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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
55/111

第54話 『派閥と風紀とステータス』

「よっ! 調子はどーよ?」


その日の放課後。

ボクは帰宅するべく荷物を纏めていた。

すると、肩を叩かれて、尋ねられた。


見ると、そこにはオレっ娘の姿が。

男子の制服を身に纏い、快活な笑顔。

ボクも自然と笑顔になって、返答する。


「ああ、だいぶ慣れた」

「そいつは良かった!」


王立学園に編入してしばらく経った。

ようやく学校生活にも慣れた。

相変わらず頻繁に男子から告白される。

それもまた、慣れたものだ。


しかし、未だ何故ボクなのかは不明だ。

こんな貧相なボクの何処が良いのか。

恋愛感情とは不可思議なものだった。


「クラスの雰囲気は大体わかったか?」

「大まかには把握した」


クラスの雰囲気。

それも最近わかってきた。

大まかに言って、4つの派閥がある。


まずは、青髪の派閥。

似たような髪色の者が固まっている。

人数はそれほど多くはない。


青髪の男子の元には男子生徒が集まる。

そして、女子生徒は黒髪ロングの元に。

どうやら、彼女はそちらの派閥らしい。


そのせいか、あまり話す機会がない。

青系の髪色の女子が取り囲んでいた。

黒髪ロングは窮屈そうだった。


だから、たまにお互い会釈する程度。

下手に首を突っ込まない方が良さそう。

ボクにはまだ、人付き合いは不得手だ。


ちなみに、青髪の男子は偉そうだ。

常に威張り散らしている。

クラスメイトと喧嘩をすることもある。


それを宥めるのが、三つ編み眼鏡。

意外なことに、彼女は学級委員長だ。

そして最大派閥のリーダー。

無理矢理押し付けられた様子。


ボクの国の国民議会。

その議長の娘が、三つ編み眼鏡だ。

その関係もあるのだろう。

貴族や高官の子らは彼女に従った。


それでも喧嘩が収まらない場合。

オレっ娘の手勢が実力で黙らせる。

軍属の家系の子で形成された集団。

それを纏めるのが、将軍の娘。

オレっ娘は若大将として君臨していた。


それをつまらなそうに眺める桃色髪。

彼女は孤高だった。


隣国の姫君という立場の桃色髪。

当然、人は寄ってくる。

しかし、誰が来ても素っ気ない態度。

悪気はないようだが、興味がない様子。


たまに召使いに肩を揉ませている。

召使いが胸を揉もうとすると、殴る。

そこまでが一連の流れだ。


もちろんボクは傍観者。

教育係と一緒に、どの派閥にも属さない。


青髪の派閥。

三つ編み眼鏡の派閥。

オレっ娘の派閥。

桃色髪の姫君の派閥。


この4つで、クラスは成り立っていた。


「一応、忠告しとくぜ?」

「なんだ?」

「青髪の連中には気をつけな」


オレっ娘が念を押すように忠告する。

しかし、話したことすらない派閥だ。

彼らは何故か教育係を恐れている様子。

理由は定かではないが、関わりはない。

近寄ってすら、来ない。

だから、気をつけろと言われても困る。


別に友達を100人作るつもりはない。

けれど、最初から垣根は作りたくない。

だが、オレっ娘が注意を促した。

ボクを慮ってのことだろう。

とりあえず、忠告だけは聞いておく。

しかし、そこまで気にしてなかった。


ボクが曖昧に頷くと、話が切り替わる。


「それで、本題なんだけどよ」

「どうしたんだ?」

「ちょっと、オレの執務室まで来い」


本題を切り出したオレっ娘。

執務室まで来いと言う。

学園に個人の執務室なんてあるのか。

驚きつつも、素直に従った。


教育係と共に、オレっ娘の執務室へ。

程なくして、とある一室に辿り着いた。


「若、お疲れ様です!!」

「おお、皆揃ってるか?」

「はい! 皆、揃ってます!!」


部屋の前に門番がいた。

その男子生徒と挨拶を交わすオレっ娘。

かなり暑苦しい挨拶だ。

しかも、『若』とか呼ばれてる。

なんだか裏社会の匂いがするぞ。


「んじゃ、入ってくれ」


オレっ娘に促されて、入室。

すると、壁一面に生徒が立っていた。

びびりながらも、ソファに座る。


そこには、先客がいた。


居心地悪そうに座る1人の女生徒。

この前ボクを泥棒猫呼ばわりした女子。

スケバンが、そこに座っていた。


「こいつがデンカに難癖付けた奴か?」


スケバンを指指してオレっ娘が問う。

この前の泥棒猫騒動のことだろう。

ボクが頷くと、彼女は頭を下げた。


「ウチのもんが迷惑掛けて悪かった」

「ウ、ウチのもん……?」

「ああ、ウチの風紀委員の一員だ」


風紀委員?

ウチの、風紀委員?

どういうことだろう。

気になって、尋ねる。


「オレっ娘」

「なんだ?」

「お前、風紀委員だったのか?」

「オレが、風紀委員長なんだぜ!」


なんと!

