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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
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第92話 『舞踏会への道すがら』

「それではボクは玄関で待ってるから」

「はい、少々お待ちください」

「急いで着替えてすぐに行きますね!」


舞踏会当日。

既に着替え終えたボクは玄関へ。

教育係とメイドはこれから着替えだ。


先年とは逆の立場で教育係達を待つ。

今年は変装せずに赤髪赤眼のまま。

ごでごてした装飾過多の正装を着て。

かつかつと廊下を進むと使用人が礼を。

皆一様に跪いて花道を作ってくれた。


そんな仰々しい真似をされると困る。

照れ臭さもあり、妙にこそばゆい。

というか、皆笑ってるんじゃないか?


金糸があしらわれた豪奢な正装。

王位継承者としての立場を示している。

けれど、似合うかと言えば疑問だ。


この手の服は恰幅の良い方が似合う。

ボクはひょろひょろで生地が余る。

だから自分では自信がなかったのだが。


教育係とメイドからは好評だった。


『可愛くはないですが、凛々しいです』

『可愛さとのギャップが堪りません!』


とのこと。褒められているのだろうか。

しかしながら、悪い気はしない。うん。

だが、どうにも長ズボンは慣れないな。

最近スカートばっかり履いてたから。

それに首元も窮屈だ。詰襟は大変だ。


そんな風に落ち着きなく待っていると。


「おまちどおさまです! 殿下!!」


やけにテンション高いメイドが現れた。

ボクが見繕った純白のフリフリドレス。

プリンセスラインが可愛らしさを演出。

まあ、演出するまでもなく可愛いが。


パタパタ走って寄ってくる銀髪メイド。

子犬みたいで可愛いが、走ると危ない。

ボクが注意する前に、メイドがこけた。

まるで去年のボクのように。デジャブ。


「ぶぎゃっ!? うぅ……痛いですぅ」


純白のドレスの下の純白のパンツ。

いつもながら綺麗に丸見えになる。

銀髪メイドのこけ方は、芸術的だ。


「やれやれ。ほら、大丈夫か?」

「は、はい。それより、どうですか?」


手を取って立たせるとメイドが回転。

ドレスの裾を摘んで、恭しく一礼。

先ほどの失態が嘘のように可憐な仕草。


「とても良く似合ってるぞ、メイド」

「えへへ。ありがとうございますぅ!」

「よし、それじゃあ行くか。舞踏会に」

「はいっ! ワクワクテカテカです!」


メイドを共なって玄関の扉に手をかけ。

そこでふと、違和感に気付いた。あれ?

なんだか大事な奴を忘れているような。


おや? 背後から殺気を感じる。やば。


その瞬間、危険度センサーが急上昇。

全てを察して、忘れ者を振り返る。

当然、そこには仁王立ちした教育係が。


「お待たせしました、殿下」

「きょ、教育係、遅かったな」

「私はドレス姿で走ったりしないので」

「さ、さすが教育係。大人の余裕だな」

「その余裕にも限度がありますけどね」


むすっとした教育係。激おこぷんぷん。

こんな時は褒めよう。そうしよう。

伊達に恋人ではないところを見せよう。


「おおっ!なんと美しい!天使かな?」

「ご希望ならば天国に案内しますが?」


ぐぬぬ。教育係め。口の悪い奴だ。

けれど、この程度でめげたりはしない。

奴の口の悪さは慣れた物。まくるぜ。


「お前が傍に居ればどこでも天国さ」

「ッ……ほ、ほんとでしゅか……?」


ほらみろ! 食いついた! やった!

モジモジするチョロい教育係。可愛い。

ボクは一気に傍まで寄って手を取る。


「さあ、レディ。舞踏会の時間だ」


一度は言って見たかったこの台詞。

それを口にすると教育係は悔しそう。

口を尖らせながらも、右腕を絡ませる。


「殿下は女ったらしです」

「褒め言葉と受け取っておこう」


憎まれ口も慣れた物だ。全然怖くない。

そっと身を寄せてくる奴が愛おしい。

いちゃいちゃしてるとメイドが騒ぐ。


「殿下殿下!私も腕が組みたいです!」

「いいとも。では、舞踏会へ行こう」

「もぅ……殿下はメイドに甘すぎです」


快諾すると教育係が愚痴をこぼす。

けれど、笑顔だから怒ってはいない。

右に教育係、左にメイドを引き連れて。


ボクは玄関の外へと、踏み出した。


「いつの間にか、お背が伸びましたね」

「そうか?」

「ええ、とても頼り甲斐があります」


黒塗りのリムジンへと向かう道すがら。

教育係が不意にそんなことを口にした。

言われてみると、奴の顔がすぐ隣。

とはいえ、まだ教育係の方が高い。

そのうち追い越せるだろうかと夢見て。


ボクらはリムジンの中に乗り込んだ。


「すっごく広いクルマですね!」

「ああ、5〜6人は座れそうだな」

「ささ、殿下。私の隣にお座り下さい」


はしゃぐメイドと感激するボク。

教育係はいつも通りにマイペース。

速やかにボクの右隣を確保。早業だ。


左隣のメイドは大興奮。微笑ましい。

そわそわしながら窓の外を眺める。

長くて広いリムジンが動き始めた。


ボクらを乗せて、舞踏会へと向かう。


「殿下、お手を拝借します」

「ん? 何をするつもりだ?」

「くふっ。こうするのですよ」


いきなり手を取ってきた教育係。

何をするかと思えば太ももに乗せた。

優雅に足を組んだ、長い奴の太もも。


そこでふと気づく。奴の生足が露わに。

赤と黒の移り変わりが美しいドレス。

スレンダーラインの裾ににスリットが。

いつの間にやら改造していたらしい。


そんな妖艶な奴の生足に直に触れる。

すべすべだ。そして滑らか。えっちだ。

ドキドキしてると奴が奥へと誘う。

そのままパタンとスリットを閉じる。

ボクの手をドレスの中に仕舞ったまま。


どうしていいかわからず困惑してると。


「ドレスの下はノーパンですよ」

「ッ!?」


ド変態発言を囁かれ、悶絶。やばい。

そしてそのままほっぺにキスをされた。

教育係め。これはさっきの仕返しか?


ボクはなす術なくその罰を受け入れた。


メイドに甘くした罪は、重かった。

しかし、ただされるがままは良くない。

ボクにだって意地がある。負けない。


教育係をくすぐるつもりで手を動かす。

スカートの中で、太ももを弄ってみる。

すると、奴は意地悪な笑みを浮かべた。

それで悟った。これは罠だったのだと。


「変態」

「ひぐっ!?」

「くふふっ。殿下は悪い子ですね」

「ご、ごめんなさい」


耳元で変態と言われた。変態教育係に。

自尊心は打ち砕かれ、心が折れた。

素直に謝罪するとまた頬にキスされた。


ボクの教育係は、本当に容赦ない奴だ。

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