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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
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第75話 『宇宙開闢以来の摂理』

第75話


「むっ? 誰か来たようだな」

「こんなに夜更けに誰でしょうか?」


ある日の夜のこと。

夕食を食べ終え、あとは寝るだけ。

そんな夜更けにノックの音が響いた。


訝しみながらも、教育係が扉へ向かう。

そして扉を開くと、そこには。

ボクの妃候補のオレっ娘が立っていた。


「何しに来たのですか、小娘」

「夜這いしに来たぜっ!!」

「お引き取り願います」

「ちょっ!? 待っ……」


即座にパタンと扉を閉める教育係。

すると、オレっ娘が慌てて扉を開く。

そして、憤慨した様子で喚いた。


「なんで扉を閉めんだよっ!?」

「害虫の入室はお断りしてますので」

「誰が害虫だよっ!?ふざけんな!」


部屋の入り口で喧嘩を始める2人。

その喧騒で、すっかり目が冴えた。

まあ、夜這いはともかくとして。

せっかく訪ねてくれたオレっ娘。

無下にすることは、出来なかった。


「教育係」

「はい、すぐに駆除しますので……」

「いや、部屋に上げてやれ」

「むぅ……殿下は小娘に甘すぎです」


嗜めると、教育係はむくれた。

じと目でボクを睨みつつも渋々納得。

扉の前から退いてオレっ娘が入室した。


そのオレっ娘の装いに、驚く。

今日の彼女はいつもと違っていた。

何というか童話のお姫様みたいだった。


「部屋に入れてくれてサンキュー!」

「あ、ああ……それよりも、オレっ娘」

「あん? どーかしたか?」

「その格好は、どうしたんだ?」


薄いヒラヒラした布で作られた服。

肩が露出した丈が短めのワンピース。

短めというか、短すぎだ。極めて。


いや、これは、本当に服のなのか?

どちらかと言えば、下着のような。

ところどころ透けていて、エロい。


しかし、1つだけ、確かなことがある。


「へへっ。可愛い?」

「うん。とっても、すっごく、可愛い」

「やたーっ! ありがとー!!」


嬉しそうに飛び跳ねて喜びを表す。

オレっ娘の未成熟な瑞々しい肢体。

それを際どく隠すヒラヒラの薄布。

まるで、幼い女神の羽衣のように。


オレっ娘のギャップの力が炸裂した。


「勝負服を着た甲斐があったぜ!」

「勝負服?」

「ああ、ベビードールを着てみた!」


この服はベビードールというらしい。

そしてオレっ娘の勝負服とのこと。

何と戦うのかは知らないがきっと勝つ。

そんな強大な力をひしひしと感じた。


そしてオレっ娘が可愛くおねだりする。


「今日はこの格好で一緒に寝たいの」

「その格好で?」

「うん。ダメ……かな?」

「全然ダメじゃないよ!大歓迎だよ!」

「嬉しいっ! 殿下、ありがとー!!」

「こっちこそ、ありがとー!!」


ボクは迷わず同衾を承諾した。

そして両手を合わせてハイタッチ。

お互いの手をぎゅっと握り合う。


オレっ娘がボクの額におでこをつける。

そのままぐりぐり。薄緑色の瞳が近い。

眩い光を放つ瞳、妖しく輝く八重歯。

そのまま彼女はボクに抱きついてきた。


思わずよろけて、ベッドにダイブ。

オレっ娘はそのまま頬をすりすり。

彼女の柔らかい頬が、心地良い。


それに密着すると、はっきりわかる。

薄い布ごしの、彼女の身体の起伏が。

ダイレクトに、様々な感触が伝わる。


微乳が、ボクの無乳に擦り付けられる。

嫉妬心がないとは言えない。羨ましい。

けれど、それ以上に、気持ち良い。


オレっ娘のあっつい体温が、吐息が。

みるみるうちに、魔法のように。

ボクの嫉妬心を、優しく溶かしていく。


自分に無い物を彼女が持っている。

それは、確かに悔しい。辛いことだ。

だけど、けれど、同時に嬉しく思う。


ボクが無乳なのは仕方ない。現実だ。

だが、ボクの理想は彼女が叶えた。

オレっ娘の身体に、ボクは夢を見た。


理想を、夢を、現実にもたらしたのだ。


ならば、それを恨むの御門違いだ。

だって、それは素敵なことだから。

自分の夢を、オレっ娘が叶えてくれた。


そのことに感謝して、感激して。

この嬉しさを、喜びを、感動を。

それら全てを、言葉に代えて。

ボクはオレっ娘の耳元にそっと囁く。


「ありがとね、オレっ娘」

「んにゃ? 突然、どうしたの?」

「とっても、嬉しかったから」

「……殿下、可愛すぎ」


ストレートに感謝を伝えた。

すると、オレっ娘の目つきが変わった。

首を傾げると、彼女の手が伸びる。


「だ、だめだよ、そんなとこ触っちゃ」

「ちょっとだけだから……な?」

「あっ……ちょっとなら……うん」


オレっ娘の手がボクの服の中に。

素肌に触れられて、困ってしまう。

だけど、ちょっとだけなら。

いっぱいじゃなければ、いいよね?


