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殿下の教育係  作者: 戦乃作為
第2章 【学園生活と日常】
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第50話 『桃色髪と召使い』

「今日も告白されたのですか?」

「ああ、理由は定かではないがな」


学園に来て1週間が経過した。

ボクは毎日男子から告白された。

その度に同じ理由で断わっている。


「デンカ様は男たらしですね」

「お前にだけは言われたくない」


ボクを詰る教育係。

奴もまた毎日女子に告白されている。

相手は毎回涙を流していた。

どうやら全て断わっているようだ。

その度に、奴はハンカチを差し出す。

そんなところが教育係らしい。


「それじゃあ、帰るか」

「ええ、帰りましょう」


互いに相手を振って帰路につく。

しかしながらボクの気持ちは冴えない。

今日も相手の男子は覚悟がなかった。

つまり本気で妊娠させる気はないのだ。


恋愛とは一体何なのだろう。

自分の恋愛観のズレを感じる。

最近の悩みの一つだった。


そこで突然、女子生徒に引き止められた。


「ちょっと! 待ちなさいよ!」


言われて見ると、見覚えはない。

他のクラスの生徒だろうか。

何故だか知らないけど喧嘩腰だ。


これが噂のスケバンだろうか?


「デンカ様に何か御用ですか?」


スケバンに教育係が尋ねる。

にっこり営業スマイルを浮かべて。

すると、スケバンが赤面した。

赤い顔のまま、慌てて用向きを告げる。


「人の男取らないでよっ!泥棒猫!」


泥棒猫だと?

ずいぶんな言い草だ。

全く、教育係は何をやってるのやら。


呆れた視線を奴に向ける。

すると奴は小首を傾げた。

どうも身に覚えがない様子。


改めてスケバンを見る。

彼女はボクを睨んでいた。


え?

もしかして、ボク?

この前三つ編み眼鏡にも言われたな。

いつの間に泥棒猫に転生したんだ?


「何かの間違いじゃないか?」

「この前、彼に告白されたでしょっ!」


努めて冷静に問い返す。

すると、ボクが告白されたとのこと。

だが、どこの誰かは知らない。

最近は毎日告白されているのだから。


しかし、それはボクの意思じゃない。


「ボクは告白されただけだ」

「どうせ色目使ったんでしょっ!?」


色目?

