて膝を付く。

ただ、次元が違う人間がいただけだと言いたい、思いたい。

でも、それでも…何も出来ない無力であると思い知らされていた。


*******優希*******


決定打に欠けている。

このままじゃ、最悪の場合お互いに死ぬという結果が生まれる。

それは避けたい。

相手のスキルのコピーは済んでいる。

それで、あとは殺すだけだ。

でも、お互いの攻撃は通じない。

粘り合いの対決。

そこには一手一手が己の勝敗どころか生死さえ左右している。


ステータス的にはまだ『相手』の方が高い。

経験と技量だけならこちらが勝っている。

それでも、未だに超えられない壁がある。

全力で攻撃するにしても、倒さなければただの格好の的になるだけだ。


しかし、このままでは俺の敗北は確実…。

剣を魔力で作り出すのも限界がある。

永遠に続くこの打ち合いもそれと共に終わる。

なら、早期決着をつけるしかない。


俺は魔力の剣を握る。


ガインッ!


振るった剣は大きく振動を起こして砕ける。

その瞬間『相手』は確かに止まった。

しかし、すぐさまに体制を整えて動き出す。


くそっ、早すぎる。


けど、間に合え!


「ダイヤモンドダスト」


一つのキーワードを放つ。

それは間一髪のところで成功して、少しずつ全てを凍らせていく。

それは『相手』も例外では無い。

俺の近くから凍り出して身動きが取れなくなる。


これもただの時間稼ぎである。

この程度で『相手』がやられるならとっくに決着はついている。


「『強欲』『暴食』」


まずは魔力の回復を行う。

しかし、三度目となるとやはり供給量が少ない。

仕方ないか心許ないがアレをやるか。


「『色欲』」


これにより、弱い魔物が集まってくる。

その弱い魔物達から魔力を死ぬまで吸い取り、なんとか魔力を全快の三分の一にした。

やはり、心許ないが仕方ない。

これ以上の『色欲』の使用は控えたほうがいい。

『七つの大罪』は慣れると使いやすいが慣れていない能力を使う時は心が侵食されることがある。

故に下手をして使えば俺は死ぬことになる。

そうなったら、生きる為に戦っているのに自分を失っては本末転倒もいいところだ。


だから、今できる最強の一撃をぶつける。


「1000000%」


それだけで俺の体は悲鳴を上げる。

これだけの強化は体への大きな負担となっている。

でも、勝つ為にはこれくらい我慢しないといけない。

俺は歯を食いしばり、次の行動に移す。


「『魔力爆発』『傲慢』『強欲』『憤怒』そして…『嫉妬』」


次の瞬間、俺の体の次に頭が悲鳴を上げる。

とんでもない痛みが俺に走り、俺の意識を一瞬でも刈り取られそうになる。

それでも俺は魔力で出来た剣を握る。

構える…この程度の痛みで倒れる訳にはいかない。

洸夜や香恋、エイナやイリアもきっとこの世界に来て頑張ってる。


「こんなところで、俺だけ死ぬ訳にはいかないんだよ!」


俺は精一杯叫び剣を振り下ろす。

思った以上に抵抗のある肉の感触を味わいながらも切り裂く。

そして、振り終わった時終わった。


そう、思っていたかった。


咆哮が轟く。


それは絶望を呼んでいるのかもしれない。

だって、おかしいだろ?

