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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
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第76話 『三つ編み眼鏡のお悩み』

「むっ?」

「如何しましたか?」

「三つ編み眼鏡が何やら困ってるぞ」

「ふむ。そのようですね」


その日の昼休み。

メイドのお弁当を食べ終え、気づいた。

三つ編み眼鏡が何やら困っている。

頭を抱えて、ため息を繰り返す彼女。

とても深刻な悩みを抱えている様子。


妃候補が困っているなら見過ごせない。

ボクは三つ編み眼鏡の席に歩み寄る。

そして、彼女の悩みを聞くことにした。


「うぅ……どうしよぅ……」

「三つ編み眼鏡」

「ふぇっ?」

「何か、困っているのか?」


三つ編み眼鏡は顔を上げて、硬直。

しばらくすると目に涙が溜まってきた。

ぎょっとして驚くボクに縋り付いた。


「デンカちゃ〜ん! 助けてぇ〜!!」

「ど、どうしたんだ。何があった?」


いきなり助けろと言われても困る。

泣きじゃくる彼女の背中を撫でてやる。

すると、幾分か落ち着いて訳を話した。


「友達が怖い映画を貸してくれて……」

「怖い映画?」

「はぃ……ホラー映画なんですぅ」


彼女はホラー映画を借りたらしい。

その怖い映画に怯えているようだ。

けど、観る前から怯えるのはおかしい。


観たくないなら、観なければいいのに。


「お前はホラー映画が苦手なのか?」

「はぃ……大の苦手でして……」

「だったら観なければいいだろう?」

「貸してくれた友達に悪い気がして」


なるほど。そういうことか。

三つ編み眼鏡は優しい娘だ。

貸してくれた恩に報いようとしている。

ならば、その心意気を買ってやりたい。


「ちなみにどんな映画なんだ?」

「えっと、超常現象を題材にしていて」

「超常現象?」


それにどんなホラー要素があるのか。

意味がわからなくて、首を傾げるボク。

三つ編み眼鏡は映画の箱を差し出した。


パッケージには暗い雰囲気のベッドが。

このベッドで超常現象が起きるらしい。

正直、ボクもホラーは苦手だ。怖いし。


けれど、少しばかり、興味が湧いた。


「教育係」

「はい、如何しましたか?」

「この映画はボクの部屋で観れるか?」

「ええ、もちろんでございます」


背後に控える教育係に確認を取る。

映画は問題なく観れるとのこと。

ならば、ボクが取るべきはただ一つ。


三つ編み眼鏡と一緒に観てやろう。


そう決断して、口を開こうとした。

そんなボクに教育係が忠告する。

奴は薄気味悪い声音で、こう語る。


「どうなっても、知りませんよ?」


それにボクは取り合わない。

いつもの奴の趣味の悪い冗談だろう。

この時ボクは、そう思っていた。


それがまさか。

あんなことになるなんて。

夢にも思っては、いなかったのだった。


「三つ編み眼鏡」

「は、はぃ……」

「今晩、ボクと一緒にそれを観よう」

「ほ、本当ですかっ!?」

「ああ。一緒に観れば、怖くないさ」


画して、ホラー映画鑑賞会が開かれた。


「し、失礼しますぅ」

「よく来てくれた。ほら、近う寄れ」


学園から帰宅後。


おずおずとやって来た、三つ編み眼鏡。

ゆったりとした部屋着。胸元が緩い。

それを庇うように手を添えている。

いや、だったら着なければいいのに。


そんな彼女を手招いて、席に座らせる。


「とりあえず、夕食を食べてしまおう」

「あ、ありがとうございますぅ!」


早めに夕食を済ませておく。

寝るだけにしてから、上映開始だ。

銀髪メイドがテキパキと給仕。