だってとても良い雰囲気だもの。

それに水を差すなどボクには出来ない。

そう、ボクには、出来ない……が。


もちろん、教育係が、水を差した。


「はい。そこまでです」

「ああっ!? 邪魔すんなよ馬鹿!!」

「馬鹿は貴女です。この淫魔めっ!」


オレっ娘の首根っこ掴んだ教育係。

そのまま床に放り捨てて鞭を取り出す。


「ひっ!? なんだよその鞭はっ!?」

「調教用の、デビル☆ウィップです」

「ひぃぃいいっ!?!!」


なんか、鞭の名前が凶悪化してる。

ピシャンッ!と、それを床に打ち鳴らす。

オレっ娘は青ざめて、すぐさま逃走。

部屋の中で、ぐるぐる追いかけっこ。


ボクはベッドから起き上がれない。

さっきの感覚がまだ抜け切らない。

まだ色んなところがジンジンする。


そんなボクを、教育係が叱りつけた。


「殿下は雰囲気に流されすぎですっ!」

「ひぅっ!? ご、ごめんなさい……」


なんかめっちゃ怒ってる。怖すぎ。

だけど、反論は出来ない。反省しよう。

流されやすい性格が、恥ずかしい。


でも、雰囲気に抗うのは、むつかしい。

むつかしーよぅ。どーしたらいいんだ。

その方法を考えていると、ふと気づく。


キスをして、恋が始まれば。

そうしたら、よそ見しなくなるかも。

そして、教育係だって、同じように。


やはり、キスをしなくてはならない。

雰囲気に流される前に。迅速に。

だけど、それにも雰囲気が大切だ。

相手を本当に大切だと思った時、か。


雰囲気を見計らって機を伺おう。

その結論に至って、身を起こす。

とりあえず、教育係に謝らなければ。


「教育係、ごめんね」

「殿下はガードが甘すぎです」

「うん。ごめん。気をつける」

「本当に反省してますか?」

「ああ、反省してる」

「では、私にも頬ずりをして下さい」

「えっ?」


言うが早いか、奴が飛びついてきた。

またもやベッドに押し倒された。

そのまま教育係はボクに頬ずり。


奴の無乳がボクの無乳にごりごり。

洗濯板を擦り合わせている感覚。

正直、痛い。現実とは、痛すぎる。


けれど、奴の頬はひんやりしていた。

それがとても気持ち良い。すべすべだ。

それだけが、この世の救いだった。


「おっ! 良いもん持ってんじゃん!」


そんなボクらをよそに。

室内を物色していたオレっ娘。

彼女は本当に自由な娘だ。

何かを発掘して、駆け寄ってきた。


「殿下、このアニメを観ようぜ!」

「アニメ?」

「ああ!これめっちゃ面白いんだぜ!」


オレっ娘が持って来たアニメの箱。

以前、黒髪ロングから譲り受けた物。

それはこの前に観たアニメではない。


表紙に描かれていたのは赤い髪の少女。


燃えるような赤髪。

灼熱の焔を宿した瞳。

見に纏う輝く火の粉。


そして身の丈程の長刀を携えている。


「赤髪の女の子が主人公なのか?」

「いや、メインヒロインなんだ!」

「ふむ……少々、興味が湧いた」


だけど、どうなんだろう。

王家の証たる赤髪の主人公って。

色々と不味くないのかな?


そう訝しむと、教育係が説明した。


「王家に親しみを持って貰う為です」

「なるほど、そういうことか」

「ええ、そのおかげで大好評です」


それならば、何も問題あるまい。

民衆に王家に親しみを持って貰う。

それはボクにとって重要なことだ。


とにかく、それを観てみることにした。


ボクを真ん中に挟んでベッドに。

右隣は教育係。左隣はオレっ娘。

ボクらは仲良くアニメを鑑賞する。


「とても格好良い女の子だな」

「だろっ!?剣捌きもすげーだろ!?」


可愛らしいキャラクターデザイン。

それとは裏腹に素晴らしい剣捌き。

バッサバッサと敵を切り払う。

そして纏う炎で焼き払う。素敵だ。


けれど、どうしても気になる部分が。


「しかし、随分と胸が小さいのだな」


赤髪の少女は、貧乳だった。

なんだろう、底知れぬ作為を感じる。

無乳のボクを馬鹿にしているのか?


憤っていると、教育係が宥めた。


「赤髪の少女は古今東西貧乳なのです」

「そんな決まりがあるのか?」

「はい、宇宙開闢以来の摂理です」


宇宙開闢以来の摂理。マジかよ。

それは抗えない。どうしたって。

つまり、だからボクは無乳なのか。

なにそれ、悲しい。てか、辛いよ。


落ち込んでいると、オレっ娘が慰めた。


「貧乳でも可愛いならいいじゃん!」


そう言ってボクを抱き寄せる彼女。

すると、肩にオレっ娘の微乳が当たる。

なんだよそれ。傷に塩を塗りやがって。


何が夢だ。理想だ。憧れだ。

そんな物、摂理の前には、無意味だ。

そろそろ、もう、我慢の、限界だ。


ひとこと言ってやらないと気が済まん。


「おい、お前の胸がボクの肩に……」

「あー! やっぱ剣は良いよな〜!!」

「へっ?」


堪らず叱ろうとしたら、彼女が叫んだ。

丁度、強敵を打ち倒したシーンだった。

それに感化された様子のオレっ娘。


「オレも炎出せるようになりて〜!!」

「は?」

「悪い! 帰って訓練してくるっ!!」


そう言って、止める間もなく、退室。

おかげで叱ることが出来なかった。

本当に、嵐のような娘である。

そんなところが、可愛いのだけど。


「オレっ娘、帰っちゃったね」

「まったく、炎も出せないとは」


教育係は何やら呆れている様子。

いや、どんなに訓練しても炎は流石に。

でも、もしかしたら、こいつならば。


「お前は出せるのか?」

「ええ、終の秘剣を習得してますので」


ええーっ!? なにそれ、すごい。

終の秘剣とか、格好良すぎ。

目を輝かせていると、奴は語る。


「だからこそ、貧乳は無敵なのですよ」


いや、正直、それは関係ないと思う。

だって、ボクはそんなこと出来ないし。

だけど、教育係は、やっぱりすごいな。


ボクの教育係は、炎を出せるらしい。

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