あれより強くなるって…。


今の状態がどれだけ続くか分からない。

でも、今の最高峰の状態で互角だろう。


俺は再びぶつかり合う。

その瞬間、俺は見た。

『相手』に張り付く糸が…。


その瞬間、俺に隙が生まれる。

ほんの僅かなコンマ1秒にも満たない隙が仇となる。

俺は左腕を軽々と吹き飛ばされる。

そこから、血が溢れ出し止まらない。


俺は一度退いて、よくよく観察する。


「やはりか…」


それは言葉になっていない。

でも、俺は気が付いた。

今、災厄が生きている理由は再生能力と魔力回復そして…あの蜘蛛が使っていた【傀儡】の能力である。

要するに既にもう『相手』は死んでいる。

生きながらえているのは『相手』の異常性と【傀儡】にあった。


勝つ方法は主に二つ。

一つは『相手』が魔力切れを起こすまで戦う。

まずは可能。

今現在してる交戦でも魔力をバンバンに使ってくるがすぐに回復してくる。


最後の一つが望みだ。

再生不可能の傷を負わせることだ。

しかし、それもほぼ無理に近い。

なぜなら今現在が最強の一撃をずっと放っている状態である。

その状態じゃないと未だに災厄と打ち合えない時点でほぼ不可能だ。


逃げる選択肢は無しだ。

確実に明日には骸と化している自信がある。

それだけの差がある。

死ぬのだけは御免だ。


負けるわけにはいかない。

俺は全力で『相手』の攻撃を避けて防いで攻撃して避けて避けて防いで攻撃攻撃防いで防いでと繰り返す。

ただひたすらに…左腕は再生してより速く…。


遅い…速く…。


速く…







速く…







強く…





速く……



……………強く…強く




一体何回めだろう?

腕は折れ、返り血も自分の血も一身に全部浴び続けて…戦う。

戦う度に壊れて戦う度に死に近い状態に陥る。


「まだ…」


俺はひたすら戦う…。


約束の為に…俺はずっと昔に約束した。

生きてみせると…。


そう、あの時の記憶だ…。

今まで曖昧で存在すら分からなかった記憶…。

まだそれより前の記憶を思い出した訳ではない。

でも…あの日の夜…俺は確かに約束した父さんと母さんと…


**************


今の俺が覚えているのは父さんと母さんが俺を連れて走ってるところからだった。

何かから逃げていた。

武装したいくつもの人間が追ってくる。


「チッ、思った以上に早かったな…」


「あなた…」


父さんと母さんがより必死になって走る。

その時だった。

俺が転んでしまったのだ。


「優希!

大丈夫か?」


父さんがすぐに駆け寄り俺を起こす。

そして、父さんは追っ手を見て立ち上がる。


「お前達二人は先に行け…俺はどうやらこれ以上はついて行けないようだ…」


父さんは立ち上がりそういった。


「それなら私も…」


当然、母さんも行こうとするが…。


「馬鹿野郎!

