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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
87/111

第86話 『武道会』

「さあ、始まりました武道会!」

「始まったな」

「司会は私とデンカちゃんです!」

「よろしく、三つ編み眼鏡」


とうとう始まった武道会。

実況ブースにはボクと三つ編み眼鏡。

どうして彼女が司会かを説明しよう。


その理由は三つ編み眼鏡は美声だから。

父親の選挙でウグイス嬢を勤める彼女。

マイクを使ったパフォーマンスは得意。

反面ボクは人見知りなので苦手である。


その為桃髪の姫君と交代したいのだが。


『私は貴賓席で接待をするから無理よ』


との理由であっさり却下。

仕方なくボクが司会を勤めることに。

ちなみに貴賓席はすぐ真後ろにある。


本日の主賓は国王陛下。父上だ。

遥々学園までお越し下さった。

付き人は将軍と国会の議長。

オレっ娘と三つ編み眼鏡の父親だ。

彼らを従えて父上は貴賓室に来た。

満員の観客に先ほど挨拶を賜った。


要約すると、こんな内容だ。


『武道会にて強い兵が育つことを願う』

『余が学生時代には3年連続優勝した』

『よって、次代の覇者が決まる大会だ』


そのように熱く語り、選手を鼓舞した。

特に学生時代の自慢話が長かった。

辟易としていると、最後に余計な事を。


『いずれ我が子も覇者となるだろう』


いや、無理だから。絶対無理だよ。

実況席で大会を間近で見て悟っていた。

貴族や高官の子らは恐ろしく腕が立つ。


試合形式は木刀を使った決闘方式。

選手達は全身にプロテクターを纏う。

頭にもベッドギアを付けて打ち合う。

怪我をしないように配慮してある。


怪我人は白衣の天使の治療を受ける。

それはナース服を着た黒髪ロング。

可愛くて癒やされる。素晴らしい。


一定の衝撃が防具に伝わると試合終了。

会場中央のスクリーンに判定が出る。

先に相手に致命打を与えた方が勝ちだ。

とても簡単そうに見えるが奥は深い。


大抵の選手は木剣を振るい攻撃する。

けれど、中には例外もいる。化物達だ。

ちょうど、ボクの教育係の試合が開始。


その化物っぷりを解説しよう。


「おっと!対戦相手が仕掛けました!」

「不用意だな」

「ああ!打ち合った木刀が粉々に!?」

「勝負あったな」


対戦相手が振り下ろした木刀。

次の瞬間には粉々になっていた。

同じ木刀でも太刀筋が大きく違う。


相手を無力化した教育係が背後に回る。

そして背中に掌底を叩き込む。

その瞬間。ブザーと共に試合終了。


木剣などを使わずとも致命打を打てる。

ボクの教育係が化物すぎて怖い。

そんな奴がにっこり笑って手を振る。


もう。本当にかっこいい。

実況など忘れて手を振り返す。

観客席から黄色い歓声が沸き起こった。


「さすが主席様ですね」

「うん。カッコ良すぎて困っちゃう」

「デンカちゃんも可愛すぎて困ります」


今日の三つ編み眼鏡は一味違う。

ノリノリの合いの手で会場を沸かす。

マイクを持つと饒舌になるらしい。


「さあ、お次の試合はダークホース!」

「桃色髪の姫君の召使いの試合だな」

「彼の奇妙な立ち居振る舞いは必見!」


三つ編み眼鏡の言う通り。

召使いの立ち居振る舞いは奇妙である。

なにせ彼は木刀を構えない。


今もだらんと下に向けたまま。

試合が始まっても自然体。

おまけに欠伸までして目をこする。


それを見た対戦相手が激怒。

大振りの一撃を叩き込もうとする。

しかし、次の瞬間。彼が消えた。


「召使いさんが消えた!?」

「対戦相手の死角に潜り込んだな」

「突然背後に現れた!そしてブザー!」

「全然見えなかったな」


召使いは勝利後すたすたと帰る。

どこに致命打を入れたのだろう。

スクリーンを見ると致命箇所は脛。

すれ違いざまに脛を蹴ったらしい。


見事な早業。しかし地味だ。

対戦相手は呆然と立ち尽くしている。

観客もどう反応したらわからず困惑。

そこに桃色髪の姫君の文句が響き渡る。


「うつけ! 真面目にやんなさいよ!」

「すみませんね、体力不足なもんで」


そんな姫君の声に気怠げに返事する彼。

面倒くさそうに片手を振って休憩所へ。

恐らく、体力を温存しているのだろう。


来るべき、強敵との対戦に備えて。


「あっと言う間に準決勝ですね!」

「ああ、滞りなく進んだな」

「対戦カードは期待通りとなりました」


第1試合


【召使い VS スケバン】


第2試合


