第6話 『銀髪メイドの下着』 その1
「……近い」
「おはようございます」
朝目が覚めると目の前に教育係がいた。
何故か同じベッドで寝ている。
なんのつもりだろうか。
「殿下の寝顔が可愛らしい余り、つい」
何がつい、だ。
つい人のベッドに入ってくるな。
「申し訳ありません。すぐに出ます」
「いや……いい。そこにいろ」
「ですが……」
「いいと言っている」
教育係の体温の温もりで気が変わった。
その、あれだ……朝晩は冷えるからな。
湯たんぽ代わりに使うとしよう。
それに、添い寝なんて久しぶりで……
「殿下、二度寝は許しませんよ」
「誰のせいで目が覚めたと思っている」
「早起きは三文の得ですよ?」
「三文くらいケチケチするでない」
「駄目です。起きなさい」
まるで年寄りの説教のようだ。
渋々、身を起こす。
すると、教育係はボクを着替えさせた。
「殿下のパジャマ、とても触り心地がよろしいですね。シルクですか?」
「うむ。シルクは着心地がいい」
「私の下着もシルクです」
「どうでもいい」
「どうでもよくありません!」
適当な受け答えをしたら怒られた。
そして、本日の『授業』が始まった。
「下着はとても重要です」
「そうなのか?」
「はい。極めて」
着替え終え、教育係に向き直る。
朝だというのにこいつは元気だ。
欠伸をしながら疑問を呈す。
「下着など人目にはつかんではないか」
「だからこそ、です」
「どういう意味だ?」
「隠れているからこそ気になるのです」
ふむ。至言だな。
だんだん目が覚めてきた。
久しぶりに本気で授業を受けてやるか。
「具体的にはどう気になるのだ?」
「例えばそう、殿下の側仕えの侍女」
「侍女がどうかしたのか?」
ボクは侍女の姿を思い浮かべる。
銀髪の儚げな印象の少女。
いつもきっちりとメイド服を着ている。
彼女と下着にどんな繋がりが……?
訝しむボクに、教育係は尋ねる。
「彼女が普段、どんな下着を着用しているか、殿下はご存知ですか?」
「知らんな。気にしたこともない」
「想像して下さい」
「いきなり何を言う」
「では、白か、黒か、賭けましょう」
賭けを持ち出された。
人の下着の色で賭けるなど、最低だ。
だから、断わろうと思ったのだが……
「逃げるのですか?」
気が変わった。
その勝負、受けて立つ。
「白だ」
「では、私は黒で」
その他の色は引き分けだ。
しかし、ボクには確信があった。
あのきっちりとしたメイドは、白だと。
「殿下が勝ったら私の下着を見せます」
「よかろう。貴様が勝ったら?」
「殿下のパジャマを貰います」
背に腹は代えられん。受諾した。
早起きは三文の得、か。なるほどな。
ボクは今日、早起きをしたおかげで2人の下着姿を拝むことが出来る。
「失礼します。朝食をお持ちしました」
丁度その時、メイドが入室した。