そうしたら優希の面倒は誰が見るんだよ!」


「それでも…あなただけだとどちらにしろ逃げきれないのよ…」


「…」


その言葉に父さんは黙り込んでしまう。

そして、父さんが片手を振るう。

すると、周りは凍りつき道を塞ぐ。


「なら、俺が時間を稼ぐ。

この手紙を兄さんに…。

あの人は事情を知ってるから頼りになるはずだ」


おそらく、父さんは逃げる前から死ぬことを決意していたのだろう。

そして、母さんも…。


「優希…お前は強い子だ。

誰よりも才能がある。

それは決して奪う為のものではない…俺はそう思う。

だからな優希…もしこんなお父さんらしくない俺の言葉を覚えていたなら…約束してくれ。

力は調和を促し秩序を作るものだ。

優希もその秩序を作ってくれないか?」


俺は手を伸ばすことしか出来なかった。

ここで手が届かなかったら二度と届かない…そんな気がしていた。

それは事実だった。

母さんが俺を持ち上げてひたすら走り続ける。

父さんの氷が目まぐるしく舞い続ける。

そして、砕け散る。


それを見たと共にあの時の俺は分かってしまった。

父さんが死んだのだと…。

母さんもそれに気が付いたのか静かに涙を流していたのを知っている。

俺は何も考えられなかった。

少しずつ起こることを否定したくて何も…考えるのを停止しようとしていた。

それは、次の瞬間が決定打になった。


母さんのところまで追っ手が来て追い討ちを仕掛けてくる。

そんな中、母さんの炎が舞い、それは俺達を守るように展開される。


俺は立っていた。

熱く、そして激しい火の中…。

母さんは身体中の至る所に傷があり、どこか痛々しい…。


「優希、あなたは先に行きなさい…。

大丈夫、お母さんもすぐに…」


母さんは死ぬ気なんだとこの場面で思う…。

俺は手を伸ばして首を振ることしかできなかった。


「ううん、大丈夫だよ。

母さんは大丈夫…。

だから、最後にこの言葉を聞いて欲しいな…」


泣きじゃくりながら頷いた。

その姿を見て、母さんは微笑みどこか名残惜しそうな目で見る。

少しだけ涙が流れていた。


「ダメ、私はもう…。

優希…あなたは…私達の……優しい、優しい…とても優しい…たった一つの希望よ。

ごめんね…お母さんはね…お母さんは一度も…母親らしいこと…出来なかった…でもね、お願いがあるの生きて…あなただけでも…導は私が示す…だから生きて…」


俺に炎が纏う…それは導だった。

母さんを一通の手紙を俺に持たせた。


「優希!走って!

振り返ってはダメ!

ずっとずっと先まで…生きて!」


俺は怖くなる。

首を振る。

でも、俺は走る。

泣きながら…母さんの炎が次の場所へと導いてくれる。

俺は全てを閉ざした。

記憶も…感情も…そして俺が叔父さんの家にたどり着いた時には俺は全て記憶を失っていた。


そして、叔父さんは俺に嘘を教え続けた。

母さんと父さんのことを思い出さないように…。


**************


何度も飛びそうになる意識の中で俺は約束を思い出していた。

そう…約束をだ…。


俺はひたすらに攻防戦を続ける。

それは思った以上に長く…。

約束したんだ…生きるって…約束したんだ…作り出すって…。


だから、ここでは終われない!


底力で俺は今、戦っている。

もう、魔力も精神力も全て尽きかけている。

それでも俺は何度も立ち上がる。

俺は約束したんだ。

だから、俺は戦う。

『相手』の攻撃は段々と強くなっていく。

一方で俺の攻撃は弱くなっていく。

もう、残された時間は僅か数秒である。


勝ち目は…無い。


でも、だからって諦められない。

約束を守る。

それだけでいい。

今はそれだけを考えればいい。

倒れるわけにはいかない。

この身が果てるその時まで俺は戦い続ける。


理不尽がどうした?


絶望がどうした?


弱さがどうした?


恐怖がどうした?


痛みがどうした?


強さがどうした?


劣等感がどうした?


苦悩がどうした?


悔しさがどうした?


そんなもので一々止まってられない…俺は…約束を守る。

あいつらを守る。

そして、傲慢に自己中に自分勝手に傍若無人に独裁的に魔王らしく…全てを…。


瞬間、全てが加速すると同時にスローモーションのような不思議な感覚に囚われる。

身体は砕け、血だけになってるのが正確に見える…。

不思議と痛みも何も無い。

何も感じない。

俺は踏み込む。


血がにじみ出て身体は軋み出す。

それでも俺は止まらない。

もう止まることを忘れている。

ただ、一つの勝利を収めるために俺は更に踏み込む。


「超越せよ【暴食】の顕化よ!」


その瞬間、俺の中で一つのものが暴れる。

それは一瞬のうちにして全てを喰らい尽くす。

それでも『相手』は死なない。

だから言える。

理不尽がなんだ?

動じない?

分かり切ってるじゃ無いか?

なら、やることは一つだろ?

単純明快で最も難しいこと…。


『相手』俺の領域にまで追いつく。

この速さに追いついてくる。

でも…もう遅い。

俺は全てを…


「超越する‼︎」


振るわれる剣は暴食の顕化である。

それは『相手』の魔力の全てを喰らい尽くすことを意味していた。


スドンッ


その一線は地形を丸ごと変革させて『相手』は確かな死を迎えた。


「勝った…だよな?」


意識が失せていく。

散々無理させたツケが回ってきたのだ。

それでも俺は立とうとし続ける。

まだ、終わった気がしなかっから…。


そして、俺の目の前は真っ暗になった。

気付いた時には俺は立ちながら気絶していたのだ。

この話は一気にいろんなものが詰め込んでいますね。

ていうことでそろそろ次章に入ります!


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って頂けたなら幸いです。

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