【教育係 VS オレっ娘】


この戦いの勝者が決勝に駒を進める。

期せずして生徒会対風紀委員となった。

この中から、優勝者が決まる。


優勝景品はデート権。

ボクか姫君かを優勝者が選べる。

それを逃した敗者達は泣いて悔しがる。

姫君とデートしたかったのだろう。


そんな中、スケバンの要求は異なる。

彼女はオレっ娘とのデートを希望。

事前に申請されたその要望を受理した。

だって、その方が面白そうだから。


それをあとから知ったオレっ娘は憤慨。

今も選手控え室から野次を飛ばしてる。

召使いに向かって、大声で。


「負けたら承知しねーかんな!」

「デートくらいしてやれよ」

「オレはデンカとデートしたいんだ!」


喚く風紀委員長をいなす召使い。

早くもげんなりして、戦い辛そう。

対してスケバンは闘志剥き出しだ。


「絶対に私が勝つ」

「そんな怖い顔すんなよ」

「黙れ。ヘラヘラするな」

「せっかくの美人が台無しだぜ?」

「んなっ!?」


召使いの歯の浮くような台詞。

初心なスケバンが赤面して動揺。

貴賓席から桃色髪の姫君の怒声が響く。


「こら、うつけ! デレデレしない!」

「こりゃ失敬。んじゃ、始めっか」


そこで試合開始のブザーが鳴る。

気を取り直したスケバンが構える。

凛とした気迫が漲っている。強い。


相手の力量を察した召使いも構えた。


初めて下段に木刀を構える召使い。

静かに上段に構えるスケバン。


ようやく、召使いの本気が見れる。


と、思いきや。


「だぁあああああああああっ!!!!」

「うひぃっ!? あっぶねぇっ!?」


上段からの凄まじい切り下ろし。

下段からそれを受け止める召使い。

しかし、止め切れずに仰け反る。


間髪入れずに胴を薙ぎ払うスケバン。

召使いは這うようにして逃げ出した。

それはもう、一目散に逃走を図った。


「おい! 逃げるな! 恥を知れ!!」

「うるせぇ!力で勝てる訳ないだろ!」


そのまま追いかけっこが始まった。

会場に弛緩したムードが漂う。

準決勝にして、なんたる無様。

桃色髪の姫君も憤死寸前だ。


しかし、召使いは至って真面目らしく。


「おい!お前に聞きたいことがある!」

「問答無用ッ!!」

「どぉあっ!? いいから答えろ!!」


木刀をかわしながら質問をする召使い。

力では勝てないと見て、口撃をする。

その質問はスケバンに致命打を与えた。


「委員長とデートして何をする気だ!」

「お、お前には関係ないだろう!?」

「じゃあ、当ててやるよ」

「ふぇっ?」

「あの八重歯で、噛まれたいんだろ?」

「ッ!?」


どうやら図星だったらしい。

スケバンの攻撃が止まった。

息を荒げながら、召使いが囁く。


「どこを噛んで欲しいんだ?」

「わ、私は、別に……」

「太ももだろう?」

「なっ!?ど、どうして太ももだと?」

「前に叩かれたらしいじゃねぇか」

「た、確かに、叩かれたけど……」

「それから疼いて仕方ねぇんだろ?」

「うぅ……そ、そんなことは……」


召使いがスケバンを追い詰める。

どうやら太ももを噛まれたいらしい。

以前、オレっ娘に叩かれた太もも。

ボクに因縁をつけて叱られた時だ。

それから太ももが疼いているらしい。


きっとボクのメイドと同じ病気だろう。


「試合が終わったら頼んでみろよ」

「そ、そんなの恐れ多くて……」

「委員長は優しいから平気だって」

「確かに若様は優しくて、寛大で……」

「うんうん。それ、隙あり!」

「ぐあっ!? ひ、卑怯だぞっ!?」


すっかり口車に乗せられたスケバン。

隙を突かれて致命打を叩き込まれた。

皮肉にも、話題に上った、太ももに。


その瞬間、試合終了。勝者は召使い。

あまりに卑怯な勝利。ずるすぎる。

当然、会場からはブーイングの嵐。


それを受けて気持ち良さげな召使い。


そんな彼に姫君から制裁が下される。


「うつけ、幻滅したわ」

「そ、そりゃないぜ、姫さん!?」

「あんたに期待した私が馬鹿だったわ」

「勝ったんだからいいだろうが!」

「勝ち方に問題がありすぎよ!最低!」

「わかったよ!次はちゃんとやるよ!」


平謝りをする召使い。無様だ。

けれど、底が知れない。不気味だ。

そんな彼の次の相手を決める第2試合。


「いよいよ、大本命同士の試合です!」

「教育係とオレっ娘の決戦か」

「デンカちゃんの予想はどうです?」

「確かにオレっ娘は強敵だ。しかし」

「しかし?」

「教育係は必ず勝つと約束した」

「なるほど。かなりの気合いですね」


そんな惚気話をつい口走る。

観客は盛り上がったが、恥ずかしい。