三つ編み眼鏡は緊張している様子。


談笑でもして気を紛らわせてやろう。

そうだ、今日は彼女を姉と呼ぼうか。

そう企んだボクが口を開くよりも早く。


教育係が、余計なことを、口走る。


「お酒でも飲んだら如何ですか?」

「お、お酒ですか……?」

「はい、恐怖心も幾らか薄れるかと」


三つ編み眼鏡に酒を飲ませようとする。

それは確かに、恐怖心は薄まるだろう。

けれど、新たな恐怖が目覚めてしまう。


酒乱娘が爆誕することを怖れるボク。

慌てて止めようにもメイドが酒を注ぐ。

どうしてこんな時だけ優秀なんだよ。


「それでは、頂きますっ!」

「はい、沢山飲んで下さいね?」


ぐびぐび飲み始める三つ編み眼鏡。

教育係は彼女を煽り立てる。

こいつ、何か企んでやがる。


そんな奴に、一応念を押しておこう。


「教育係」

「はい、なんでしょう?」

「お前は絶対に飲むなよ」

「ええ、心得ております」


教育係は酒を飲む気はないらしい。

それならば、最悪の事態にはなるまい。

安心して、ほっと胸を撫で下ろす。


それが、悪質な作為だとは、露知らず。


「殿下ぁ〜! 殿下ぁ〜!!」

「な、なんだ?」

「やっぱり観るのをやめましょうっ!」


ワインボトルを空にして。

案の定、出現した酒乱娘。

ボクの耳を引っ張りながら、喚いた。


やっぱり映画を観るのを、やめようと。


「それでは本末転倒ではないか」

「なら、代わりの物を鑑賞するれす!」

「代わりの物……?」

「はいっ!私のお胸を見るのれすっ!」


なんか、訳わかんないこと言い出した。

映画の代わりに、自分の胸を見ろと。

だが、流石にそれは……いや、待てよ?


三つ編み眼鏡は巨乳である。

たゆんたゆんと、果実が実っていた。

しかし、普段の彼女はシャイだ。

その胸を拝める機会など早々訪れない。


けれど、今の酒乱娘は大胆だ。

きっと簡単に見せてくれるだろう。

それは後学の為にとても役に立つ。


具体的に言うと。

妊娠後の自分の姿を想像できる。

きっとボクもこうなるだろうって。


ホラー映画と、巨乳。

どちらが良い教材かは一目瞭然だ。

怖い映画など、怖いだけだ。

だけど巨乳は、高みを示してくれる。


その高みを。

遥か高みを夢見て。

ボクはその頂に、手を伸ばそう。


「それは名案だな」

「でしょ?殿下が脱がしていいれすよ」

「それは本当かっ!?」

「はいっ!ガバッとやってくらさい!」


なんと。

高みに手が届く機会が訪れるとは。

ボクは迷わずガバッとやろうとして。


「はい、おやすみなさいませ」

「んきゃっ!? くきゅぅぅ……」


手刀一閃。

一撃で酒乱娘の意識が奪われた。

つまり、いつも通り、阻まれた。

それは、高みへと至る道の最大の障害。


教育係に、邪魔を、されたのだった。


「まったく、本当に困った痴女です」


そのまま奴は酒乱娘を毛布で包む。

あっと言う間に簀巻き酒乱娘が完成。

それをゴロンとソファに転がす奴。


そんな教育係を悔し紛れに叱りつける。


「おい、あまり手荒なことはするな」

「殿下は雰囲気に流されやすいので」

「えっ? いや、そんなことは……」


思い当たる節があり過ぎて困る。

閉口するボクをよそに奴はいそいそ。

例のホラー映画をプレーヤーにセット。


そんな奴を不思議に思って、尋ねる。


「何をしてるんだ?」

「ホラー映画を観ようかと」

「いや、三つ編み眼鏡は寝ているぞ」

「全ては私の計画通りなのですよ」


真っ黒い笑みを浮かべる教育係。

そこでボクは悟った。

どうやら奴に、嵌められたようだと。


「さあ、殿下。ホラー映画の時間です」


ボクの教育係が再生ボタンを、押した。

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