オレっ娘は風紀委員長らしい。

だから、こうして謝罪したわけか。

納得して、状況を理解した。


そこで、スケバンが口を開いた。


「も、申し訳ありませんでしたぁ!!」


涙ながらの謝罪。

相当怒られたのだろう。

鼻声でスケバンは弁明した。


「わ、若様のご友人とは知らず……」

「友人じゃねぇ! マブダチだ!!」

「す、すみませんっ!!」


オレっ娘の怒声に震え上がるスケバン。

なんだか可哀相になってきた。

しかし、オレっ娘は容赦なかった。


「おら、歯ぁ食い縛れっ!」

「ひゃいんっ!?」


ぴしゃんと彼女の太ももをビンタ。

スケバンが悲鳴をあげる。

いやいや、そこまでしなくても。


その時、沈黙していた教育係が動いた。


「それでは、私も」

「きゃひんっ!?」


なんか便乗して太ももにビンタ。

スケバンはまた悲鳴をあげる。

完全にやり過ぎだ。


「もうやめてやれっ!」


慌てて、割って入るボク。

すると、2人がぶーぶー文句を言う。


「デンカ様、罪には罰ですよ!?」

「洗濯バサミだって用意してるのに!」


洗濯バサミなんて何に使うんだ。

ボクは構わず、スケバンを助ける。

荒い息を吐く彼女の様子を伺う。


「大丈夫か?」

「はあ……はあ……もっと……!」

「えっ?」

「もっと、お仕置きしてくらはいっ!」


あーダメだ。

これはメイドと同じ症状だ。

これ以上調子に乗らせたら、ダメだ。


そう思い、きっぱりと宣言する。


「ボクはもう、気にしてない」

「デンカ様がそう仰るなら……」

「この辺にしといてやるか」


渋々引き下がる変態2人。

そして残る変態スケバンも不満げ。

そんな彼女に、ボクは尋ねる。


「そう言えば、あの後どうだ?」

「へっ?」

「ボクが奪ってしまった男子のことだ」


正確に言えば、奪った訳ではない。

向こうから告白して来たのだ。

しかも、ボクはそれを断わっている。


だけど、失恋したことには変わりない。

だから、気になって尋ねてみたのだ。

すると、スケバンはこう語った。


「実はあの男、他にも浮気してて……」

「そうだったのか?」

「だから、良いきっかけになりました」


すっきりした表情のスケバン。

後悔がないようで、何よりだ。

しかし、浮気とは許しがたい。

相手が居るのに、何故浮気をするのか。

全く以って、恋愛とは不可思議だ。


そこで、オレっ娘が手を打ち鳴らした。


「んじゃ、これで手打ちだ」


そう締めると、スケバンが頭を下げた。


「本当に申し訳ありませんでした!」

「ちゃんと反省しろよ?」

「はい、反省しますっ!!」


その反省を受け、オレっ娘が声を張る。


「お前らもマブダチには手ぇ出すな!」

『うすっ!!』

「連帯責任で明日は校庭10周だっ!!」

『うすっ!!』

「んじゃ、解散っ!!」


連帯責任を告げて解散させた。

誰一人、文句は言わない。

オレっ娘にはカリスマ性があるようだ。


スケバンも退室する。

去り際に深々と頭を下げてきた。

根は真面目な娘なのだろう。

悪い男に引っかからないことを願う。


皆が帰った後、オレっ娘が口を開いた。


「時間取らせて悪かったな」

「いや、色々とびっくりした」

「何が?」

「お前が風紀委員長とは知らなかった」


改めて、ボクは驚いていた。

彼女が風紀委員長だなんて。

あんな集団のリーダーとは恐れ入る。


そんなボクとは裏腹に。

教育係が疑問を口にした。


「貴女は風紀委員長なんですよね?」

「ああ、そうだぜ!」

「なら、その服装は不味いのでは?」


教育係の指摘。