自重しなくてはと思ったら目が合った。


教育係がにっこりと微笑んできた。

とても嬉しそう。なら言って良かった。

しかし、オレっ娘はイライラしてる。


「何が必ず勝つだよ。ほざけ!」

「吠えるのはメス犬の貴女の仕事です」

「絶対にデンカは渡さねぇかんな!」

「初めから、貴女の物ではありません」


犬歯を剥き出しにして唸るオレっ娘。

飄々と受け流す教育係。煽る煽る。

そんな両者に会場も盛り上がる。熱い。


熱気と殺気が充満する第2試合。


試合開始のブザーと共に激闘が始まる。


「おらぁっ!!」

「くっ! なんて動きを……!」


オレっ娘が速攻を仕掛ける。

低い身長を生かして、懐に潜る。

堪らず距離を取る教育係。

しかし、瞬発力はオレっ娘が上だ。


「おらおらおらおらおらっ!!!!」


上、下、右、左。あらゆる方向から。

目にも止まらぬ斬撃を繰り出す。

教育係は防戦一方で耐え凌ぐ。


「よぉーし。準備運動は終わりだ」

「なっ!? まだ、加速する……!?」


不敵に笑い、更に加速するオレっ娘。

速い。速いなんてものじゃない。

薄緑色の残光が辛うじて視認できる。


正面から背後から、死角を的確に叩く。

教育係の表情に焦りが見える。

見誤っていたのだろう。彼女の力量を。


「確かに恐るべき速さです」

「へっ。もう降参か?」

「調子に乗らないで下さい。小娘が」

「なっ!?」


教育係が無造作に手を伸ばす。

虚空から何かを掴むような仕草。

次の瞬間。オレっ娘が距離を取る。


どうやら、掴まれる寸前だったらしい。

つまり、それが意味することは。

教育係が彼女の動きを、見切ったのだ。


「馬鹿な!オレの動きを見切った!?」

「いえ、見えていませんよ?」

「だが、今確かに掴もうと……」

「くふっ。勘ですよ、勘」


ぞくっとした。勘で掴もうとしたのか。

あれだけの攻撃を捌きながら。勘で。

ただ、当てずっぽうに手を伸ばし。

オレっ娘の軌道を、勘で感じ取った。


何という戦闘勘。センスと呼ぶべきか。

ボクの教育係は圧倒的すぎた。

凡人と天才の隔たりが垣間見えた。


しかし、オレっ娘とて非凡な少女だ。

このままやられっぱなしな訳がない。

必ず仕掛けてくる。必殺の、一撃を。


「しゃあねぇ。奥の手を出すか」

「来なさい。胸を貸してあげます」

「貸すような胸じゃねぇだろ?」

「遺言は、それだけですか?」


戯言を交わし合う2人。

しかし、雰囲気はひりついている。

じりじりと、互いの間合いをはかる。

観客達も固唾を飲んで静まり返る。


次の一合で、決着が着く。

誰しも確信していた。理解していた。

当事者達も、そのつもりだ。


静寂をぶち破って仕掛けたのは。


オレっ娘だった。


「秘剣! 燕返し!!」


下段からの斬撃。とても速い。

一瞬で3連撃を同時に放った。

同時。そう、同時だ。全く同時に。


まさに飛ぶ鳥を落とす秘剣。

防御は不可能。一撃を防いでも無駄。

残りの二撃が致命打を与える。


絶体絶命の危機を迎えた教育係。

万事休すかに思われた、その時。

教育係の木刀が、閃いた。


「我流、燕返し……返し!」


燕返しに、燕返しで返す。離れ業。

中空で斬撃が衝突する。三度の衝撃。

オレっ娘の必殺技は見事に返された。


「そ、そんな……馬鹿な……!」

「ふん。まだまだですね」

「うあっ!?」


愕然とするオレっ娘に肉薄。

無造作に胴を薙ぎ払う。

慌てて飛び退くが時既に遅し。


オレっ娘の胸部に致命打が打たれた。


その瞬間、試合終了のブザーが鳴った。

オレっ娘は敗れ、奴が勝った。

ボクの教育係が、決勝戦に進出した。


「くそっ。やられたぜ」

「小娘にしては上出来でしたよ」

「畜生。もっとキツく巻けば……」

「なんのことです?」

「サラシが緩かったから負けちまった」

「は?」

「最近胸が邪魔になってきたんだよ」

「あ?」


どうやらオレっ娘の胸は成長中らしい。

その為、胸部に致命打がヒット。

なんだろう、教育係が惨めだ。


試合に勝って勝負に負けた、みたいな。


ともあれ、勝ちは勝ちだ。

教育係はやっぱり最強だ。小さくても。

最強の無乳だ。胸なんてなくても強い。


あ、怖い顔された。

やばい。おしっこ漏れそうだ。

今日の教育係は、本気で怖い。


と、とにかく、決勝戦だ。

これで本当に最強が決まる。

そしてボクの悲願まであと一戦のみ。


【教育係 VS 召使い】


ボクの教育係は、最後の決戦に挑む。

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