色目なんて使えたら苦労はしない。

それで教育係を打ち負かしてやる。

全く以って身に覚えがなかった。


困り果てて、教育係に視線を送る。

すると奴は、スケバンの背後に回る。


「デンカ様最低ですっ!!」


おい。

お前はスケバンの味方か。

この機に鬱憤を晴らしている様子。

何故ストレスを抱えていたかは謎だ。


ボクが頭を抱えていた……その時。


「やめなさいよ、はしたない」


1人の少女が間に割って入ってきた。

ボクのウィッグよりも鮮やかな髪色。

肩にかかる髪を払って、腕を組む。

口をへの字に曲げて、仁王立ち。


桃色髪の隣国の姫君が、現れた。


「男の1人2人くらいで何騒いでんのよ」

「な、なんですって!?」


傲慢な桃色髪の言い草。

スケバンは地団駄を踏んで喚く。

それに怯むことなく、言い放つ。


「嫌なら首輪でも付けときなさいな」

「なにふざけた事言ってんのよ!?」


怒ったスケバンが掴みかかる。

それを止めようと教育係が動く。


それよりも、早く。


スケバンの腕を何者かが、掴んだ。


「まあまあ、ここは冷静に」


突然現れたのは見覚えのない男子。

ヘラヘラ笑って、スケバンを宥める。

緩みきった、締まりのない顔。

しかし、ボクは思わず目を見張る。


彼の髪と、そして瞳。

漆黒の黒髪と、同じく黒い瞳。

それは、ボクの教育係と同じ色。


そんな彼の頭をぺしっと桃色髪が叩く。


「あんた何余計なことしてんのよ」

「いや、女の腕に触れると思ってさ」

「ばっかじゃないのっ!」


彼の戯言にご立腹な桃色髪。

そして手に掴んでいた鎖を引く。

それは、黒髪の彼の首輪の鎖だった。


「ぐえっ!?」


堪らずスケバンの腕を離す黒髪の男子。

その隙に、スケバンは逃げ出した。


「お、覚えてやがれよっ!!」

「ふんっ。おととい来なさいよ」


傲慢に言い放ち、桃色髪は踵を返す。


「行くわよ、うつけ」

「お、おいっ! 引っ張んなよ!?」


首が絞まって苦しそうな黒髪の男子。

桃色髪は彼を『うつけ』と呼んだ。

そして、そのまま立ち去ろうとする。


ボクは思わず、声を掛けた。


「あ、あのっ!」

「何か用かしら?」


呼びかけに立ち止まる桃色髪。

ボクは彼女に助けられた。

ならば、お礼を言うべきだろう。


「助けてくれて、ありがとう!」


すると、彼女は面食らった様子。

そして隣の黒髪の男子がにやりと笑う。

そして、締まりのない顔で呟く。


「へえ。なかなか可愛い子だな」

「デレデレしないのっ!!」

「ぐぇっ!? す、すんません」


余計なことを言って叱られる男子。

すると静観していた教育係が口を開く。


「おやおや、元気そうで何よりです」

「へっ。お前もな」

「口の利き方がなっていませんね」

「ご、ご無沙汰してます」

「ええ、久しぶり」


そんなやり取りを交わす教育係。

黒髪の男子と顔見知りらしい。

彼はへこへこ奴に頭を下げていた。


そんな2人の様子に首を傾げるボク。

すると、桃色髪が語りかけてきた。


「ちょっと、あなた」

「えっ?」

「どうでもいいけど、気をつけなさい」


何だか突然忠告された。

訳もわからず、頷くボク。

すると、鳶色の視線で見つめられた。


ボクのカラコンよりも鮮やかな瞳の色。

それが、何故か懐かしく感じた。

何処かで会ったことがあるのだろうか。


暫くして、ふんっと鼻を鳴らす桃色髪。

そして、傲慢な口調で言い放つ。


「今度また、ゆっくりお話しましょう」

「あ、ああ、わかった」

「それでは、ご機嫌よう」


それだけ告げて、彼女は立ち去った。

首輪で繋いだ黒髪の男子をつれて。

とても印象深い、2人組だった。


「教育係」

「はい、なんでしょう?」


帰りの車内で教育係に尋ねる。

聞きたいことは山ほどあった。

まずは、これを聞いておこう。


「あの黒髪の男子は何者だ?」

「あれは桃色髪の姫君の召使いです」


彼は桃色髪の姫君の召使いらしい。

とてもそうは思えなかった。

首輪を付けた召使いなど他にはいまい。


それよりも気になることがある。

あの黒髪と黒い瞳。

教育係と何か関係があるのだろうか。


もしかして、昔の交際相手とか。

それは……ちょっと困る。

うん。ちょっと……嫌だ。


そんなボクの心中を見透かして奴が言う。


「私に交際経験はありませんよ?」


それを聞いて、ほっとするボク。

それなら、いい。

それなら、構うまい。


ほっとしたら、別な問題が浮上した。

スケバンに言われた言葉。

それが、胸に刺さっていた。


「教育係」

「はい、如何しましたか?」

「ボクは……泥棒猫なのだろうか」


スケバンに言われた泥棒猫。

ボクは彼女の意中の者を奪った。

もちろん、そんなつもりはなかった。

けれど、無自覚だからこそ、恐ろしい。


ボクは今日、恋愛の恐ろしさを知った。


「殿下は泥棒猫などではございません」


しょげるボクに、奴は断言した。

運転しながら、前を見て、違うと言う。

そしてちらりとこちらを流し見て続ける。


「殿下は色目なんて使えませんからね」


そんな、意地悪な奴の物言い。

けれど、それは事実だった。

ボクは色目なんて使えない。

教育係のような色目など、使えない。


「教育係」

「はい、どうしましたか?」

「お前は色目を使いすぎた」


今の教育係の流し目。

ドキッとしたボクは苦言を呈する。

すると、奴はまた色目を使って嘯く。


「私が色目を使うのは殿下だけです」


ボクの教育係は色目を使うのが上手い。

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