オレっ娘の服装について。

彼女は男子の制服を着ている。

そんな男装女子なオレっ娘。

確かに、風紀を乱していると言える。


だが、オレっ娘は気にした様子はない。

あっさりと反論を述べた。


「女子が男子の制服着ても問題ない」

「そうなのか?」

「ああ、校則にそんな規定はない」


指定の制服ならば問題ないらしい。

だったら、ボクにも言い分があった。


「じゃあ、ボクも男子の制服を着たい」


すると、教育係が猛反発した。


「殿下が真似をするからやめなさい!」

「んなこと言われたって……」

「スカート姿が見れなくなりますよ!」

「うぐっ」


教育係に押され、たじたじのオレっ娘。

しばらく逡巡した後、口を開いた。


「わぁーたよっ! 着るよ!!」

「ならば、さっさと着なさい」

「わかったから外で待ってろ!!」


オレっ娘に追い出されるボクら。

よくわからないが、着替えるらしい。

ボクの主張は有耶無耶にされた。


だけど、オレっ娘が女子の制服を着る。

それだけで、ボクは文句無しだった。


「入っていいぞ」


しばらくして、声が掛かったので入室。


すると、そこには……


フリフリなスカートの、オレっ娘が。


「ど、どうだ……?」


頬を染めるオレっ娘。

やはりギャップの力は偉大だ。

素晴らしく、可愛かった。


そのまま感想を口にする。


「うん、可愛い」

「ありがとー! 殿下も可愛いぜ!」

「ありがとー!」


そのままハイタッチ。

両手を繋いで、おでこをぐりぐり。

ボクらは今日も仲良しだ。


しかし、そんなオレっ娘に、違和感が。


ブレザーを突き上げる、微かな膨らみ。


それが、どうにも、許せなかった。


「教育係」

「はい、私も気づきました」

「やっぱり、これは裏切りだよな?」

「ええ、ギルティかと」


久しぶりのギルティ宣言。

首を傾げるオレっ娘を、問いただす。


「オレっ娘」

「ど、どうかしたのか?」

「サラシはどうしたんだ?」

「せっかくだから、取った!」

「どうして取ったんだ?」

「女子の制服を着るなら要らないだろ?」


ぐぬぬ……おのれ、オレっ娘の奴め。

ここぞとばかりに見せつけおって。

怒り心頭なボクと教育係。


そして奴の手には……洗濯バサミが。


「お、おいっ! 何をする気だっ!?」

「出しゃばりな杭を挟むのです」

「や、やめろぉおおおおおお!?!!」


にじり寄る教育係。

堪らず悲鳴をあげるオレっ娘。

それを聞きつけて、門番が入室。


「若、どうされました!?」

「み、見るなぁああああああ!?!!」


女子の制服姿を見られて、絶叫。

その混乱に乗じて、ボクらは退室。

騒ぎに巻き込まれるのは御免だ。


オレっ娘にとっては災難だろう。

しかし、いい気味だ。

微乳を見せつける方が悪いのだ。


だが、女子の制服姿は可愛いかった。

眼福、眼福。


ホクホク顔で帰宅する。

廊下を歩いていると、奴が囁いた。


「実は私もサラシを巻いているのです」


それは明らかな嘘。

奴がサラシを巻ける筈はない。

だって、ストンと下に落ちてきそうだ。


あ、怖い顔された。

仕方ない。ここは乗っておくか。


「実はボクもサラシを巻いている」


便乗して、見栄を張る。

すると奴は、くすりと笑う。

ボクもおかしくて、くすりと笑う。


そして、教育係が決め台詞を囁く。


「貧乳は正義でステータスなのです」


ボクの教育係はその台詞がお気に入りだ。

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